北朝鮮の核実験で緊迫度が高まるなか、スイスのロイトハルト大統領は外交的な解決に向けて米中などとの交渉の仲介役を担う意欲を示した。
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横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
北朝鮮が6回目の核実験を行った3日、スイスのドリス・ロイトハルト大統領は、「スイスは閣僚会談を主催するなど、危機の解決に向け支援し、仲介者として喜んで貢献する」とコメントした。
翌4日の記者会見では、これまでの経済制裁は「(北朝鮮の)国民が苦しむのみで大きな変化に結びつかなかった」として、北朝鮮とは「今まさに対話が必要である」。「スイスは仲介役をオファーする用意はできている」と強調した。
北朝鮮情勢は「今後数週間、米国と中国がどう動くかに全てかかっている」と両国の出方をうかがいつつ、「今、過剰反応するのは危険だ」と冷静な対応を呼びかけた。しかし、中国で10月に次期国家主席を決める共産党大会を念頭に「タイミングが悪い」と述べ、制裁強化に消極的な中国に大きな方針転換は期待しづらいことをにじませた。そして、「スイスは水面下の交渉の仲介役を務めることもできる」とも語った。
永世中立国のスイスは、北朝鮮と長い外交の歴史がある。1974年以降、両国は国交を結び、過去20年間は平壌にスイス連邦外務省開発協力局の事務所を置き、人道支援を行ってきた。また、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、少年期をスイスの首都ベルンで過ごし、「パク・ウン」という偽名で教育を受けていた。
1953年以降、スイス軍は北朝鮮と韓国を隔てている非武装地帯にスイス軍を配備し、南北朝鮮間の国境の監視にあたっている。そして、核問題をめぐっては、スイスは中国、米国、北朝鮮との仲介協議を繰り返し開催してきた。だが、その一方で、スイスは先月から、国際社会に協調して北朝鮮に対する経済制裁を強化した。
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