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耳をつんざくサイレンが鳴り響く!スイスの防災警報、完全ガイド

1984年から使われていた空気圧サイレンは、2019年に新型の電子サイレンに置き換えられた。チューリヒ州シュタリコンで撮影
1984年から使われていた空気圧サイレンは、2019年に新型の電子サイレンに置き換えられた。チューリヒ州シュタリコンで撮影 keystone

毎年2月の第1水曜日、スイス各地に配備された7200基のサイレンが一斉に鳴り響く。演習と知らなければ、何が起きたかと驚くほどの大音量だ。だが、もし「本番」のサイレンが鳴ったら――あなたは正しい行動を取れますか?

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私が初めてこの演習サイレンを聞いたとき、かなり動揺した。平静を装いつつオフィスを見回すと、同僚が時計を見て軽くうなずいている。それでようやくピンときた。

恥ずかしながら、午後1時30分にスイスのサイレンが一斉に鳴るという事前告知を、私はすっかり見落としていた。あれから20年経った今も、最初の数秒はやはりドキっとする。

連邦国防省国民保護局(FOCP)外部リンクの説明には、いかにもスイスらしい丁寧な口調で「一般市民の皆様は、特に行動を起こしたり、防護措置を取ったりする必要はありません。サイレンの騒音でご迷惑をおかけすることを、あらかじめご了承ください」とある。

同局はサイレン試験の認知度を高めるためのコマーシャルも制作している。以下のビデオは、スイス人アーティスト、ペーター・フィッシュリ&ダヴィット・ヴァイスの映像作品「Der Lauf der Dinge外部リンク(仮訳:ことの成り行き)」のオマージュとして制作され、好評を得たCMだ。

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世界のほとんどの国も同様に、緊急の危険が迫ったとき、各地に設置されたサイレンで国民に情報を知らせる。例えば軍事侵攻やミサイル攻撃、原発事故の発生時、あるいは津波、火山噴火、竜巻、地震といった自然災害時にもサイレンが活用される。スイスには固定式が約5000基、移動式が約2200基あり、世界でも最大級の防災サイレン網を誇る。

人々は昔から、叫んだり、太鼓を叩いたり、角笛を吹いたり、鐘を鳴らしたりして隣人に危険を知らせてきた。現代的なサイレンは、フランスの物理学者シャルル・カニャール・ド・ラ・トゥール(1777~1859年)が1819年に発明したといわれている。では、なぜスイスに何千基ものサイレンが設置されるようになったのか?

スイス国立博物館の学芸員で歴史家のユリ・ジャクメ氏は「スイスでは第1次世界大戦以降、サイレンが火災警報として使われるようになった」と同館のブログ外部リンクで説明している。

最初の試験が行われたのは1920年4月。トゥーンの消防隊が城の塔にサイレンを設置して鳴らしてみたが、その結果は「全く期待外れ」だった。地元紙オーバーレンダー・タークブラットは「この移動式サイレンでは、市民を眠りから揺り起こすことも、日中の喧騒を貫くこともできない」と報じている。

第2次世界大戦が始まり、空襲の脅威が現実になると、スイス連邦政府は地方自治体に対し、空襲警報の整備と固定式・移動式サイレンの設置を命じた。戦時中、ベルンの企業グフェラーにより、電話回線を使って複数のサイレンを同時に制御・発動する最初の技術が提供されるようになった。

冷戦期は保護シェルター(防空壕)の建設が急ピッチで進む一方で、警報システム自体はあまり重視されなかった。ただし「水害警報」だけは別だ。1963年、イタリアのバイオントダム外部リンクが決壊し、2千人を超える犠牲者を出す大惨事が発生。同様の事故を恐れたスイス当局は、1971年以降、ダム決壊による津波が2時間以内に到達する可能性がある地域に、サイレン設置を義務付けた。

1970年代には原子力災害への懸念から、新たな警報システムが導入された。警報としての機能は万全だったが、地元紙フライブルガー・ナッハリヒテンは1987年、「警報が鳴ったときどう対処すべきか、住民が知らされていない地域があった」と報じている。

1980年代以降、スイス当局は警報網の密度を高め、国内における試験方式を統一。1982年9月1日(水)午後1時30分には初の試験が行われ、スイス全土のサイレンが同時に鳴り響いた。だが結果は散々だったという。「ジュラ州、ヴァレー(ヴァリス)州、ヴォー州、オプヴァルデン準州、グラウビュンデン州では、警報装置がスタンバイされておらず、サイレンが鳴らなかった」とブログにはある。

1988年、連邦政府はサイレン試験を義務化した。1981~1990年までは年2回(2月と9月の第1水曜日)行われていたが、サイレンの状態が良好であることから、議会の判断で年1回になった。

(出典:スイス国立博物館ブログ外部リンク

サイレンの種類と意味

国防省国民保護局は「スイス(少なくとも一部の地域)は常に自然災害や技術的な事故、あるいは社会的な緊急事態に見舞われる可能性がある」とし、そのため「国民に危険が差し迫った場合は、サイレンが鳴る」と警告している。

スイスには2種類のサイレンがある。スイス国民へ危険を知らせる一般警報と、ダムなど貯水施設の影響を受ける下流地域向けの水害警報だ。2018年以降は、アラートスイス(Alertswiss)外部リンクの公式ウェブサイトかスマートフォン用アプリを通じ、スイスにおける最新の災害警報・注意報や緊急事態の情報を入手できる。

スマートフォン用アプリ「Alertswiss外部リンク」は、洪水や森林火災などの自然災害に関する情報を提供。化学施設や原子力発電所における事故、テロ攻撃の恐れといった危険が迫るとスマホが警報を発する。アプリはiOS外部リンクAndroid外部リンク用に無料で提供されている。

一般警報は、2月第1水曜日の午後1時30分にスイス全土でテストを行う。上がり下がりするサイレン音を1分間鳴らし、2分後にもう1度繰り返す。必要に応じ、午後2時までテストが継続される。

“Allgemeiner Alarm MP3”. Released: 2002.

水害警報は、ダム下流など水害の該当区域で実施。午後2時から(遅くとも)午後4時30分まで、20秒間の低い連続音を12回、10秒間隔で鳴らす。

“Wasser MP3”. Released: 2002.

国防省国民保護局によれば、ほぼ例年、サイレンの99%は正常な誤差範囲内で機能している。

スイスのサイレン網が特別なのは、都市部だけでなく農村部までカバーしている点だ。同局の情報責任者デニス・リール氏は、「固定式だけでなく、車のルーフに載せて特定ルートを走る移動式サイレンもある。これにより、人里離れた地域でも確実に警報を伝えられる」とスイスインフォに話す。

「近隣諸国にも数多くのサイレンが設置されているが、これほど広範なシステムを持つ国は他に類を見ない」(リール氏)

チューリヒ州の自治区シュタリコンに設置される新型サイレン
チューリヒ州の自治区シュタリコンに設置される新型サイレン keystone

本当に鳴ったらどうする?

もし、2月第1水曜日の13時30分以外に、サイレンが鳴ったらどうすべきか?以下に政府情報ポータルch.ch外部リンクの推奨をまとめた。

一般警報の場合は、Alertswissのアプリまたは公式サイトで情報を確認し、ラジオを聴くこと。スイス公共放送や民間ラジオ局が災害や緊急事態における当局の指示を放送しているので、速やかにその指示に従おう。

水害警報の場合は、直ちに危険区域から避難すること。当局の指示、現地の案内資料に従い、Alertswissのアプリで情報を確認しよう。

実際にあった例としては、2007年にベルンで一般警報が出された。アーレ川の水位が警戒レベルに達したため、私財を保護し川から離れるよう地元住民に警告があった。また2008年にはチューリヒ近郊のアドリスヴィルで一般警報のサイレンが作動した。ラジオでは、水道水が汚染されたため、飲む前に必ず沸騰させるよう注意を喚起していた。

聴覚障害のためにサイレンが聞こえなかったり、サイレンに気づいても、言葉の違いから状況を把握できない外国人がいたりするなど、警報が伝わりにくいケースがあることも国防省国民保護局は認めている。そのため「近隣の住民同士で声を掛け合うことが重要だ」としている。また、ポータブルラジオと予備の電池を家庭に備えるよう推奨している。

日本でも防災情報の伝達にサイレンが使われるが、自治体によって種類や音のパターンが異なる。いざというときに慌てないように、自分が住んでいる地域のサイレンが何を意味するのか、事前に確認しておくことをお勧めする。

サイレン試験を告知する連邦国防省国民保護局の今年のCMはこちら。

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サイレンは時代遅れか?

技術が目まぐるしく進歩する中で、サイレンはもう時代遅れなのだろうか。答えは「現時点ではノー」だ。政府は昨年11月、災害警報システムを近代化し、携帯電話ネットワークやその他のデジタル経路を通じて警報を発信していく方針を発表した。例えば「セルブロードキャスト」を使えば、アンテナの受信範囲内にある全ての携帯電話に約500字のメッセージを一斉同時配信できる。それと並行し、今後も従来のサイレン制度を維持するという。

ちなみにスイスは、住民全員をカバーできる核シェルターを持つ世界唯一の国だ。1962年に「住民1人1人が地下に避難所をもつ権利を有する」と定められたため、こうした保護シェルターの建設を一貫して進めてきた。

しかし近年、老朽化や未使用状態に悩むシェルターが増えたことを受け、この政策も曲がり角に来ている。政府は現在、収容人数が7人未満の地下シェルターの設置義務を撤廃することも検討中だ。ただ、これについてはまた別の機会にお伝えしたいと思う。

編集Samuel Jaberg/dos、英語からの翻訳:シュミット一恵、校正:宇田薫

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