タイでは、王室に抗議する人々が戦いの旗を振り続けている。ジャーナリストのプラヴィット・ロジャナプルック氏(51)は、swissinfo.chの「表現の自由を求める世界の声」シリーズで、タイで危機にさらされている自由について語った。
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イタリア人写真家のジャン・ダガ氏が写した白黒写真は、昨年8月にタイで起こったデモ運動の物々しさを物語る。若い学生たちが手をつなぎ列となってバンコクの通りを練り歩き、その後ろでは重装備した警察官の一隊が睨みを利かせている。その前を歩く1人のジャーナリストがスマートフォンを構え、タイの民主主義を求める戦いをリアルタイムで報じている。それがプラヴィット・ロジャナプルック氏だ。
ロジャナプルック氏は「カーウ・ソット・イングリッシュ外部リンク」(カーウ・ソットはタイ語で『新鮮なニュース』の意)で編集委員を務める。以前は国内の英字新聞Nationで定期コラムを執筆していたが、2014年のクーデターを受けて書いた社説のために辞職を余儀なくされた。以来、同氏は南アジアで民主主義や表現の自由の擁護者として最も有名な人物の1人に数えられている。一方で「人民の敵」とみなされ、数回逮捕された。
swissinfo.chの「表現の自由を求める世界の声」シリーズのインタビューで、ロジャナプルック氏はタイの民主主義の最も大きなハードルになっている「不敬罪」に何度も言及した。あらゆる王室批判を非合法化する存在だ。
タイで現代民主主義を推進する人々は、自分が綱渡りをしていることに時として気づかされる。ダガ氏が印象的な1枚を写し出した昨夏のクーデター以降、若者を中心に数千人もの抗議者が逮捕・投獄された。ロジャナプルック氏は、表現の自由と人々の力を求めるこの運動の最前線で歩き続けている――職業記者、そして敬けんな民主主義の支持者として。
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2012年に同名で刊行された第1弾同様、報道の自由をテーマにした。写真とともに収録された文章が、この写真集を更に厚みのあるものにしている。「このスタイルは、ROGの取り組みを表現するのにぴったりだ。報道写真家とジャーナリストを擁護するのが我々の役割だからだ」と話すのは、2013年6月までROGのスイス支部長だったテレーズ・オプレヒトさん。「例えばインターネットの敵(インターネット上の検閲)に関する章は、文章のみの構成になっている」
この104ページに渡る報道写真集はオプレヒトさんと写真編集者のニコル・エビーさん、グラフィック・デザイナーのマーシャ・ミュラーさんによって構想された。3千部発行で、定価16フラン(約2千円)。スイスのキオスクや図書館で販売される。
掲載されている写真には美しいものもあれば、非日常的なものや衝撃的なものもある。どれもが意味深いものばかりだ。その中にはアフガニスタンで記録された写真4点と、ドイツ人写真家アニヤ・ニードリングハウスさんのインタビュー記事も含まれる。このインタビューが行われた数日後のアフガニスタン大統領選挙の当日、ニードリングハウスさんは警察官が放った銃弾に倒れた。
ROGによれば、2014年だけで既にニードリングハウスさんを含めた66人のジャーナリストが取材中に死亡した。それに加え、21人の市民記者も活動中に亡くなっている。また、誘拐、拘留されたジャーナリストとブロガーの数は世界中で351人に上る。
「スイスには1万人に及ぶジャーナリストがいるが、そのうちROGに参加しているのはたったの550人」と、前出のオプレヒトさん。たとえジャーナリストではなくとも、「この写真集をどんどん広めてほしい。これが報道の自由を守る闘いの支援となる」と話した。
(文:Marc-André Miserez、swissinfo.ch)
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