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「欧州平均」だがいびつなスイスの政党資金

政治家たちが座っている上院議場を見渡す
連邦議事堂で採決に望むスイス国会議員たち Keystone / Alessandro Della Valle

スイスの政党献金に関する新たな透明性規則が欧州平均と同水準であることが初めて明らかになった。スイス規制当局は、同規則はスイスの政党の収入の全貌を解き明かすものではないとみている。

スイスは2022年に「政治資金透明性令」を制定し、翌年の総選挙から適用した。それ以前は、国内の政治家に誰が出資しているのか完全に不明だった。現在では、国民投票キャンペーン(有権者に賛成・反対を呼びかける運動)への寄付の3分の2、および政党献金の2分の1について、寄付者が開示されている。

スイスの透明性はヨーロッパのなかではどのくらい高いのか?オランダのポータルサイト「Follow the Money(FTM)」で比較が可能だ。FTMは2024年、欧州連合(EU)全体で、政党の資金調達方法と、寄付金の出元を調査した。

スイスは欧州内で平均的

政党の資金調達の透明性に関して、スイスはEU加盟23カ国中、国民投票・選挙では13位、政党への献金では11位となっている。EUのデータは、政党の収支報告書と登録簿に基づく。

政党収支の開示規則は国によって異なる。

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ベルギー・ルーヴェン大学の政治学者トイネ・パウリセン氏は「スイスは堅実な中間層に位置している」と話す。アイルランド、イギリス、モルドバなどヨーロッパにおける国民投票の資金調達を研究するパウリセン氏は、「国民投票は選挙に比べ政党が直接的に得るものが少ないため、分析において特に興味深い」と話す。

特に国民投票キャンペーンにおける巨額の支出は優先順位を浮き彫りにする、とパウリセン氏は話す。「選挙公約はタダだが、国民投票キャンペーンには莫大なお金がかかる」

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だがパウリセン氏は、スイスの開示義務の緩さを批判する。1万5000フラン(約300万円)未満の寄付は公開義務がない。予算が5万フラン未満のキャンペーンも開示義務の対象外となっている。そのため多くの献金が隠蔽され、真の力関係が見えないままになっている、とパウリセン氏は指摘する。

EUの調査外部リンクによると、域内の最低開示額は平均2400ユーロ(約43.7万円)と、スイスの約6分の1だ。欧州評議会の反汚職国家グループ(GRECO)は直近の報告書外部リンクで、EUと同じ水準に下げるようスイスに勧告している。

透明性の高さで対照的なのはチェコだ。選挙活動にかかるお金は全て特別な銀行口座から支払わなければならず、これらの口座は一般公開外部リンクされている。

パウリセン氏は、透明性にはもう一つ「政治システムへの信頼を強化する」という目的がある、と説明する。それはスイス公共放送協会(SRG SSR、スイスインフォの親会社)が実施した世論調査外部リンクでも、同じ意識がうかがえる。スイス国民の8割は「利益団体の政治に対する影響力が大きすぎる」「お金は政治的影響力を与えすぎる」という印象を抱いている。

スイスは2023年秋の総選挙で初めて政治資金透明性令を適用。欧州評議会46加盟国中最後の国となった。国政選挙や国民投票に向けた運動と、連邦議会に議席を持つ政党に適用される。

5万フランを超える支出を伴う選挙・投票運動は、総収入および1万5000フランを超える全ての寄付金を開示する義務がある。議会政党は収入と主要な寄付者を毎年公開する必要がある。全てのデータはスイス連邦会計検査院に届けられ、公開される。連邦司法省が現在、透明性令がどの程度機能しているかを調査中だ。

スイス政界への大口寄付者は?

スイスでは、誰もが好きなだけ寄付をすることができる。法的に禁止されているのはたった2つ。匿名での寄付と、外国からの寄付だ。EUの標準的な慣行に足並みをそろえたもので、ともにEU加盟国の4分の3で禁止されている。

外国からの寄付が合法なのはベルギー、デンマーク、スウェーデン、オランダ、ドイツ(最大1000ユーロ)の5カ国に限られる。

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スイスの2024年の公開データを見ると、個人献金は政党献金総額のわずか10%、投票・選挙運動の2%にとどまった。残りは企業や業界団体、労働組合、NGOからの献金だった。スイスの政治は、経済的、イデオロギー的な利益関心のある組織からの寄付に依存している。昨秋、スイス政府が過半数の株式を保有する通信会社スイスコムがデジタルID導入案への賛成運動に3万フランを寄付していたことが分かり、物議を醸した。

インフラ建設業界団体「インフラ・スイス」は2024年9月の国民投票にかけられた高速道路増設案の賛成運動に約14万フランを寄付した。同6月の再生可能エネルギー増設案には公営電力会社「アクスポ」が25万フランを寄付していた。

公開データによると、2024年に実施された国民投票のキャンペーンへの寄付金は総額3100万フラン。業界団体からがその半分を占めたが、環境NGOや住宅所有者団体、医師会、労働組合からも数百万フランが寄付された。

個人献金が中心のEUに比べると、スイスは組織・団体からの献金の割合がかなり高い。寄付の記録方法や分類方法は国によって異なるとはいえ、その違いは目立つ。

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英ノッティンガム大学の政治学者フェルナンド・カザル・ベルトア氏によると、政治献金における団体献金の割合の高さは、スイスの規制の弱さを反映している。スイスでは寄付額に上限がなく、これは法人、特に企業からの献金で問題を起こしやすい。「定義上、企業には公益性がない」ことから、政府契約を受注する企業は利益相反になりうるという。

カザル・ベルトア氏は、透明性によって政治への信頼を高めるためには、お金の持つ影響力に歯止めをかけ、「資金的軍拡競争」を阻止する必要があると主張する。「無制限の支出を許す者は、無制限の歳入を生み出す。問題は、その歳入がどこから来るのかだ」

カザル・ベルトア氏によると、スイスの現状とは対照的に、欧州評議会は企業寄付の全面禁止を勧告している。2021年のEU調査によると、国営企業からの献金が認められているのは5カ国のみ。スイスのアクスポによる寄付は、他の国の多くでは違法になるということだ。EU加盟国の半数は、自動車メーカーなど政府と大規模な契約を結んでいる企業からの寄付を禁止している。

EU 13 カ国では、法人からの寄付は一般的に禁止されている。

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お金のないスイス政党

ルーヴェン大で政党の資金調達を研究するワウター・ウルフス氏は、寄付額に上限のないスイスは別の理由でも問題があるとみる。「最終的には、広告予算ではなく、主義主張の問題になる」。国民に、政治的影響力がカネで売られているという印象を与えてはならない。スイスには政党への国庫補助金がないため、こうした印象は特に問題となりやすいという。

スイスの政党はごく一般的な団体で、国からの政党助成金はない。議会の会派のみが事務所運営のための国から資金援助を受けており、2024年には総額740万フランだった。会派への助成金を政党収入に算入すると、その割合は政党収入全体の約25%。EU平均を大幅に下回る。

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ウルフス氏はまさにこの点に変革が必要だと主張する。透明性が信頼を醸成するのは、誰もが公平な立場にいる場合に限られる。だからこそ、バランスの取れた公的資金配分が不可欠だ。「政党は国家の傀儡や裕福な寄付者の手先になってはならない」。国の政党助成金と、民間からの献金との間でバランスを取るべきだという。

データによると、欧州でスイスよりも国の助成割合が低いのはマルタだけだ。EUでは、平均して政党予算の半分以上が公的資金で賄われている。アイルランドでは、政党はほぼ完全に納税者の資金に依存している。

データ不信

スイス連邦会計検査院は2025年8月末、国政政党の収入に関する2度目の統計を公表した。2024年の収入は2240万フランだった。しかし、会計検査院は、このデータは「政治資金の全体像」を示すものではないと明記している。そして会計検査院がスイスの透明性規則が包括的な概要を提供していないと判断したという事実は、厳しい結論だろう。

協力:Jennifer Steiner und Luca Obertüfer

編集:Benjamin von Wyl、独語からの翻訳:ムートゥ朋子

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