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2021年11月28日のスイス国民投票

賛否分かれるワクチンパスポート 国民投票で問われる

9月11日、ルツェルンにて。政府のコロナ措置に対する抗議デモは、ほぼ毎週末スイス各地で行われた Keystone / Urs Flueeler

多くの欧州諸国と同様スイスでも、新型コロナウイルスのワクチン接種や陰性を示す「COVID証明書」(ワクチンパスポート)に対し、各地で活発な抗議デモが行われている。そのような中スイスでは11月28日、このワクチンパスの将来を左右する国民投票が実施される。

このコンテンツは 2021/11/01 06:00

「自由を!自由を!」。何週間も前から、新型コロナ対策に反対する人々がスイスの大都市の通りで抗議の声を上げている。スイス国民は11月28日に、その声を投票箱に反映させることができる。

なぜ「COVID-19法」が再び国民投票に?

今年3月19日改正のCOVID-19法に反対する3つの市民委員会が7月8日、7万4469筆の有効署名を集めてレファレンダムを提起。国民投票の実施が決定した。パンデミック(世界的大流行)のさなかに始まったどの政党にも属さないこの市民運動は、連邦政府の権限の拡大、特にワクチンパスの適用拡大を批判している。

わずか半年の間に同じ法律を巡って2度も国民投票が行われるのは、スイスの直接民主制の歴史の中でも初めてのことだ。最初のレファレンダム提起を受けて前回6月13日に行われた国民投票では、有権者の賛成60.2%を得て可決された。反対票が上回った州は、政府のコロナ対策への抵抗が根強いスイス中・東部の一部の州のみにとどまった。

だがCOVID-19法の支持者にとって、今回の投票キャンペーンはより困難になるだろう。前回の国民投票では、コロナ制限措置で営業停止などの影響を受けた企業や個人への財政支援の問題が議論の中心になっていたが、今回はそれが「個人の自由」という議論に押されて、影が薄くなっているからだ。

ここ数カ月で、政治的環境も明らかに険しくなった。コロナ対策を担当するアラン・ベルセ内務相を含め、警察の身辺警護を受けている政治家もいる。また、コロナ対策反対デモでは、警察が介入せざるを得なかったケースもある。

国民投票結果に影響を受ける措置は?

レファレンダムが標的にしているのは、9月13日からレストランやフィットネスセンター、映画館、大規模のスポーツ・文化イベントなどでの提示が義務化されたワクチンパスだ。財政支援策の一部も投票結果の影響を受けるが、レファレンダム提起者はこれを投票キャンペーンの争点にはしていない。

反対に、ワクチン接種や連邦政府によるその他のコロナ対策には影響が出ない。マスク着用義務や施設の営業停止などの措置は、13年の国民投票で承認された感染症法に基づいて発令されているため、今後も感染状況に応じて継続または再び導入することができる。

COVID-19法支持者の主な主張

政府は、ワクチンパスが国民の社会生活を可能な限り通常に戻すための切り札と考えている。感染していない人や感染の可能性が極めて低い人に接触を限定する効果的な方法だとしている。

経済面を見ると、ワクチンパス導入で経済活動が継続され、雇用が維持できる。また、ワクチン証明があればスイス国内だけでなく外国への渡航がしやすくなる。

また、企業が操業短縮制度を利用した場合に追加支援を継続して受けられるのは、COVID-19法があるからだ。

COVID-19法反対派の主張

反対派は、ワクチンパスはワクチン未接種者を差別し、間接的に接種の強要につながると主張する。政府が国民にワクチン接種を強いるような動きは、欧州諸国の中でもワクチン接種率の低いスイスにおいて社会を分断し、社会の平和を脅かす恐れがあるという。

また、政府による「保健衛生の権威主義」と、政府が同法を盾に政府の権限を「非民主的で危険に」拡大すると非難する。

COVID-19法が定める接触者のデジタル追跡で、市民に対する大規模なデジタル監視が行なわれることについても警告している。

賛成派と反対派は誰?

最新のCOVID-19法改正に反対する政党は、右派・国民党のみ。今夏の党会合で、181対23票の圧倒的多数で同法を否決。同党は3つの市民委員会が提起したレファレンダムを支持している。

一方、政府と議会大多数はCOVID-19法を支持。だが国民党のウエリ・マウラー財務相は9月初旬、党員を前に、政府は「コロナ対応で失敗した」と発言し、内閣の合議制を乱したとして非難された。また、同氏はコロナ対策措置に強く反対するグループ「Freiheitstrychler」のロゴ入りTシャツを着て写真に収まり、物議を醸した。

COVID-19法が否決されたら?

国民投票で否決された場合、今春に議会で承認された法修正案はスイス連邦憲法の規定に従い、承認から1年後にあたる22年3月19日で廃止される。つまり、ワクチンパスを発行して検査する法的根拠がなくなる。だがCOVID-19法反対派は、海外渡航を容易にするための自主的なワクチンパスの取得には賛成している。

大型イベントなどへの資金援助も来春で終了する。連邦政府は、失業者に対する追加手当や、操業短縮で労働時間の減った労働者の手当支給期間を24カ月に延長する権利も廃止されてしまうと警告している。

また、連邦政府は医薬品やその他の重要な医療品の開発に充てる資金調達プログラムを開始できなくなる。

(仏語からの翻訳・由比かおり)

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