スイス航空破たんで先行き不安のチューリッヒ空港
チューリッヒ・クローテン空港を経営するユニーク社株は2日、同空港の最大顧客スイス航空破たんを受け株価が急落するのを防ぐため取引を停止した。チューリッヒ空港を国際便のハブにという拡大計画案は、再考を迫られることになりそうだ。
スイスエアを引き継ぐ系列のクロスエアは、大幅なダウンサイジングを決定している上、クロスエアの本社はバーゼルにあるため、路線の中心はバーゼルに移る可能性がある。クロス航空の新しいネットワークが確立される何ヵ月か先までは断定はできないが、チューリッヒは欧州のセカンドクラス空港になってしまう可能性が現時点では濃厚だ。航空専門誌「Interavia」のピエール・コンドム・マネージングディレクターは、「チューリッヒがハブ空港として生き残れるとは思わないが、重要な国際空港としての位置は保てるだろう。ジュネーブのように、ハブではないが重要な拠点となっている空港が欧州にはたくさんある。」という。欧州は航空会社が多すぎハブ空港も多すぎるとアナリストらは言う。そして、米同時多発テロが、遅れた統合を触発することになるのではと見る。
近年、チューリッヒ空港は、航空機のパーキング・スペース、新ターミナル、鉄道とリンクしたショッピングセンターなど23億スイスフランを費やして拡張工事を続けてきた。当局は年間旅客が現行の3、400万人から50%」増になると見込んでいたのだが、テロの影響もあり来年末までの年間旅客は11%減の2000万人になる見通しだ。拡大工事は今さら中止するには進み過ぎた。が、新ターミナルのがらんとしたスペースが空しい。「完成したチューリッヒ空港は大きすぎるだろう。長期的にエア・トラベルは拡大するかもしれないが、今後10年間は大きすぎる空港だ。」とコンドム氏はいう。空港は当面新規採用を凍結し、新規投資も止めた。
ところで、チューリッヒ州はユニーク株49%を保有する大株主だ。チューリッヒ空港の衰退は投資の下落を見るだけでなく、空港の業務縮小が州経済へ及ぼす影響も不安の種だ。これについてコンドム氏は「チューリッヒ州にとって良いニュースでないことは明白だが、現時点でどのような悪影響があるかはわからない。空港は経済のハブでもあり、チューリッヒ州がある種のステータスを失うことは否定できない。」という。一方、チューリッヒ空港の衰退は、バーゼルにとっては成長のチャンスとなるかもしれない。が、フランクフルトなど他のハブ空港に極めて近いため、ハブとしての役割を果たすまでには到らないとコンドム氏は見る。また、ジュネーブ空港にはほとんど影響なしとコンドム氏は見る。
スイスエアの破たんとチューリッヒ空港の縮小は予想されたもので、将来的にはむしろ歓迎されるだろう。地元の圧力団体は長年、スイスには拡張チューリッヒ空港のような大規模空港は必要ないと騒音など公害に対する反対運動を繰り広げ、地元住民の懸念よりも株主の利益が優先されていると非難し続けてきた。アナリストらも、スイスエア・グループとチューリッヒ空港は、実力以上の国際試合に挑み続けたという。さし当たっての混乱に同情は示すものの、航空会社と空港の行き過ぎた野望がようやく破たんしたことに驚きはない。
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