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反トランプデモ、関税訴訟、科学研究…スイスメディアが報じた米国のニュース

フラミンゴの仮装をして星条旗を掲げる女性
Keystone

10月23~29日にスイスの主要メディアが報じた米国関連のニュースから①「王は要らない」反トランプデモに700万人②トランプ関税と戦う米玩具メーカー③欧州科学研究は「米国から自立を」――の3件を要約して紹介します。

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週末の光景は圧巻でした。全米各地で数百万人が大統領に抗議し、平和的かつユーモアを交えた抗議運動が繰り広げられました。「ノー・キングス(王は要らない)」デモで示された反トランプ感情は、民主党の勝利につながるのでしょうか?その答えは一部米州で知事・州議会選挙が行われる11月4日に明らかになります。

今週はまた、関税問題で政府を最高裁に提訴したイリノイ州の起業家と、米国が国際科学研究プロジェクトへの資金援助を削減する決定に対し、欧州がどう対応すべきかについて考察します。

多くのプラカードを掲げるデモ行進
10月18日、ワシントンに集結した群衆 Copyright 2025 The Associated Press. All Rights Reserved.

「王は要らない」反トランプデモに700万人

フランス語圏のスイス公共放送(RTS)によると、主催者側の発表でデモ参加者は約700万人。「王は要らない」というスローガンに呼応し、共和党トランプ大統領の「権威主義的掌握」を非難しました。主要都市や地方の町々で2700以上の集会が終日計画されており、トランプ氏が週末を過ごしていたフロリダ州の別荘「マー・ア・ラゴ」周辺でも開催されました。

ドイツ語圏の大手紙NZZによると、ニューヨーク市では複数の場所で10万人以上が集結しました。ワシントン、ロサンゼルス、ピッツバーグ、ボストン、シカゴ、シアトルでも数千人のトランプ反対派が街頭に。多くの場所でデモ参加者は仮装したり、合唱したり、カラフルな横断幕やポスターを掲げたりして、抗議行動の平和的な性質を強調したといいます。

ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、トランプ氏が意図的に緊張を煽り、反体制派への軍事力行使を常態化させようとしていることに批判の声が上がっていると報じました。民主的に統治される複数の都市や州が、自地域への州兵派遣に対し法的措置を取っていると伝えています。

フランス語圏日刊紙ル・タンは社説で、「米国大統領は三権分立を窓から投げ捨て、国をカジノ経済に変え、すでに脆弱な医療制度を解体している」と論じています。

「大げさすぎる?アメリカのトランプ流権威主義への漸進的な転落は現実の脅威だ。強力かつ持続的な対応がなければ、我々が知るアメリカ民主主義は存続しないかもしれない。週末に集まった700万人のデモ参加者は最初の反応だが、依然として大いに不十分だ」(出典:ル・タン外部リンクRTS外部リンク/フランス語、SRF外部リンクNZZ外部リンク/ドイツ語

米最高裁判所の外観
トランプ大統領は原告を「国家の敵」と批判し、自ら法廷に立つ構えを見せている Keystone-SDA

トランプ関税と戦う米玩具メーカー

リック・ウォルデンバーグ氏(65)は「教科書的な家族経営企業」を営んでいる――SRFは22日、こう報じました。「ラーニング・リソーシズ」と「ハンドトゥマインド」の2社は教育玩具の製造・販売会社で、ウォルデンバーグ氏の両親が創業したもの。約30年前に同氏が経営を引き継ぎ、従業員約500人のなかには妻と成人した3人の子どもも含まれます。

変化がなければ、それはすぐに終わりを迎えるかもしれまぜん。ウォルデンバーグ氏はイリノイ州の倉庫でSRFのインタビューに応じ、「ドナルド・トランプ氏が課した関税は、私たちの存在を脅かしています」と語りました。「まるで私たちの収入の大部分をただ燃やしているかのようです」

1980~90年代にウォルデンバーグ氏の両親は会社が成長するなかで、中国での生産を始めました。長らく成功を収めていましたが、トランプ関税がすべてを変えたといいます。米国が中国製品に課す関税は、一時145%に達しました。5月には両政府が90日間の猶予期間を設けて30%に引き下げることで合意したものの、今後の展開は不透明です。トランプ氏は10月10日、11月1日から中国製品への関税を100%引き上げると発表しています。

生産を米国に移すことは選択肢ではない、とウォルデンバーグ氏は語ります。「当社が販売する製品は、以前も国内で生産されたことはない。それを実現できる企業は存在しない」

しかしウォルデンバーグ氏は諦めていません。「私が会社を救わなければ、誰も救わない」。だからこそ同氏は政府を相手に法的措置を取る数少ない人物の一人となりました。4月末、ワシントン特別行政区で訴訟を起こし、最初の成果を上げたのです。

地方裁判所判事は5月、大統領が単独で行動したことは権限の越権行為だとの判決を下しました。憲法上、これほど重大な関税規制には議会の承認が必要だとしています。

ウォルデンバーグ氏の訴訟は複数の類似訴訟と併合され、最高裁は11月5日に公判を予定しています。地裁と同じ判断が下されれば、世界的な影響を及ぼし、スイス企業への圧力も緩和する可能性があります。

トランプ氏は原告らを「国家の敵」と非難し、自ら法廷に出廷する意向を表明しています。ウォルデンバーグ氏は「この訴訟は政治的な動機によるものではない」と強調。「しかし我々は、現在米国で起きている事態に対して自らを守らねばならない」と語りました。(出典:SRF外部リンク/ドイツ語)

衛生衣に身を包んだ科学者
米国は国際研究への資金提供を打ち切っており、科学データベースやバイオバンクは主要なスポンサーを失うことを懸念している Keystone-SDA

欧州科学研究は「米国から自立を」

「ドナルド・トランプ氏と共和党が約10カ月前に米国政府を掌握して以来、科学界ではもはやビッグブラザーを頼りにすることはできないことが明らかになっている」。NZZは22日の社説でこう論じました。米国は国際研究への資金援助を打ち切っており、科学データベースやバイオバンクは、まもなく主要な資金源を失うことを懸念しています。

「突然、アメリカが研究にどれほどの代償を払っているかが明らかになる――そして欧州の科学が彼らの後流の中でどれほど安住しているかも。これは欧州も医療研究において自立することを学び、より多くの責任を担い、米国との関係を再定義しなければならないことを意味する」

NZZは、2023年に米国立衛生研究所(NIH)がHIVワクチンやがん、コロナ後遺症などの健康研究に346億ドル(約5兆2800億円)を支出した一方、欧州委員会の支出額は11億ドルにとどまったことを指摘します。

「米国が今、資金提供の姿勢を改めようとしていることに腹を立てるのは明らかに誤った反応だ。米国の新たな研究政策を批判する理由は確かに存在するが、他国でのあらゆる研究費用を米国が負担しなくなる事実を非難するのは難しいだろう」

これはむしろ、欧州が自らに批判的な問いを投げかけるべき理由だ、と社説は続けます。「例えば、なぜ欧州は重要な共同科学プロジェクトへの資金提供をこれほど渋ってきたのか?」。結論として、今こそ米国に働きかけ、医学アーカイブPubMed、その他のデータベースの費用分担を提案すべき時だと指摘しました。「それは公平であるだけでなく、波風を立てずに済むだろう」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

次回の「スイスメディアが報じた米国のニュース」日本語版は10月30日に配信予定です。

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英語からのDeepL翻訳:ムートゥ朋子

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