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スイスの働く親たち③ 「入園は2年待ち」地方で子育てする苦悩

子供と散歩する母親

子育て環境の地方格差は、スイスにもある

(Keystone)

スイス中央部にある小さな山間の町インターラーケン。この町の日本食レストランで働く高見アストラヴァン栄都子さん(43)は、近隣の村でインドネシア人の夫と子供2人と暮らす。一人目を出産する前、地元の保育園から返ってきたのは「2年待ち」の返事。保育環境が都市部ほど充実していない地方の現状に戸惑ったという。

 栄都子さんは、もともとインターラーケン周辺にある観光客向けのみやげ物店の販売員や高級時計・貴金属店のマネージャーとして忙しく働いていたが、子供が二人に増えたこともあり、今年5月に日本食レストランに転職。週3日出勤し、ウェートレスとして働いている。長女で小学校2年生の聖楽(せいら)ちゃん(7)は地元の小学校に通い、放課後は学童保育で過ごす。長男の佳維(けい)君(4)は保育園に週2日預け、残りの1日は夫のイニョマンさん(47)が面倒を見る。

特集 家族を育む

​​​​​​​家計を圧迫する高額な保育料、給食のない小学校、子育て環境の地域格差、法律で保護されていない男性の育児休業ー。スイスで働きながら子育てに奮闘する人たちの現状を追った。    

保育園が空かない

 みやげ物店の同僚だったイニョマンさんと2009年に結婚し、聖楽ちゃんを妊娠。当時はインターラーケンに近い別の村に住んでいたという栄都子さんは「保育園が空かないこと」が一番のネックだったと振り返る。

 栄都子さん夫婦の所得額は自治体の保育料助成の対象になるため、その特別枠がある保育園を探したが、もともと保育園の少ない地域であるのに加え、特別枠がある保育園は近隣に1カ所しかなかった。聖楽ちゃんが生まれる4カ月前にこの保育園に問い合わせると「2歳以下は2人しか預かることが出来ない。空きが出るのは2年後」と言われて驚いたという。

州で大きく異なる保育定員の充実度

 連邦制をとるスイスでは保育所、託児所の整備は州や自治体の裁量に任せられているため、保育料、子どもの受け入れ数などは地域によって大きく異なる。

 スイスのリサーチ会社INFRAS他のサイトへとザンクトガレン大学の経済調査機関SEW他のサイトへが、各州の0~3歳児の人口に占める保育所等の定員の割合(2009~2010年)他のサイトへを調べたところ、数値が高かったのはバーゼル・シュタット準州(21%)、チューリヒ州(15%)など都市部の州と、ジュネーブ州(22%)やヴォー州(19%)、ヌーシャテル州(23%)のスイス西部。中でもチューリヒ(30%)、ローザンヌ(38%)、ジュネーブ(31%)などの都市が突出している。それに比べて田舎やスイス東部の州の割合はわずか一ケタ台。栄都子さんの住むベルン州も、ベルン市単独では36%とチューリヒより保育環境が充実しているが、州全域では9%にとどまる。

保育定員の地方格差
(swissinfo.ch)

 さらに、所得が少ない人に州が保育料を助成する特別枠も、自治体によって数にかなりばらつきがある。田舎やスイス東部の地域では、子供は家庭で面倒を見るべきだという保守的な考え方も少なからず残っているのが現状だ。

 栄都子さんは仕方なく、保育園よりは割高になるが自宅で子供を預かる保育ママ(ターゲスムッター)を人づてで探し、出産後4カ月で職場復帰。聖楽ちゃんが保育園に入れたのは結局2年後で、佳維君の時も1年近く待ったという。栄都子さんは「周りでは3年待たされたという人もいた。田舎で子育てをするというのはこういうことなのかと思い知らされた」と話す。

「外国人と関わるのはいや」

 4人に1人が外国人という多民族国家のスイスだが、栄都子さんは「田舎の人は都会の人に比べて外国人に距離を置く人が多い」と話す。地域で開かれる親子の集まりなどで「外国人と関わるのはイヤ、と露骨に外国人を避けるスイス人のお母さんがいて、窮屈な思いをすることもあった」と振り返る。

 大阪市で生まれ育った。都会に行くことも考えたが、仕事のことなどを考えると、そう簡単には引っ越せない。バリ島で大家族に囲まれて育ったイニョマンさんも、田舎暮らしのほうが好きだという。

 今年7月、現在住んでいる湖畔の一軒家に引っ越した。聖楽ちゃんの学童保育料と佳維君の保育園代、さらに幼稚園入園前の子供を対象にした幼児教室の料金などを合わせると出費は多い。だが楽しそうに通う子供たちを見ると心が和むという。

 栄都子さんの仕事に対するスタンスも変わった。以前の職場では責任ある立場を任され、夜遅くまでがむしゃらに働いてきたが、今の日本食レストランに移って「収入が減った代わりに家族で過ごす時間が増え、落ち着いた気持ちで子供たちと向き合えるようになった」と話している。

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