ピラタス社のオスカー・シュヴェンク社長(2013年)
(KEYSTONE/Salvatore Di Nolfi)
スイスの航空機メーカー、ピラタスは、サウジアラビア軍の物資運搬を支援する契約をスイス外務省に伝えていなかったとの疑惑を否定した。国外での戦闘活動に繋がりうる民間契約の報告を義務付けるスイス連邦法に違反したとの疑いが持たれている。
このコンテンツが公開されたのは、
ピラタス社のオスカー・シュヴェンク社長は複数のスイス地域紙に28日に掲載されたインタビューで、同社はサウジ軍との契約について十分な情報を当局に提出し、必要な許可を全て得たと話した。
シュヴェンク氏は「ピラタス社はあらゆることを正しく行っている」と主張した。
ピラタス社は2017年、サウジ空軍が所有するPC-21艦隊を整備する契約を結んだ。同社の17年の年次報告書によると、契約期間は5年以上に延長され、首都リヤドに駐機する55機が対象だと記載されている。
スイスの私的保安サービスに関する連邦法に基づき、同社はこうした契約を外務省に報告する義務がある。スイスメディア各社は26日、外務省は最近になって「独自の調査によって初めて」契約の存在を知ったと報じた。外務省は、契約内容を精査中だと報道内容を認めた。
経緯は…
シュヴェンク氏は、同社が14年に4年間有効のサウジに対する一般輸出許可を得たと説明。この許可により、ピラタス社はサウジへの航空機販売やサポート、ソフトウェアのアップデートやメンテナンス関連の技術提供ができる。問題になっている運搬支援契約は、14年の契約の追加契約だった。
ピラタス社は15年に外務省と連邦経済省経済管轄局(SECO)に連絡し、同社の事業活動と輸出許可を報告したという。メンテナンス契約の存在も明示したが、外務省はすでにSECOが商人した契約であれば追加の承認は不要だと指摘した。シュヴェンク氏は、こうした経緯を書面にしてあると明かした。
シュヴェンク氏はこの機会に、承認手続きが二つの部署に分かれていることを批判した。「今後は全て1カ所、1役所で完結すべきだ」と指摘した。
法律では…
国外で提供される私的保安サービスに関する連邦法(15年発効)によると、国外で保安サービスを提供するスイス企業は外務省に事業内容を報告する義務がある。
スイスを拠点とする企業は、国外での戦闘活動に直接加わる目的で行われる活動に携わることが禁じられている。また、深刻な人権侵害につながる可能性のある事業も禁止されている。 サウジはイエメンの内戦に関与していることから、サウジへのサービス提供の是非が問われている。
シュヴェンク氏は、ピラタス社とサウジとの契約は許可されているものとされていないものを明確に線引きしており、問題はないとの見方を示した。またイエメンでの紛争やトルコで殺害されたジャマル・カショギ記者の事件を非難した。
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
続きを読む
おすすめの記事
スイス製の政府専用機が完成
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は、連邦大統領や連邦閣僚が移動するための政府専用機として、スイスの航空機製造ピラタス社製のPC-24を受領した。
もっと読む スイス製の政府専用機が完成
おすすめの記事
サウジ人記者不明問題 スイス政府が懸念を表明
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの外務省は、サウジアラビアの記者、ジャマル・カショギ氏が行方不明になっている問題で、スイスのサウジアラビア大使館に事態を明らかにするよう呼びかけた。
もっと読む サウジ人記者不明問題 スイス政府が懸念を表明
おすすめの記事
スイス政府、武器輸出申請のほぼ全て承認 検証文書をメディアが独自入手
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府が武器輸出規制を緩和する方針を打ち出し、国内で議論を呼んでいる。そんな中、従来の輸出規制にいかに抜け穴が多く、また政府が輸出申請のほぼ100%を承認していることが、スイス公共放送(SRF)が独自に入手した連邦監査事務所(FAO)の報告書で明らかになった。
もっと読む スイス政府、武器輸出申請のほぼ全て承認 検証文書をメディアが独自入手
おすすめの記事
スイスの武器輸出規制に抜け穴あり 監査事務所が指摘
このコンテンツが公開されたのは、
今年6月、武器輸出の規制緩和を打ち出した連邦政府に対し、スイス連邦監査事務所はこのほど、武器輸出業者が現行制度下の抜け穴を利用してすでに同じことをしていると指摘した。政府の緩和方針に今後、波風が立ちそうだ。
もっと読む スイスの武器輸出規制に抜け穴あり 監査事務所が指摘
おすすめの記事
スイスの武器輸出が増加 タイに対空防衛システム
このコンテンツが公開されたのは、
昨年のスイスの軍需製品の輸出は対64カ国、4億4660万フラン(約513億5900万円)に上り、輸出額は前年に比べ8%増加した。一方、連邦経済省経済管轄局(SECO)が27日、発表した。
もっと読む スイスの武器輸出が増加 タイに対空防衛システム
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。