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花たちがいとおしい

「小正月の1月15日は大正月で働いた女性たちが、正月の残りものを食べながら集い、疲れを癒す。その時花も生ける。それは緑、赤、金、白の色を使うように」という池田先生の教えを今も守る。小正月のいけばなとクッキーを用意して待っていてくれたアリアンヌさん swissinfo.ch

「今の時代、美しいものという、いわば金銭的価値を生み出さないものの創作に集中できることほど幸せなことはありません」と語るのは、ジュネーブで草月流いけばなの講師を務めるスイス人、アリアンヌ・プシエール ( 45 ) さん。

14歳で草月流に出会って以来、もう人生の折り返し地点まで来た。恩師は池田先生。教えを受け継いで欲しいと言い残してがんで逝った先生のことを思うと今でも涙があふれる。

高校卒業のとき、大学に進まず、いけばなで生きていきたいと池田先生に話したら、これで生計をたてるのは無理だと言われ、建築家になる道を選んだ。今はいけばなでお金を稼ぐ道を選ばなくてよかったと考えている。

 いけばなは、無心に美を作り出すことだけに集中できる、座禅に近い世界だから、自分のものとして大切にしたいという。

 建築といけばなはアリアンヌさんのなかでバランスよく共存する。両方とも空間を相手にものを作り出すという共通点があるという。一方、建築はゆっくり時間をかけての構築、でも間違えたら取り返しがつかない。ところがいけばなは、「すぐできて、失敗しても誰も困らないでしょう」と笑う。

 いけばなをはじめて、自然の見方が変わってきた。木を全体として見るのではなく、枝のライン、葉の形、色などを細かく見つめ、花も花弁の細部などをじっと見つめるようになった。花たちがいとおしい。慈しんで育てたセカンドハウスの庭の花を隣の家の羊が食べた時は怒り心頭に発した。

 草月流は、初めの2~3年で基本の型を覚えた後は、個人の個性、表現方法を追求することが許される。「私は『アリアンヌ風』を追求している。それは空気のような軽さ絶えず表現すること」と、この道31年選手は語った。

swissinfo、聞き手 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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