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「ビンラディン 禁じられた真実」スイスで発禁処分

問題の著書を手にするジャン=シャルル・ブリザール氏。1月30日チューリッヒで。 Keystone

スイス当局は18日、仏で出版されたアフガン空爆を巡る告白本「ビンラディン 禁じられた真実」の独語版のスイスでの発売禁止を決定した。これに対し独語版の出版社ドイツのPendoは、スイスの発禁処分に法的手段で抵抗する構えだ。

昨年12月ジュネーブ在住の実業家でオサマ・ビンラディン氏の異母兄であるイェスラム・ビンラディン氏から、「ビンラディン 禁じられた真実」の中で二人の関係について事実と異なる記述をされ被害を受けたとの訴えを受けたジュネーブ地裁は、Pendoに対しスイスでの同著の発売禁止を命じた。「ビンラディン 禁じられた真実」は、仏民間情報機関勤務のジャン=シャルル・ブリザール氏とギョーム・ダスキエ氏の2人の共著で、米同局がどのようにしてタリバンとの交渉を打ち切ったかをえぐり出すところから始まる。同時多発テロ直前まで行われた、テキサスの石油業界・ブッシュ政権とタリバンとの、中央アジア・エネルギーパイプライン(中央アジアからアフガニスタン経由でペルシャ湾までパイプラインを通す計画)とビンラディン氏引き渡しをかけた交渉、サウジアラビアのビンラディン氏への経済援助などを告発し、昨年11月14日発売以来(仏デノエル社)フランスではベストセラーだ。

ジュネーブ当局の決定に対し、独語版の出版権を持ち、ドイツ、オーストリア、独語圏スイスでの販売権を持つ独の出版者Pendoは「この本をどこにいても手に入れられるように、我々はあらゆる法的手段を行使する」としている。デノエル社出版の仏語版は、スイスでは発売されていない。共著者の1人、ジャン=シャルル・ブルザール氏は30日、チューリッヒで記者会見を行い「深く憤りを感じる。物書きなら誰でも表現の自由を侵害されたと感じるだろう。」と述べた。ブリザール氏は、この本の内容は仮説ではなく論証だと主張する。

イェスラム・ビンラディン氏の代理人ヨルグ・ブランド弁護士によると、イェスラム・ビンラディン氏はオサマ・ビンラディン氏とコンタクトを取っていたとする同著の事実に反する記述のため、今後10年から20年間のビジネスに大きなダメージを受けたとし、賠償金2000万スイスフランを要求している。9月11日の米同時多発テロ事件後、イェスラム・ビンラディン氏の口座は独立信販会社の調査を受けたが、異母弟との関係を示す証拠は見つからなかったとブランド弁護士はいう。

問題の本の独語版は、ジュネーブ当局が発売禁止を決定する以前からスイスで販売されていたものが出回っている。Pendo社がすでに出版した独語版のうち2万部は売れており、うち1万部は独語圏スイス市場向けだったという。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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