The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

スイスの武器輸出規制に抜け穴あり 監査事務所が指摘

武器輸出の規制緩和に反対するデモ
スイスの首都ベルンでは6月、武器輸出の規制緩和に反対するデモが行われた © KEYSTONE / ANTHONY ANEX

今年6月、武器輸出の規制緩和を打ち出した連邦政府に対し、スイス連邦監査事務所はこのほど、武器輸出業者が現行制度下の抜け穴を利用してすでに同じことをしていると指摘した。政府の緩和方針に今後、波風が立ちそうだ。

 連邦政府は6月、戦争当事者に使用されないことを立証できれば、内戦の当事国に武器を輸出できるよう武器輸出法を緩和する方針を打ち出した。だが監査事務所は、現在の法的枠組みでも抜け穴を使って同等の行為が可能だと指摘する。

 抜け穴の一つは、紛争当事国ではない第三国に一定量の兵器部品を輸出する場合、組み立てた武器の再輸出を禁止する合意を交わす必要がないという条項だ。これは「代替的な輸出手段」と呼ばれ、監査事務所はカナダを経由してカタールに戦車が輸出されたケースや、米国を介してサウジアラビアに運ばれるピストルの部品などの事例を挙げた。

 企業はまた、兵器が民間人による使用に限定されていると主張することで、厳しい監視の目をかいくぐることができる。こうしてライフルスコープがイタリア経由でイランに出荷された例がある。

 監査事務所は16年の武器輸出状況を報告書にまとめ、これらの抜け穴に関し透明性を高めるよう勧告している。また連邦経済省経済管轄局(SECO)に対し、輸出後の検査ではなく、スイスの兵器製造業者に対する監査を厳しくするよう求めている。SECOは軍需産業を代表する企業やロビイストと距離を置くべきだとも結論付けた。

 ただSECOは、報告書が「一方的」で「恣意的」だと批判。政治的な意図や多くの誤解、重要な事実隠ぺいがあると反論した。監査事務所の報告書は法律上の権限を逸脱した可能性があるとも示唆した。

 赤十字国際委員会(ICRC)のペーター・マウラー総裁は今月初め、スイスの武器輸出法の緩和を批判。スイスの「人道的側面」に傷がつくだろうと述べた。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

作家のアドルフ・ムシュク氏

おすすめの記事

知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞

このコンテンツが公開されたのは、 ハンス・リンギエ財団は9日チューリヒ在住の作家アドルフ・ムシュグさん(91)に欧州政治文化賞と賞金5万ユーロ(約860万円)を授与した。同賞がスイス人に授与されるのは初めて。

もっと読む 知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
詐欺を警告するPC画面

おすすめの記事

スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決

このコンテンツが公開されたのは、 スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。

もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
オリーブの木

おすすめの記事

温暖化でスイスがオリーブの名産地に?

このコンテンツが公開されたのは、 スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。

もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
山肌に描かれた巨大な絵

おすすめの記事

アルプスに新しい巨大地上絵が登場

このコンテンツが公開されたのは、 世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。

もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
原発

おすすめの記事

スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。

もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
セメンヤ

おすすめの記事

欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」

このコンテンツが公開されたのは、 欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。

もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
スイス公共放送協会

おすすめの記事

スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も

このコンテンツが公開されたのは、 スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。

もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部