スイスは迷惑メール防止先進国
スイス政府は4月1日、迷惑メールの発信規制に乗り出した。法律が及ぶのは国内だけだが、どれだけ効果があがるのだろうか。
このご時勢、うっかり迷惑メール防止ソフトを使わないでコンピュータを使おうものなら、頼みもしないのに世界中から迷惑メールが殺到する。一体どうにかならないものか。
スイスで受け取る迷惑メールのうち、国内発信のものはたったの1%。これを規制したからといって、どれだけ助けになるというのか、関係者に話を聞いた。
初めの一歩
せっかくの規制だが、効果はあまり期待できないというのが記者の考えだ。それでも連邦通信省 ( UVEK/DETEC ) のペーター・フィッシャー副局長は「意味はあります」という。
「迷惑メールは国境を越えて個人の受信ボックスに送られてくるのだから、スイスだけが規制しても限界があるのではないか、ということはわかります。けれども私たちは最善の努力をしなければいけません」
「これは初めの一歩なのです」と語るのは、サイバー・コントロール・ユニット ( CYCO ) のマーク・ヘナウアー氏だ。この機関はインターネット上の警察のような役割を持っている。
迷惑だけでは終わらない
「スイスが迷惑メール発信者の温床となることだけは避けたい」というのが今回の規制の狙いだ。すでにこのような規制はアメリカや他のヨーロッパ諸国では施行されており、スイスも続いた格好だ。
違反してスイス国内から迷惑メールを送った者については、懲役最高3年と罰金最高10万フラン ( 約976万円 ) が科せられる。
今日、10通の電子メールのうち8通は迷惑メールだといわれている。このようないらないメールが、毎日何十億通も世界中で飛び交っている。
とにかく想像しうる全ての広告が、迷惑メールとして受信ボックスに飛び込んでくる。バイアグラなどの薬品や幼児ポルノが含まれる場合もある。
ヘナウアー氏によると、このような悪質なメールを無防備に信じてソフトウエアを開けてしまい、使っているコンピュータが壊れてしまうユーザーもいるそうだ。
プロバイダーの責務
このような違法メールにさんざんな目にあったとしても、個人が被害届を正式に出さない限り、警察も動けない。
「何かあったらすぐに地元の警察に行くことをお勧めします」とヘナウアー氏は言う。プロバイダーに対しては、このような迷惑メールを防ぐ法的責任がある。
「プロバイダーは、迷惑メールを防ぐ対応を取る義務があります。このような不必要なメールからユーザーを守らなくてはいけません。ユーザーが見る前に迷惑メールを削除してしまうことも認められています」
もしプロバイダーが大量に迷惑メールを送っている犯人を見つけたら、配信自体を拒否したり、犯人をプロバイダーのサービスから締め出すこともできる。
スイスからの発信を示すアドレス ( 最後にchが付く ) で迷惑メールが届いた場合、インターネットの接続業者に届け出れば何らかの対策を取ってもらえる。
ゾンビを許すな
今回の規制は、迷惑メール防止ソフトを入れていない個人ユーザーを守ることも視野に入れている。
ウイルスや迷惑メールの添付資料を開けることで、コンピュータが壊れてしまったり、自分の名前で知り合いに迷惑メールが大量に送付されてしまったり。このような悪質なメールを発信するソフトは、コンピュータの世界では「ゾンビ」と呼ばれている。発信者の身元を隠しながら莫大な数の悪質メールを毎日発信しているのだ。
専門家によると、世界で飛び交っている迷惑メールの8割が、「ゾンビ」から発信されているそうだ。
swissinfo マーク・チェトクティ、 遊佐 弘美 ( ゆさ ひろみ ) 意訳
個人ユーザーとプロバイダーの数
2001年 : 209万3162人 / 114社
2002年 : 233万7048人 / 125社
2003年 : 273万622人 / 131社
2004年 : 225万434人 / 152社
2005年 : 258万5277人 / 150社
今回の法律改正は、1997年4月30日に施行された通信法を修正したもの。2006年3月24日に議会を通過した。
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