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「4回死んで生き返った」 マラソン・ロスリン選手

大阪マラソン3位でゴール!長い付き合いの3人の友だちの支えでプレッシャーにも勝つ Keystone

2007年に開催された「大阪世界陸上大会」で銅メダルを獲得したスイスマラソンの逸材、ヴィクトル・ロスリン選手はテニスのロジャー・フェデラー選手と並んで、スイス国民に愛されるスポーツマンだ。

このコンテンツは 2008/01/22 15:26

定期的にトレーニングを行っているケニアで、昨年末に起こった暴動に関連し、異国に住む同僚たちを気遣う発言が、ロスリン選手の人気をさらに高めた。

大阪での成績は2時間17分25秒。暑さと湿気を考慮し、冷却剤を背中に浴びせながら走った。しかし、その袋が破れ冷却剤が目が入り、前が見えずに2.5キロメートルも走らなければならなかったという ( 2007年8月26日付、NZZアム・ゾンターク )。 2月17日の「東京マラソン2008」を目指して練習中のルートリン選手に、センパッハ市 ( Sempach、ルツェルン州 ) でインタビューした。

swissinfo : 昨年末は、ケニアで起こった暴動を身近に体験し、暴動のため練習を取りやめスイスへの帰国を強いられたそうですね。怖かった思い出で練習が妨げられるということはありませんか。

ロスリン : ケニアでは怖いと思ったことはありませんでした。

今回の暴動ために、優秀な同僚たちと練習できないという痛手はあります。しかし、パートナーや知り合いのマラソン選手でけがをした人もいます。家を焼かれ、命を落としたケニアの人たちを思うと、わたしの東京マラソンや北京オリンピックの準備の予定が狂ったことなど、あまり大したことではないと思っています。

swissinfo : スイスは山国であり、マラソンの練習場として日本からも選手が練習に来ています。スイス出身のあなたがわざわざケニアに行く理由は何でしょうか。

ロスリン : 確かに、サンモリッツにはたくさんの外国人選手が来ますね。わたしがケニアに行くのはまず、優秀なパートナーがケニアにいて、グループでのトレーニングができるためです。また、高地であり、気候が理想的だからです。スイスは雪が降ります。寒いところでのトレーニングはだめです。

swissinfo : 大阪でのマラソンはいかがでしたか。

ロスリン : 暑さと湿気で苦しい思いをしました。ゴール到着の写真を後で見ましたが、まるで骸骨のような姿に自分自身びっくりしました。これで体重が10%減りました。

5位になった尾方剛選手はマークしていました。記録もわたしと似ていますし、後半でピッチを上げる走り方なども似ています。大阪では、尾方選手がわたしの後ろに来た時、彼の走りが速く、勝てるかどうか不安でした。彼は強敵です。そのほか6位の尾崎、7位の諏訪の両選手は大いに気にしています。

また、日本のファンがマラソン選手を熱狂的に応援するのには驚きました。崇めるような、( 手を合わせて祈るようにして ) といった風にされると、スイス人のわたしなどは、申し訳ないような気持ちになりました。

swissinfo : 大阪で銅メダルを獲得した理由をスイスの某新聞は「緻密 ( ちみつ) な計画と、周到な戦略の賜物 ( たまもの ) である」と書いています。

ロスリン : 計画を練るのが大好きです。些細 ( ささい ) なことにまで心を配ります。

例えばわたしの靴とソックスですが、神戸の日本のスポーツ用品メーカーに特別に作ってもらっています。靴とソックスが日本製。ですから、わたしの体の半分は日本人なんですよ。日本の製作者は「靴の神様ですね」。最高の靴です。日本人の選手が不満を抱くかもしれませんね。細かいことすべてを完全にすることが、成果につながるのだと思います。日本人もスイス人も完ぺき主義という点で共通していますよね。

swissinfo : スイスを代表する女子テニスのマルチナ・ヒンギス選手のドーピング問題は、ファンを大きく驚かせました。

ロスリン : 優秀な選手ほどそのリスクは高くなるのが常です。ほとんどの場合、選手は意識して薬剤を飲みます。知らないうちに服用していたなどということは珍しいでしょう。

わたしは自分がドーピングしていないと証明することはできませんが、自分のモラルをどこに置くかは知っています。ただ、マラソン選手になりたいと思って練習している子どもたちには胸を張って、ドーピングはしていないと言えます。わたしが大阪で銅メダルを取ったのは、マラソンがドーピングをしなくとも勝てる競技だと証明したという意味で有意義でした。コントロールは厳しく行ってほしいと思います。それがわたしのチャンスにもつながりますから。

swissinfo : 大阪マラソンでは、4回死んで、また復活したとインタビューに答えています。なぜ死ぬような思いをしてまでマラソンをするのでしょう。

ロスリン : マラソン選手の多くが、走っていて壁が目の前に立ちはだかるといった幻覚を見ると言います。わたしはそういった状態を、死で表現しています。本当にもうだめだ思うのですが、死は急にすっと消え、再び走り続けられると思うようになります。死は、始めに来ることもあれば、終盤戦10キロメートルで訪れることもあります。死が消え去ったときの気持ちよさがマラソンの魅力です。

swissinfo : その魅力が観客にも伝わってくるわけですね。しかし、物質的に豊かなスイスで生まれ育ったあなたが、厳しい練習を強いるマラソンをする理由が分かりません。

ロスリン : わたしの母は専業主婦で、父は建設現場のショベルカーの運転手でした。兄弟3人、質素な暮らしでした。両親に外国旅行など連れて行ってもらったことはありません。でも、今ではマラソンで世界を旅行できるようになりましたし、外国に行けることがマラソンを続ける理由にもなっています。家族にはとても感謝しています。

日本のスポーツ選手とは違い、スイスの選手は企業に所属していません。わたしはスポンサーの寄付とスイス陸上協会からの収入で生計を立てていますが、生活するのは難しいです。わたしが独自に開発したトレーニングプランをインターネット上で提供するといったことで収入を得、国外への飛躍を考えています。

swissinfo : 今年の北京オリンピックの目標をどこに置きますか。

ロスリン : 東京大会後、北京に行ってくるつもりです。参加する以上メダルは取りたいですが、10位以内に入ることが目標です。北京市内の大気汚染のことが取りざたされていますが、汚れた空気に対する対策は講じるつもりはありません。現地に早目に行って体を慣らすことはします。もっとも、マラソン中継で北京市内を世界中に見られるわけですから、中国政府も対策を練るだろうと思っています。

swissinfo、聞き手 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) センパッハにて

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<ヴィクトル・ロスリン略歴>
1974年10月14日生まれ
1993年 ジュニア欧州選手権 5000メートル、6位
1998年 ブタペスト欧州選手権 10,000メートル 19位
2000年 シドニー・オリンピック マラソン36位
2001年 ベルリンマラソン スイス最高記録 2時間10分54秒
2002年 ミュンヘン欧州選手権 マラソン16位
2004年 チューリヒマラソン スイス最高記録 2時間9分55.8秒
2005年 ニューヨークマラソン 7位 ( 2時間11分44秒 )
2006年 イエーテボリ欧州選手権 2位 ( 2時間8分19.2秒 )
2007年 大阪世界陸上大会 3位 ( 2時間17分25秒 )

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