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スイスのメディアが報じた日本のニュース

デモ活動をする人たち
国際原子力機関(IAEA)は4日、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出に関する包括的な調査報告書を公表。韓国では反発するデモが起こった Keystone

今週(6月30〜7月6日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから3件をピックアップ。要約して紹介します。

原発処理水の放出計画を巡りIAEAが報告書を公表、「ワークロイド」を活用した米作り、日本発の「害虫」にスイス政府が注意喚起、新橋のビル爆発―といったトピックスが取り上げられました。 

この中から今回は「原発処理水の放出計画を巡りIAEAが報告書を公表」「ワークロイドを活用した米作り」「日本由来のコガネムシにスイス政府が注意喚起」をご紹介します。

IAEAが計画を後押し 原発処理水の海洋放出

国際原子力機関(IAEA)は4日、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出に関する包括的な調査報告書を公表し、日本政府の計画は「国際的な安全基準と合致する」もので「人および環境への放射線の影響は無視できる程度」との評価を下したと、スイスの複数メディアが報じました。

独語圏の日刊紙NZZは同日、この計画に対し国内外から反対や懸念の声が上がっていることに言及。「アジアの政治課題に発展している」と伝えました。

同紙は、中国の駐日大使が、処分方法の代替策を十分に調査していないと日本を批判したことに触れました。また、韓国では与野党の対立を強める材料にもなっているほか、海塩の汚染を恐れる国民の間で塩の買い占めが起きていると伝えました。さらに、オーストラリアやフィジーなど18カ国で構成する太平洋諸島フォーラム(PIF)に助言している科学者の間では、低線量の放出を長期間続けた場合の影響は十分に解明されていないという意見が支持されている点についても言及しました。

同紙は、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は日本の計画を評価はしても、各国に理解を求めていくことになるのは岸田文雄首相であると指摘。その過程においてIAEAの報告書は、日本外交の重要な手段になるとしました。 (出典:NZZ外部リンク/独語)

同トピックについては、独語圏のターゲスアンツァイガー外部リンクwatson外部リンク、仏語圏の24heures外部リンクなども、ロイターやスイス通信、AFP通信が配信した記事を転載する形で報じています。

ワークロイドで米作り

日本の米作りは将来、ロボットが担うことに―。独語圏日刊紙ターゲスアンツァイガーは30日付の記事で、人と共存しながら働くロボット「ワークロイド」を活用した宮崎県延岡市のユニークな米作り実験に関するルポを配信しました。

同紙によると、今回の実験は高齢化による農業の担い手不足を解決するため、延岡市とロボット開発企業テムザック(京都市)が実施。少ない労力で農業ができる仕組みづくりを目指し、4月に種もみまきが行われました。

記事では、あらかじめ育てた苗を水田に移植するのではなく、鉄粉コーティングで重みをつけた種もみをドローンで直接まくという特徴的なプロセスや、田んぼの雑草抑制・遠隔監視をするアイガモ型ロボ「雷鳥1号」、収穫期に登場予定の稲刈りロボ「雷鳥2号」などを紹介しています。(出典:ターゲスアンツァイガー外部リンク/独語)

マメコガネに注意

独語圏のオンラインサイトwatsonと仏語の日刊紙ル・マタンは5日、コガネムシの一種で日本発の外来種「マメコガネ」について、スイス連邦政府が注意を呼び掛けていると報じました。

watsonによると、マメコガネは北米・欧州の農業で大きな問題になっています。幼虫のときは農作物の根を、成虫はブドウ、リンゴの木など300種類以上の植物を食い荒らすと言われています。スイスでは2017年に南部ティチーノ州で初めて発見されました。他の地域でも生息が確認されています。

最大の問題は、一度その地域に定着してしまうと、駆除がほとんど不可能だということ。マメコガネを駆除する植物保護製品はスイスでは認可されていないため、昆虫寄生性の真菌(昆虫寄生菌)を使った駆除に期待が寄せられています。

休暇中は人の移動が多く特に拡大リスクが高くなるため、同サイトではマメコガネを見かけた時の対処方法や連絡先などを掲載し、注意を呼び掛けています。(出典:watson外部リンク/独語、ル・マタン外部リンク/仏語)

注目のスイスのニュース 

今週、最も注目されたスイスのニュースは、精神障がい者の自殺ほう助を巡るスイス最高裁の判決(記事/日本語)です。また、ツェルマット~イタリア間を一気に通貫する新ロープウェイ「マッターホルン・グレッシャーライドⅡ」の完成(記事/日本語)や、スイスと香港、シンガポールの間で繰り広げられる、オフショア資産管理の首位争いに関する記事も話題になりました(記事/日本語) 。

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次回の「日本のニュース in スイス」は7月14日(金)に掲載する予定です。

編集:宇田薫

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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