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秋の味覚 – 狩猟料理の楽しみ

野生肉のソーセージ

(swissinfo.ch)

9月になると通勤する時に注意されることがある。「森を行くなら茶色いジャケットはやめなさい」そう、9月、10月はハンティング・シーズン。この時期を待っていた狩人たちが嬉々として森にくり出しているのだ。私は狩りはしないけれど、旬の味である狩猟料理を楽しみにしている。今日は、狩りとスイスの田舎で食べる野生動物の味について書いてみる事にしよう。

 スイスには狩りについて厳しい決まりがある。趣味としてのハンティングには当然ながら免許が必要だ。そして、狩りをしていい時期、誰が何を狩っていいかまでが詳しく決められている。たとえ、偶然目の前に珍しいアイベックスが姿を現したとしても、許可なしに引き金を引く事は許されない。森林管理官がそれぞれの野生動物の個体数をチェックし、それまでの経験との兼ね合いで「次はこの動物を撃ってよろしい」という許可が下りるのだ。もちろん許可を持っていても、その動物に巡り会えなければ撃つ事は出来ない。

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 こうして見事お目当ての動物をしとめた狩人たちは、その動物たちに「最後の賞賛」と称してその辺りにある一番美しい植物を口に咥えさせて、誇らしげに帰宅する。狩りに関しては賛否両論ある事はわかっている。狩人たちは口を揃えて「僕たちはきちんとルールに則って狩っている。限られた空間で個体数が増えすぎないようにするのも自然保護だ」と主張する。多少都合のいい主張に聞こえない事もないが、そのおこぼれの狩猟肉を喜んで食べている私に批判する資格はないだろう。

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 撃たれた動物たちは、肉屋に運ばれる。狩人たちは角や頭蓋骨、もしくは剥製にした頭部をきれいに処理してトロフィーのように壁にかけるが、肉そのものは自分たちで食べきれないので肉屋に売る事が多い。それらが狩猟肉(Wild)として、レストランで提供されている。日本ではフランス語で狩猟肉を意味する「ジビエ(gibier)」という事が多いが、私が住んでいるのはドイツ語圏なのでその言葉を使う人はまずいない。

 このあたりで狩猟料理として食べるのは鹿(Hirsch, Reh)、シャモア(Gämse)、兎(Haase)、キジ(Fasan)あたりの肉が中心だ。

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 典型的な料理は「鹿肉の胡椒ソース」(Hirschpfeffer/Rehpfeffer)。鹿肉を一週間以上ワインでマリネした後、胡椒や各種のハーブと一緒に煮込んだもので、独特の風味がする濃厚な茶色いソースが特徴的。単純にミニッツステーキ風にしたものが好きであれば、「シュニッツェル」(Schnitzel)も美味しい。

 ここグラウビュンデンで食べる狩猟料理には、必ずと言っていいくらい決まった付け合せがある。まずシュペッツリ(Spätzli)という卵を使ったパスタの一種、それから紫キャベツまたは芽キャベツを煮たもの、甘く似た栗、それにどういうわけだか洋梨や桃を半分にして甘く煮た上に赤スグリのジャムなどを載せたものがついてくる。はじめはデザートまで一つのお皿に盛るのかと驚いたが、これはあくまで付け合せで、狩猟肉にはこの組み合わせが定番のようだ。

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 飲み物はアルコールを飲める人はやはり赤ワイン。あまり飲めない人にも少しだけワインを飲んでいる気分にさせてくれる特別な飲み物がある。それはザウゼル(Sauser)。これはワインにするために発酵を始めた葡萄ジュースで、アルコール分はほとんどないけれど、葡萄ジュースよりも甘味がまろやかで独特の風味がある。発酵プロセスで作られた気泡が非常に弱い炭酸飲料のような喉ごしを生む。私はこの飲み物がスイス中にあるのだと思い込んでいたが、どうやらどのレストランでも飲めるのはグラウビュンデンだけのようだ。また、ザウゼルは9月の半ばから11月ぐらいまでの季節限定飲料である。ちょうど狩猟料理が食べられる時期と一致している。もし、この時期にこの地域を訪れる事があったら、ぜひ試していただきたい組み合わせである。

ソリーヴァ江口葵

プロフィール:ソリーヴァ江口葵

東京都出身。2001年よりグラウビュンデン州ドムレシュク谷のシルス村に在住。夫と二人暮らしで、職業はプログラマー。趣味は旅行と音楽鑑賞。自然が好きで、静かな田舎の村暮らしを楽しんでいます。

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