ドイツの保険大手アリアンツは27日、世界各国の富裕度を測る「グローバル・ウェルス・レポート2017外部リンク」を発表した。前回1位だったスイスは2位に陥落。米国に首位を譲り渡した。日本は3位だった。
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昨年のスイスの個人一人当たりの純金融資産は17万5720ユーロ(約2300万円)で、前年に比べ2.7%増加したが、米国が前年比5.8%増の17万7210ユーロと上回った。3位の日本は金額が大幅に下がって9万6890ユーロ。スウェーデンが9万5050ユーロで4位、5位は台湾の9万2360ユーロだった。
レポートは「バランスシートの構造改革に加え、米国は昨年のドル高ユーロ安の恩恵を受けた」としている。
一方、総金融資産ではスイスが26万8840ユーロで世界トップ。米国は22万1690ユーロだった。日本は11万8950ユーロで9位。
アリアンツは27日、「昨年末、とりわけ工業国での株式市場の回復が良い数字につながっている。昨年の資産増加分のほぼ7割が資産価値の変動によるもので、貯蓄が純粋に増えたのはわずか3割だ。一方、前年は逆の傾向だった」との声明を出した。
負債の脅威
昨年の世界の家計債務は5.5%に上り、07年以降で最も高かった。数値は国ごとに大きく異なり、例えばギリシャでは一人当たり1万220ユーロ、スイスは9万3120ユーロだった。
レポートでは「2カ国のギャップは世界金融危機以降、6万5千ユーロから8万3千ユーロに拡大した」と分析。「ギリシャでは金融危機以前の『過度な負債』を修正し、家計債務を年間平均0.8%削減したが、スイスは3.4%まで伸び続けた」とした。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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真面目に働いても大富豪になれるとは限らない
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スイスは億万長者が人口に占める割合が世界で最も高い。人口は大阪府よりわずかに少ない約800万人だが、英国の不動産コンサルタント大手ナイト・フランクの資産調査では3000万ドル(約33億円)以上の資産を所有する人が約7千人いるという。これだけ富豪が集中する国はほかにはない。一方、富の格差を長年研究するバーゼル大学のウエリ・メーダー教授(社会学)は「誇るべきことではない」と警鐘を鳴らす。
メーダー教授は社会格差が生まれる原因を長年研究。10億フラン以上の資産を持つ大富豪に関して「コツコツと自分の力で上り詰めた人はいない」と指摘する。
スイスインフォ: 調査によれば、スイスには莫大な富が集まっています。大富豪をこれだけ魅了する理由は何でしょうか?
ウエリ・メーダー: 安定した政治と(大富豪にとっての)有利な税制だ。とりわけ資産と遺産関連の税制が魅力で、海外から多くの資金が集まっている。優れた投資コンサルティングもある。一部の経済界では、非常に高額の給料がもらえることも一因だ。
スイスインフォ: 大富豪はどのようにしてこれだけの富を得たのでしょうか?
メーダー: 裕福な家庭の生まれか、その一族と結婚して資産を相続するなどのケースが多い。2016年に1年間連邦大統領を務めたヨハン・シュナイダー・アマン経済相や元閣僚のクリストフ・ブロッハー氏の子孫などが有名な例だろう。
スイス国内全体の遺産相続関連資産の4分の3を、相続者全体のわずか1割が独占している。この国である人の資産が急激に増加した場合、例えば国内の億万長者上位300人が資産を1千億ドルから6千億ドルに増やしたとすると、それはだいたいが遺産相続によるものだと想像できる。
また、特定の経済界で法外な給与が支払われていることも、億万長者を生んでいる理由の一つ。働き者で斬新なアイデアを持つことも確かにその理由に挙げられるが、過大評価されている面が否めない。大富豪の多くは斬新なアイデアなど持っていない。地価の上昇で利ザヤを得るなどのマネーゲームをしているだけだ。
スイスインフォ: 億万長者は外国人とスイス人のどちらが多いのでしょうか?
メーダー: 億万長者の約半数が国外から移住してきた人だ。彼らにとってスイスが魅力なのは、スイスの納税額には上限があり、一定のラインを超えるとその額が変わらないこと。過去には銀行の秘密主義も外国人を魅了した。現在では、大企業関連の富も多く集まっている。
スイスインフォ: 良い学校を出てまじめに働き、運にも恵まれて巨万の富を得た人はいないのでしょうか?
メーダー: 資産家の大半は何もしなかったのではなく、何かしら自ら努力している。しかし、金融ビジネスなどでここ10年の間で急激に資産を増やしたケースを見ると、自ら汗を流してきたとは言えない。
スイスインフォ: 例えば皿洗いから大金持ちにのし上がる人もいます。まじめに働いて大富豪になれるのでしょうか?
メーダー: そのようなまじめな人はいない。これらの富は常に他の人の犠牲の上に成り立っている。大富豪の多くは、あたかも自分の力で苦労して富を増やしたかのような感情を抱いているが、それはまやかしだ。
バーゼルで私は時折、経営者に会う機会がある。一人がこんなことを言った。「メーダーさんは、助けを必要としている人に常に手を差し伸べるのですね」と。そういう彼自身が経営する会社は親から受け継いだもので、資産だって自分が稼ぎ出したものでないことに、彼自身全く気付いていない。
スイスインフォ: しかし「幸福は自らの手で築くもの」「努力なくして成功なし」ということわざがあります。これは間違いなのでしょうか?
メーダー: スイスにはフルタイムで働いているのに成功していない人はたくさんいる。給料が少ない業界にいるからだ。まじめに働いたら富を築けるという保証はどこにもない。
スイスインフォ: この国では資産家は歓迎されています。多くの地方政治家が、資産家に有利な施策を打って富裕層を呼び込もうとしています。これは地元社会にとって良いことなのか、それとも悪いことなのでしょうか?
メーダー: 私たちに利益は生じない。確かに、資産家が支払う多額の税金は小さな自治体においては影響が大きい。だが第一に、彼らに自治体が依存するようになってしまう。さらに自治体と州の間で税率の引き下げ競争が始まり、結果税収が減って不動産価格と地価が上昇してしまう。第二に、例えばある富を複数の人間が少しずつ分け合っていたとする。この場合、各個人の所得税などの税額は上昇する。一人が同じ富を独占し多額の税金を払うのと全体の税収額は結果的に変わらない。
社会の連帯と平和な労使関係を重要視する民主主義国家にとって、富がより良く分配される方が確かに好ましい。
私は裕福な人を非難しているのではない。ただ、お金持ちが地元に住んでいるからといって感謝する必要はない。一方では生計を立てるのに身を粉にして働いている人がいて、他方では裕福な家庭に生まれ苦労を知らない人がいる。そんな格差を目の当たりにするとやりきれなくなるが、それでもお金持ちが地元にいることに感謝してしまう、そういう気持ちは残念ながら文化的に根付いてしまっている。
スイスインフォ: スイスでは第二次世界大戦後、コツコツ働いてそれなりの富を蓄えた中流階級がかなり増えました。
メーダー: 1950~70年代、幅広い層が経済的に豊かになった。72年の国内の失業者はわずか106人だったという。社会的補償というリベラルな概念が根付いたのはその時だ。勤労と資産はバランスのとれた関係であるべきだ。ここ数年、あるパラダイムシフトが起きている。今日では、仕事よりお金の方がはるかに重要になってきているのだ。お金が物事のすべてになってしまっている。多くの人は社会的な格差を問題視することなく、それを社会の活性化のしるしだととらえている。
スイスインフォ: スイスの状況はそれほど悪いのでしょうか?
メーダー: 最後に一つ肯定的なことを言うならば、私は資産家を何人か知っているが、彼らは現在の状況に批判的で、そこに潜む危険性をよく分かっており、抑制的になるよう呼びかけている。富の格差
経済協力開発機構(OECD)の2015年調査によれば、億万長者が人口に占める割合はスイスが世界で最も高い。スイス国内の大富豪上位300人は、3人に1人が10億フラン以上の資産を保有。これは世界の大富豪の14人に1人がスイスに住んでいる計算になる。
スイス労働組合連合の16年の報告によると、スイス国内の高額納税者の2.1%が持つ純資産は、残りの97.9%が持つすべての純資産と同じ。約4分の1の納税者については、純資産が非課税。
資産の配分を示すジニ係数は、0~1の数値を取り、1だとすべての資産を1人が独占している状態で、0だと資産が均等に分配されている状態。つまり、1に近いほど格差が大きく不平等になる。公式な統計では、スイスのジニ係数は0.8で、世界で最低ランク。
自分の力で大富豪になれるのか?
「コツコツ働いているだけでは莫大な財産は得られない」という説には、研究者の間でも異論が出ている。社会奉仕活動に詳しいバーゼル大のゲオルグ・シュヌルバイン教授は「経営者家族の下に生まれた人が優れたアイデアを考案し、それがビジネスとして成功した場合、それは間違いではない」と指摘。「ビジネスの発展には、ある種の徹底した厳しさが背景にあったということは否定できない。しかし、裕福になった人が必ず悪いことをしたと考えるのは間違いだ。貧しい人自身にも責任はない。裕福になるのはその時の社会環境も理由の一つだ」
同教授によれば、スイスは多くの大富豪から恩恵を受けているという。例えば同教授は社会、文化、環境団体は「金持ちの慈善行為に依存している」と指摘する。
国内にいる大富豪の大半は経済界で財を成した人たちだ。海外からの移住者が多いのは、魅力的な税制、地理的な利点、治安の良さと安定した政治、金融の中心地があることなどのスイスの特性が大きな理由となっている。
自治体が富裕層をうまく呼び込めるかについて、シュヌルバイン教授は「内的矛盾をはらんだ戦略と言える。少数の人間が予算を支えている場合、リスクは極めて大きい。この少数の人間はいずれ別の場所に移住するかもしれない。それまで潤沢な財政を背景に予算を組んでいた自治体は窮地に陥る」と話す。
また同教授は、私有財産が非常に増加してきたとし、「一部の人間は巨万の富を得た。グローバリゼーションの影響で、富があるところにさらなる富が集まるようになった。ある一定のレベルに達すると、富を得るために何もしなくてもよくなる」と話す。
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スイス、「貧しく」なっても依然ランキングトップに
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スイス金融大手のクレディ・スイスは22日、世界の富を包括的に調査分析した「2016年グローバル・ウェルス・レポート」を発表。スイスの成人1人当たりの富の平均額が56万1900ドル(約6千200万円)と、世界最高額であることを明らかにした。スイスは16年連続でトップの座を維持している。
今回で第7版となる同レポートのランキングでは、1位のスイスに、オーストラリア(37万6千ドル)、米国(34万5千ドル)、ノルウェー(31万2千ドル)が続いた。
首位となったスイスだが、成人1人当たりの平均額は前年比で約2万7千ドル少なく、また資産総額100万米ドル超の富裕層は、2015年の77万4千人から71万6千人に減少した。資産総額が5千万ドル以上の超富裕層はおよそ2千人で、米国、中国、英国、ドイツに続き5位にとどまった。
00年以降、スイスは富の平均額において世界をけん引してきた存在だ。クレディ・スイス研究所によれば、スイスは12年以来、成人1人当たりの富が毎年50万ドルを超え、これは他の国では達成されていないという。
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