
スイスの世界遺産エッシネン湖、予約制を導入

スイス・ベルナーオーバーラント地方の世界遺産エッシネン湖は5月から、麓駅から湖に登るゴンドラに予約制を導入する。観光客を分散させ、待ち時間や混雑の解消を狙う。

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エッシネン湖外部リンクにはふもとのカンデルシュテーク駅(標高1203m)からゴンドラで15分の山頂駅(標高1689m)に着き、さらに徒歩30分ほどで到達する。
絵葉書のようなアルプスと湖のコンビネーションが観光客に人気で、写真共有SNSのインスタグラムだけでハッシュタグ「#oeschinensee」をつけた写真が約14万枚投稿されている。だがオーバーツーリズム(観光公害)も引き起こし、満杯のごみ箱に地元住民は困惑している。
2025年5月から、観光客はカンデルシュテーク=エッシネン湖間のゴンドラのチケットを事前にオンラインで予約できるようになる。チケットは利用時間枠を指定して購入し、悪天候や急病などの場合には無料で時間変更が可能だ。
予約制導入の狙いについて、ゴンドラ運営会社のクリストフ・ヴァントフルー会長は「観光客を分散させ、待ち時間を減らすため」だと説明する。8人乗りのゴンドラに空席があれば予約なしでも乗車できるが、「予約すれば席が確保されるため、長い時間待つ必要はなくなる」というわけだ。
ヴァンドフルー氏によると、ゴンドラの待ち時間が減るだけでなく、湖周辺の混雑も改善すると期待される。
ひいては自然環境の保護にもつながる。「エッシネン湖はユネスコ自然遺産だ。一帯を踏み潰してはならない」。観光客の満足度も向上するとみる。
ヴァンドフルー氏は、湖の管理者らは観光を禁止したいわけではない、と強調する。一義的には意識啓発と「誘導」だ。
オーバーツーリズム対策は過去4年にわたって検討されてきた。直近半年間は、SNSを通じた観光客への呼びかけも実施した。「ここが街や村ではなく、大混雑することもある山だということを知ってほしかった」(ヴァンドフルー氏)
危険行為も増加
最近では危険行為を侵す観光客も増えていた。登山靴ではなくスニーカーやサンダルで山道を歩く人や、立ち入り禁止の立て札を無視する人々だ。
2024年5月の連休には、エッシネン湖を眼下に望む登山道ホイベルク・ルートを歩いていた観光客が雪崩とがけ崩れに巻き込まれた。男性1人が死亡、4人が負傷し、62人がヘリコプターで救助された。
公式サイトや立て札で立ち入り禁止と明示していたが、あいまいに感じた観光客もいたようだ。ヴァンドフルー氏は「準備不足の観光客がエッシネン湖を訪れるのを止めたい」と話す。このためSNSでの情報発信も継続する方針だ。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子

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