世界遺産のエッシネン湖は夏が観光のピークだ
Keystone / Anthony Anex
スイス・ベルナーオーバーラント地方の世界遺産エッシネン湖は5月から、麓駅から湖に登るゴンドラに予約制を導入する。観光客を分散させ、待ち時間や混雑の解消を狙う。
このコンテンツが公開されたのは、
おすすめの記事
おすすめの記事
「スイスのメディアが報じた日本のニュース」ニュースレター登録
スイスの主要メディアが報じた日本関連ニュースを要約した記事を毎週月曜日に配信しています。ご登録いただいた方には記事配信と同時に全文をメールでお手元にお届けします。
もっと読む 「スイスのメディアが報じた日本のニュース」ニュースレター登録
エッシネン湖外部リンクにはふもとのカンデルシュテーク駅(標高1203m)からゴンドラで15分の山頂駅(標高1689m)に着き、さらに徒歩30分ほどで到達する。
絵葉書のようなアルプスと湖のコンビネーションが観光客に人気で、写真共有SNSのインスタグラムだけでハッシュタグ「#oeschinensee」をつけた写真が約14万枚投稿されている。だがオーバーツーリズム(観光公害)も引き起こし、満杯のごみ箱に地元住民は困惑している。
2025年5月から、観光客はカンデルシュテーク=エッシネン湖間のゴンドラのチケットを事前にオンラインで予約できるようになる。チケットは利用時間枠を指定して購入し、悪天候や急病などの場合には無料で時間変更が可能だ。
予約制導入の狙いについて、ゴンドラ運営会社のクリストフ・ヴァントフルー会長は「観光客を分散させ、待ち時間を減らすため」だと説明する。8人乗りのゴンドラに空席があれば予約なしでも乗車できるが、「予約すれば席が確保されるため、長い時間待つ必要はなくなる」というわけだ。
ヴァンドフルー氏によると、ゴンドラの待ち時間が減るだけでなく、湖周辺の混雑も改善すると期待される。
ひいては自然環境の保護にもつながる。「エッシネン湖はユネスコ自然遺産だ。一帯を踏み潰してはならない」。観光客の満足度も向上するとみる。
ヴァンドフルー氏は、湖の管理者らは観光を禁止したいわけではない、と強調する。一義的には意識啓発と「誘導」だ。
オーバーツーリズム対策は過去4年にわたって検討されてきた。直近半年間は、SNSを通じた観光客への呼びかけも実施した。「ここが街や村ではなく、大混雑することもある山だということを知ってほしかった」(ヴァンドフルー氏)
危険行為も増加
最近では危険行為を侵す観光客も増えていた。登山靴ではなくスニーカーやサンダルで山道を歩く人や、立ち入り禁止の立て札を無視する人々だ。
2024年5月の連休には、エッシネン湖を眼下に望む登山道ホイベルク・ルートを歩いていた観光客が雪崩とがけ崩れに巻き込まれた。男性1人が死亡、4人が負傷し、62人がヘリコプターで救助された。
公式サイトや立て札で立ち入り禁止と明示していたが、あいまいに感じた観光客もいたようだ。ヴァンドフルー氏は「準備不足の観光客がエッシネン湖を訪れるのを止めたい」と話す。このためSNSでの情報発信も継続する方針だ。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
おすすめの記事
知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
このコンテンツが公開されたのは、
ハンス・リンギエ財団は9日チューリヒ在住の作家アドルフ・ムシュグさん(91)に欧州政治文化賞と賞金5万ユーロ(約860万円)を授与した。同賞がスイス人に授与されるのは初めて。
もっと読む 知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。