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スイス「今後も有望」 SBI北尾社長に聞くブロックチェーン業界

フィンテック先進国を目指すスイスでは、ツークで開かれるブロックチェーン・サミットなど、世界の分散型台帳技術(DLT)企業が集結するイベントも多く開催されている Keystone/patrick Huerlimann

仮想通貨銀行シグナム、スイス証券取引所を運営するSIXグループと相次ぎスイス企業との提携を発表したSBIホールディングス(HD)。日本のブロックチェーン業界をリードする同社の北尾吉孝社長は、スイスがいち早く暗号資産を従来の法規制に取り込み、政治が安定していることが提携の背景にあると話す。

このコンテンツは 2021/01/12 08:30

SBIHDは先月、傘下のSBIデジタルアセットHDとSIXの子会社スイスデジタル取引所(SDX)による合弁会社をシンガポールに立ち上げ、同地に2022年をめどにデジタル資産取引所を開設すると発表した。10月には仮想通貨やデジタル証券(セキュリティートークン)を取り扱うシグナム銀行と、東南アジア・ヨーロッパ地域のデジタル資産関連企業に投資するファンドの立ち上げで合意している。

相次ぐ提携発表を受け、スイスとの協業戦略や世界のブロックチェーンビジネスの展望を書面インタビューで聞いた。

SBIホールディングスの北尾吉孝社長 Ichiro.kikuchi

swissinfo.ch:シンガポールでのデジタル証券取引所構築にあたり、なぜ提携相手にSIXを選んだのでしょうか。

北尾吉孝氏:SIXグループは従来の金融資産取引所ビジネスにおいても世界有数の実績と経験を持ち、デジタル資産分野にもいち早く取り組み始めました。SBIも同じく、既存の金融事業の知見をデジタル資産分野に積極的に応用しようとしており、シナジー効果は高いと判断しました。

swissinfo.ch:SIXがスイスに開設予定のデジタル証券取引所SDXはスタートが当初予定の2019年半ばより大幅に遅れてきました。デジタル証券取引所設立の一番のハードルは何でしょうか?シンガポールでの設立にあたり、これをどう克服しますか?

北尾氏:取引所設立にあたっては、既存金融資産においても担当省庁や関係当局との折衝、技術的な開発、上場商品の品揃えや、流動性の確保など、克服すべきハードルがいくつもあります。デジタル資産の場合においても、規制や法務面が注目されることが多いですが、他にもいくつもの課題が待ち構えています。シンガポールでの設立に関しても、SIXグループと当社の今までの経験を持ち寄り、協力しながら作業を進めていきたいと思っています。

swissinfo.ch:SBIが大阪に設置を計画中のデジタル証券取引所構想にとって、シンガポール取引所は競合相手になってしまいませんか?

北尾氏:デジタル資産分野はまだ未成熟であり、市場の規模が今後急拡大するポテンシャルが十分あると見込んでいます。故に複数の取引所の計画も、限られたパイの取り合いではなく、新しい資産分野への投資の接点を増やし、共存しながら市場を拡大させるシナジー効果があるとみています。むしろ我々は、スイス、シンガポール、大阪と連携させることで、国境を越えた幅広い流動性をお客様にお届けできるのが強みになると思っています。

swissinfo.ch:10月には仮想通貨銀行シグナムとの提携も発表しました。今後もスイス企業との提携を考えていますか?

北尾氏:SBIは常に、各分野におけるトッププレーヤーと様々な事業で連携・提携してきました。地域戦略性やバランスなども加味しますが、暗号資産分野に関しては、スイス当局が非常に前向きな姿勢を早くから打ち出したことにより、スイス企業が我々にとって魅力のある業務や技術を持っていたのが大きな要因です。

今後もスイス市場は有望な市場ですが、まずはシグナムやSIXとの連携をより深め、事業戦略を練っていきたいと考えております。

swissinfo.ch:世界の「ブロックチェーン先進国」の中で、スイスの存在をどう見ますか?米国やシンガポール、香港、また日本と比べた長所・短所はありますか?

北尾氏:元々スイスは世界有数の金融センターとして稼働し、各種規制や法律は従前から整備されていました。仮想・暗号・デジタル分野についても早くから資産として認識し、既存の金融法を改正して適用させるなど、前向きに対応してきており、結果として、多くのフィンテック企業が活動するようになりました。日本も金融商取引法を適用するなど整備は進んでおり、今回の連携の後押しになっています。

香港やアメリカは、政治情勢などの不透明感が法律や規制の不透明感にも繋がっている側面が現時点ではあります。

swissinfo.ch:暗号資産・ブロックチェーンをめぐる法規制やSTOの自主規制作りで、スイスに学ぶことはありますか?

北尾氏:デジタル資産を奇抜なものとして扱わず、新しい金融資産クラスとしてとらえ、既存の金融規制の応用で対応している姿勢からは、学ぶべきことが多くあると考えています。

swissinfo.ch:ブロックチェーンビジネスは5年後・10年後、どのように成長しているとお考えでしょうか?例えば中央銀行デジタル通貨(CBDC)は実現・普及しているのでしょうか。

北尾氏:ブロックチェーン技術は、数十年に一回の技術的ブレークスルーと捉えており、この新しい技術がもたらす革新の流れは止まらないとみています。

中央銀行デジタル通貨など個別案件に関しては、各国の事情・状況があるでしょうから、普及速度に差が出ると思いますが、既に技術的には地域通貨などが実装されていますので、流れとしては議論が進捗していくと考えています。

swissinfo.ch:そうした成長の中で、何が「勝つ国・生き残る国」と「後れを取る国」を分けることになるのでしょうか。

北尾氏:国家としての政治体制、税務体制、規制などの安定性、金融センターに必要な実務的インフラの有無、優秀な人材プールなど、様々な要素があります。スイスも日本もすでに金融センターとして積み上げてきた実績とインフラを備えており、デジタル資産に対しても能動的に対応していますので、勝ち組側に残るであろうと考えています。

北尾吉孝氏

1951年生まれ、兵庫県出身。74年、野村証券に入社。95年、ソフトバンクグループの孫正義社長の誘いを受けて同社に転身し、99年にソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)代表取締役社長に就任。日本の財界・金融界を率いるリーダーの1人。

早くからブロックチェーン資産の可能性に着目しており、2019年ネット証券などで作る業界団体「日本STO協会他のサイトへ」を立ち上げ、代表理事に。地方銀行改革にも携わり、地銀再編を掲げる菅義偉首相とも親交がある。

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