バレンベルク野外博物館に置く展示物の用意をする従業員ら、2017年撮影
© Keystone / Gaetan Bally
スイスの8月1日の建国記念日は、農業と観光を結びつけるアグリツーリズムの書き入れ時だ。農場でのブランチ会やロバの乗馬体験、改造した納屋での寝泊まりは年々人気を高めている。しかしスイスの大学が行った最近の調査で、こうしたアグリツーリズムは、農業部門にあまり増益をもたらしていないことが分かった。
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ヴァリス(ヴァレー)州の西スイスHES-SO応用科学芸術大学ソーシャルワーク学部が行った研究外部リンクによると、スイスの2021年の農業生産高110億フランのうち、アグリツーリズム部門の売上高は5200万フラン(約7億1千万円)~9100万フランと、わずか0.5~0.8%程度にとどまった。
ローザンヌに本拠を置く農村協会Prométerreのクロード・ベーラー会長は30日、フランス語圏スイス公共放送(RTS)のインタビューに応じ、アグリツーリズムは「非常に特殊な活動」で、時間とエネルギーを必要とすることから、調査結果は驚きに値しないと話した。「あくまで副業だ」
アグリツーリズムは大半の農家の収入の約2割にとどまる。調査によると、宿泊はケータリングや各種イベントに比べ収益性が高く、アグリツーリズム売上高の6割近くを占めた。
成長を期待
ただ、すべての農家がアグリツーリズムに関連したサービスを提供しているわけではない。スイスにある農家5万軒のうち宿泊客を受け入れている農家は約2千軒ほどで、そうした農家のほとんどは、10年以上前から宿泊サービスを提供している。
そのためスイス・アグリツーリズムス協会(Agritourism Switzerland)は、より多くの農家に参加してもらうよう働きかけている。アグリツーリズムは多様化を促し、農業のプロと住民の間に直接的な社会的接触をもたらすため、農業を取り巻く現実に対する理解を深めてもらうのに役立つという。
前出のべーラー氏は、「ホテルやレストランを補完するものを提供する」ことが重要であると言う。アグリツーリズムの発展には、十分な労働力と適切な施設も欠かせない。
英語からの翻訳:大野瑠衣子
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