WHO 鳥インフルエンザの危険を警告
世界保健機関(WHO・ジュネーブ)と国連食料農業機関(FAO・ローマ)と国際獣疫事務局(OIE・パリ)は27日、共同でアジアで発生している鳥インフルエンザ(H5N1型)について「人間の健康への脅威と農業生産への大被害に繋がる」と警告する声明を発表した。
同声明は「鳥インフルエンザは、人間にとって危険な病原体の人インフルエンザウイルスに変異する可能性がある」と指摘し、この危険を乗り越え、制圧にあたるには先進国を中心とした技術、資金などの国際協力が必要であると強調した。
渡航者へのWHO注意勧告
WHOはまた、現在のところ、人が感染している地域に関しても渡航制限は不必要と見ている。ただ、渡航者には生きた動物を扱う市場や養鶏所に近づかないように勧告している。また、WHOは食品からの感染はこれまでないとしているが、鶏肉や卵は火を通してから食べるように求めている。一般にウイルスは75度で1分間加熱すれば死滅すると言われている。
WHOのプライオリティー
WHOが最も危惧しているのは鳥インフルエンザ(H5N1型)が人の細胞へ入り込むのに必要な遺伝子をもって新たな「新型」ウイルスに変異することだ。このため、WHOが優先するのは感染した鳥の完全処理で、その他、鳥など家きん類の処理や運搬を行う人に対して人のインフルエンザのワクチン接種を勧告、両ウイルスの接触を起こさないよう要請している。
もし、この新型ウイルスが大流行すればどうなるのか。WHOのグローバル・インフルエンザ・プログラムの責任者であるクラウス・シュトウ博士は「1918年に流行したインフルエンザが世界人口が12億の時に4千〜5千万人死亡したことを考えれば、大変な数字になる」とだけ語り、数字は出さなかった。しかし、日本の厚生労働省の検討会資料では世界で30億人が感染、6千万人が死亡という予測が出ている。
スイスも輸入禁止
スイス政府はEUに続いて、23日、タイと中国からの卵、鶏肉の輸入を停止した。しかし、禁止令が出る前にタイから船便で出発した200から300トンの鶏肉の輸入を認めるかどうかで揉めている。輸入禁止は国内産業への感染を防ぐのが主な目的。2003年にはタイから5千トン(輸入品の12,5%)の鶏肉、中国からは500トンの鶏肉を輸入した実績がある。
チューリヒ大学のロベルト・シュテフェン教授はドイツ語圏スイステレビで27日、「鳥インフルエンザによく効く治療薬は存在し、スイスでも少量存在する」と語った。もし、鳥インフルエンザから変異した新型インフルエンザが流行した場合、ワクチンの製造が間に合わず、抗生物質も効かないので治療薬に頼ることになるが、この治療は5日間で80フラン(6千750円)もかかり、大量に提供するのは難しいと見ている。「新型」の出現について同氏は「爆弾に座っているようなものだ」と言い、もし、アジアでの感染が抑えられなかったらスイス人口の4分の1の人が感染すると予想していると語った。
スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)
<鳥インフルエンザについて>
– 食品からの感染ケースは過去一件もない。
– 現在のところ、WHOにより鳥インフルエンザの感染が確認されたのは日本、韓国、中国、台湾、ベトナム、タイ、カンボジア、ラオスでこれまで2千万羽の鳥が処分された。
– 鳥インフルエンザ(H5N1型)の人への感染が確認されたのはベトナムで8人(うち6人死亡)とタイで3人(うち2人死亡)。
– これまでの人から人への感染はなく、感染者は直接、鳥と接触があった人のみだとWHOは発表している。
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。