フンベルトさんの初期作品の一つ。1948年制作
Roger Humbert / Fotostiftung Schweiz
実験的な作品制作を行った写真家フンベルトさんは、1950年代初めから抽象写真やフォトグラム、ルミノグラムに取り組み始めた
© Fotostiftung Schweiz
フンベルトさんの作品はステンシルの型板や紙くずなどを利用し、光を使って抽象化した要素で構成されている
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グラフィックデザイナーとしての経歴は作品にはっきりと見て取れる。1960年の作品
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フンベルトさんのフォトグラム作品は日本、ブラジル、アメリカ、ヨーロッパなど世界中で展示されている
Fotostiftung Schweiz
フンベルトさんはカメラを使わず、印画紙が光に当たって感光した瞬間に生まれる新たな写真作品を作り出した
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「タイプCプリント」、または発色現像方式印画として知られ、カラーのネガまたはスライドから作られる。1974年制作の同作品には、この技法がベースに用いられた
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1978年に制作された図式的なフォトグラム
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光とステンシルを用いた1968年の作品
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光とステンシルだけを用いて作られたフォトグラムは二度と同じものができないため、一つひとつの作品が唯一無二となる
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フンベルトさんの1970年代の発色現像方式印画作品
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1970年代から独自の技法を発展させていった芸術家ロジャー・フンベルトさんの作品は、今も写真界で重要な位置を占める
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バーゼルを拠点に活動する写真家兼アートデザイナーのロジャー・フンベルトさんは、スイスの前衛写真の第一人者だ。1950年代に幾何学的均衡を重んじる抽象表現を生み出した小規模な芸術家グループの一員で、ドラマチックな光の使い方が特徴だった。
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マルチメディア・チームの一員として、写真編集、写真選定、エディトリアルイラストレーション、ソーシャルメディアなど、画像全般を担当。
1997年から2002年までチューリヒとロンドンでグラフィックデザインを学ぶ。それ以来、グラフィックデザイナー、アートディレクター、フォトエディター、イラストレーターとして働く。
Helen James, 写真(Roger Humbert/スイス写真財団)
フンベルトさんは2019年12月に90歳を迎えた。写真とグラフィックデザインを学び、その分野で仕事をしたのち、1950年代に独自の表現方法で実験的な作品制作を始めた。制作に使ったのは写真カメラではなく光源で、印画紙に長時間露光することで画像を作り出す、ルミノグラムという手法だ。「私は光を撮る」。フンベルトさんはそう語った。
そして印画紙上に直接物を置くなどして感光させイメージを生成する技法「フォトグラム」で、新たな形や構造をグラフィカルに作り出していく。
フンベルトさんはさまざまに光の温度を変え、それが画像にどう影響するかを調べた。ステンシルや他の道具なども使い作品のデザインを完成させた。
技術的性質の強い作品を制作していたことから、フンベルトさんは「写真界の自然科学者」と呼ばれた。
ロジャー・フンベルトさんの作品はチューリヒ近郊のスイス写真財団(Fotostiftung Schweiz)に保存されている。また、ヴュルツブルクのペーター・C・ルパート・コレクションやジュネーブ美術・歴史博物館など、数々の国際的な美術館で展示されている。
フンベルトさんは現在バーゼルで暮らし、活動を行っている。
(英語からの翻訳・西田英恵)
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実業家としての才能があったミッテルホルツァーは、スイスの初期のプロペラ機に乗り込み、国内の村や町、工場の写真を撮影して、それを住民、行政機関、工場主などに販売した。やがて彼は国境を越え、ノルウェー領スピッツベルゲン島で調査を行っていた極地探検家ロアール・アムンセンの元へ飛ぶことになる。それから1年後、今度はペルシアに向けてプロペラ機を飛ばし、その際に新たな飛行ルートを開拓。そして、「スイス号」でのケープタウンへの飛行で一躍有名になる。
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