大企業の経営陣にスポットライト
連邦政府はこの程、スイス証券取引所扱い銘柄の会社のトップ経営陣が得る報酬の透明化を求める改正案を決定。2007年1月から発効される。
トップ経営陣の報酬の平均額は増えているものの、経営能力は下がっている。
2007年1月1日から、上場会社の最高経営責任者(CEO)と取締役会メンバーの報酬額を隠すことはできなくなった。関係企業は現在と過去の取締役会メンバーの報酬額、持ち株また認可された借用金額などを開示しなくてはならない。
もっと透明性を
約300の上場会社のほとんどが今回の新法の対象になり、透明性を求められている。これらの会社は従来、取締役会メンバーの報酬の総額を公開するために、スイス証券取引所が定めた自己評定システムを適用するだけでよかった。従って、透明性を規定するものなど何もなく、取締役会は自分たちでメンバーの報酬を決めてきた。
連邦司法局は「新法では、取締役会は自分たちの利益と会社の利益を分けて開示しなくてはなりません。株主にとっては、会社経営で果たせる自分達の役割が今より明確になるでしょう」という。
報酬は増加
経済週刊新聞ハンデルス・ツァイトゥングによると、主なスイス企業の経営陣の報酬額は昨年より平均18%増えた。工業、金融、商業部門の主だった56社のトップ経営者1人の平均的報酬額は年収197万スイスフラン(約1億8200万円)。中でも大手銀行と大手製薬会社が一番高い報酬を払っている。
銀行関係では、UBSは昨年10人のトップ経営陣と3人の取締役に、平均1710万スイスフラン(約15億8120万円)、クレディ・スイスは2人のトップ経営陣に1690万スイスフラン(約15億6270万円)払った。一方、製薬会社ではノバルティスが720万スイスフラン(約6億6580万円)、ロシュが500万スイスフラン(約4億6240万円)、電力関係の会社ABBは430万スイスフラン(約3億9760万円)を払った。
しかしCEOの経営能力は?
ところで、世界の大手企業2500社を対象にアメリカのコンサルタント会社ブーズ・アレン・ハミルトンが行った調査によると、スイスでは役職を退いた大手企業のCEOの内60%が、自分の意に反して退職しており、これは世界平均50%を上回る。
昨年は特に、スイスでは役職を退いたCEOの数が多く、15.3%に上った。世界的にみると、およそ3分の1のCEOが経営能力に欠けるという理由でやめさせられているが、それがスイスでは50%になる。
年齢的にみると、ドイツ語を話す地域(ドイツ、スイスドイツ語圏、オーストリア)でここ数年、役を退くCEOの平均年齢はかなり下がっており、2003年が58.6歳だったのに対し、2005年は54.9歳。スイス全体の平均は52歳である。
CEOが現役でいる期間の平均は、世界平均が7.9年なのに対し、スイスでは4.2年。理由は「経営能力を評価するシステムが、スイスは他国より厳しい」からだとブーズ・アレン・ハミルトンはみる。
swissinfo、外電 里信邦子(さとのぶくにこ)
-ハンデルス・ツァイトゥングによると銀行と製薬会社が経営陣に最も高い報酬を払っている。
-こうした高額報酬を恥ずべきことと批判するのは組合だけではない。最近、クレディ・スイスとUBSの株主達も批判の仲間入りをした。
-2005年の高額報酬者(カッコ内は2004年比):UBSのマルセル・オスペル、2397万5954フラン(約22億1700万円)(+12.7%))/ノバルティスのダニエル・ヴァゼラ、2125万7120フラン(約19億6560万円)(+2.3%)/ ロシュのフランツ・ヒュメール、1474万1295フラン(約19億6560万円)(+11.2%)/ ネスレのペーター・ブラベック、1375万7351フラン(約13億6300万円)(0%)/ クレディ・スイスのバルター・キールホルツ、1210万フラン(約11億1900万円)(0%)
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