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ワインの産地ラヴォーがユネスコ世界遺産に

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ジュネーブ湖畔に広がるラヴォー ( Lavaux ) のワイン畑。6月28日、この景勝地がユネスコ世界遺産の仲間入りを果たした。

国連教育科学文化機関 ( ユネスコ ) の世界遺産委員会は、クライストチャーチ ( ニュージーランド ) の会議で、高山アルプスの「ユングフラウ・アレッチ・ビエッチホルン地域」拡大も決定。

 ユネスコの承認により、800年の伝統をもつこのワインの産地は、中国の万里の長城やインドのタージマハールと同じステータスを獲得した。

伝統あるワイン畑

 ローザンヌとヴヴェイ ( Vevey ) の間に広がるラヴォー。世界遺産として認められたこの地区の自慢は、古い歴史を持つワイン畑や壮大な湖畔の日の入り、対岸に浮かぶアルプスのパノラマだ。

 広さ830ヘクタールのこの丘陵地は、遠いいにしえからスイスの代表的なワイン産地として知られてきた。デザレやカラマン、エペッス、サンサフォランなど、地理的標示 ( AOC ) の品質認定を受けているワインも8種類に及ぶ。

 この地域では建設が制限されている。世界遺産に登録したのは、この景観を守り、地域の未来を確保するため。しかし、今回の認定前から、ラヴォーは地域や州、連邦が定める建築規則によってしっかりと守られていた。

 今から30年前、スイスの環境保護活動家フランツ・ヴェバー氏は、宅地開発からからラヴォーを守ろうとキャンペーンを開始。1977年に行われた国民投票で見事成功を収めた。今回のユネスコの決定は「大きな闘いを乗り越えたたあとの最高の栄誉」だ。彼はフランスの通信社AFPに対し、「ここはとても荘厳な場所。すべてが調和しています。この一帯の村々は、ぶどうの木のように土から成長してきたのです」と語っている。

 スイスのフランス語圏で初めて世界遺産に認定されたラヴォー。「チューリヒから電車でやってくる人々は、ラヴォーの高台にあるトンネルを抜け出たとたん、帰りの切符を捨ててしまうらしいですよ」とヴェバー氏からは冗談も漏れる。

 今回の会議では、39カ国45地域の認定について話し合われた。スイスには、ベルン旧市街 ( 1983年 ) やザンクトガレン修道院 ( 1983年 ) 、ベリンツォーナ ( Bellinzona ) の3つの城 ( 2000年 ) など、すでに認定を受けている6つの世界遺産がある。そして今回、ラヴォーがこの仲間入りを果たしたというわけだ。

ユングフラウ

 世界遺産委員会の決定に伴い、アルプス初の世界自然遺産「ユングフラウ〜・アレッチ〜・ビエッチホルン地域」もこれまでの539平方キロメートルから824平方キロメートルに拡大された。

 「これで総面積は50%以上広がりました」と喜ぶのは連邦環境省環境局 ( BAFU/OFEV ) のブルーノ・ヴァルダー氏だ。「名前も一新されます。新しい名前は約1年後に提案される予定です」

 拡大後の認定地域はアール ( Aar ) の断層地塊全体を含み、北東はグリムゼル ( Grimsel ) まで延び広がる。シュレックホルンやラウターアールホルン、フィンスターアールホルン、オーバーアールホルンの山々がそびえ、数々の氷河が横たわる一帯だ。

 西側は、グスパルテンホルンの周辺、ペータースグラートを含むブリュームリスアルプ山群、カンダーフィルン、ドルデンホルン山群、そしてレッチェン谷に下る傾斜地をカバーする。

 新しい認定地域には合計26の地方自治体が含まれ、ベルナーアルプス山脈がすっぽりと収まる。氷河地域や山岳地帯の数もぐんと増えた。

卓越した価値

 1972年のユネスコ総会で採択された世界遺産条約は、卓越した価値を持つ自然や文化を認定し、保護、保存することを目的としている。

 認定地域は137カ国に800カ所以上あり、628カ所が文化遺産、160カ所が自然遺産、そして24カ所が複合遺産に指定されている。

 ニュージーランド南部のクライストチャーチで開催された第31回世界遺産委員会では、ユネスコ世界遺産リストに載せられている830の世界遺産についてもその保護状況が検討し直された。

swissinfo、外電、小山千早 ( こやま ちはや )

<スイスの認定済み世界遺産>
- ベルン旧市街
- ザンクトガレン修道院
- ベリンツォーナ旧市街にある3つの城、要塞と城壁
- ミュスタイルの聖ヨハネのベネディクト会修道院
- ユングフラウ・アレッチ・ビエッチホルン地域
- サン・ジョルジョ山

ヴォー州にあるラヴォー ( Lavaux ) はジュネーブ湖の北東の湖畔、ローザンヌとヴヴェイの間に位置する。ラヴォーはスイス屈指のワインの産地で、ここの丘陵地には830ヘクタールのワイン畑が広がる。ワインの製造はローマ時代から行われていた形跡があるが、現存のワイン畑はベネディクト会修道士とシトー会修道士が治めていた11世紀に作られたものと思われる。この地域は温暖な気候に恵まれており、さらに南に面した丘陵地と古い石壁が地中海の雰囲気を醸し出している。主な品種はシャスラ ( Chasselas ) 。

高山アルプスの中でもとりわけ美しい一帯で、氷河の数は最多。ヨーロッパとアジアでもっとも長い氷河もここにある。多種多様の生態系に恵まれ、壮大で美しい景観を誇るのみでなく、山や氷河の形成、また現在進行中の気候の変化に関する情報も数多く得られる。

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