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スイス2大銀行の投資銀行部門に変化なし!

非常事態に備えて防備を固めるUBS

(Ex-press)

スイス2大銀行のUBSとクレディ・スイスが、事業再編成計画を発表した。しかし、高リスクの取引を行ってきた投資銀行部門縮小の内容は、投資家を納得させられるものではなかった。

両行は、富裕層の顧客に一層力を注ぐためとして投資銀行部門縮小の意思を示唆していたが、この再編は不十分と指摘の声が挙がっている。

単なる進化

 スイスのプライベートバンク「サラシン銀行(Bank Sarasin)」は、11月17日に発表されたUBSの再編計画を「進化であって革命ではない」と投資家へ報告した。

 UBSの戦略は、富裕層や機関投資家のような大口の顧客に軸足を移すという計画だが、投資銀行部門の縮小がそれに応じた規模ではなく不十分だとサラシン銀行の報告は落胆を示している。

 「UBSが本当にまだそのような規模と多様性を備えた投資銀行部門を必要としているのか説得力に欠ける。撤退すべき業務は依然として多々残っている。UBSの戦略は、より厳しくなった市場に適応すべく奮闘している多数の同業者の姿を映し出している」 とサラシン銀行は報告した。

群集心理

 サラシン銀行は、今月初旬に発表されたクレディ・スイスの再編計画に対してもほどほどの評価しか与えておらず、「現時点では、総体的に正しい方向に向かっていると考えられるが、投資銀行部門の編成過程におけるより具体的な行動を期待する」と批評している。

 チューリヒ州立銀行のアナリスト、アンドレアス・ヴェンディティ氏も両行は投資銀行部門をさらに縮小できたはずだと確信している。しかし、クレディ・スイスの場合、銀行全体の規模が大きいため大幅な削減が難しいと分析する。「戦略に大きな変化がないことに落胆している。どの銀行にも構造的な変化はあまり見られないだろう」

 ヴェンディティ氏は、両行は世界中のライバルと同様、単に群集心理に従ってあちこちいじくりまわしているだけだと確信している。

ステータスのランキング

 昨年、多数の銀行が市場は上向くと予測を誤り、投資銀行部門の業務とスタッフを拡大した。そしてUBSとクレディ・スイスは肩を並べて首位を争った。

 両行は、UBSの最高経営責任者(CEO)セルジオ・エルモッティ氏がいうところの資産運用の原点(であるやや慎重ながらも収益の安定した投資銀行業務)に完全に回帰するのではなく、投資銀行業界のメジャーリーグに復帰できることを願いながらとりあえずそのタイミングを待っているのではないかという疑問が残る。

 投資銀行部門の行き過ぎを制限するために将来課されることになる多数の厳しい新規制、投資家のリスク回避の姿勢、低利率などの要因によって、UBSとクレディ・スイスという2大ユニバーサル・バンクの翼は今のところ矯(た)められている。

 17日にエルモッティ氏は、これまでUBSはウォールストリートの投資銀行と競争するために必死の努力を続けながら、投資銀行業界のメジャーリーグにおける「ステータスのランキング」を十二分に追いかけてきたと投資家に語った。

束縛時間

 UBSの投資銀行部門は、2016年末までにいくつかの事業の縮小、高リスク資産の半減、そして2000人の解雇を予定している。投資銀行部門の責任者カールステン・ケンジェター氏は、将来「手ごわい挑戦」が待ち受けていることを認めている。

しかし、ケンジェター氏は一般人が驚くような考えも持っている。同氏は、残存する事業分野でライバルのマーケットシェアをどれだけ獲得できるか、そして新たな市場、特にブラジルで成長を築くことができるかについて提示した。

 「銀行は、(高リスクの取引を保証するために、資本の積み増し確保を義務付ける)資本規制新法によって縛られている。これでは利益の上がらなくなるビジネスも出てくる。そのためどの銀行も同様の対応策を採っている」とアナリストのヴェンディティ氏は言う。

 「(UBSは)投資銀行部門で世界有数の銀行になるという野望をまだ持っている。しかし投資銀行業務のビジネス環境が容易になることはあり得ない。今後も依然として非常に激しい競争が続くだろう」とヴェンディティ氏は付け加えた。

 17日に行われたUBSの投資家説明会では、アナリストと投資家にかろうじて好印象を与えることができたニュースが一つあった。それは、2011年の配当として、1株あたり0.10フランを支払うという配当の長期凍結解除の決定だ。

 UBSは今後徐々に配当を増やす意向であることを発表した。その結果UBSの株価は、18日にスイス取引所の早朝取引でかすかに上昇した。しかし1株あたりの取引価格はわずか10.5フランだった。

苦悩する2大銀行

銀行業務だけでなく、証券、投資顧問、信託、保険などすべての金融商品を取り扱う総合的な金融機関である「ユニバーサルバンク」のスイス代表は、UBSとクレディ・スイス。2008年の金融危機ではこの2大銀行も金融危機で大打撃を受けた。クレディ・スイスも痛手を負ったが、ライバルのUBSより早くその兆候を察知して最悪の事態を免れた。

一方UBSは500億フラン(4兆2000億円)以上とヨーロッパ最高の損失を計上し、2008年に政府とスイス国立銀行(SNB/スイス中銀)の救済を受けた。この大惨事の後、金融危機が深刻化する中でも投資銀行業務の拡大案を提示するUBSに対し、多くの政治家、メディア、一般人からの非難が集中した。アグレッシブなアングロサクソン流の新手法が伝統的なスイスの資産運用業務を席巻してしまったと憂慮する声が多々上がった。

過去12カ月の間に、両行の財務状況はわずかながら改善したが、投資銀行部門の貧弱な業績が回復の足を引っ張り、今年は合計7000人以上の解雇が発表された。

銀行業界が次から次へと問題で揺れ動き続き、世界中で何万人もの人々が失業した。欧州およびアメリカの債務危機によって多国籍銀行は大打撃を受けた。その結果投資家はリスクを回避するようになり、金利は底を打った。さらに、スイスの銀行はスイスフラン高の打撃を受け、スイスフランのコスト高に苦しむと同時にユーロやドル建ての手数料と資産を抱え込んだ。

今年の第3四半期にUBSは約10億2000万フラン(約839億円)の純利益を計上し、トレーダーの不正取引で生じた損失を取り戻して市場を驚かせた。一方クレディ・スイスは同時期に約6億8300万フラン(約573億円)を計上した。

インフォボックス終わり


(英語からの翻訳、笠原浩美), swissinfo.ch


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