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スイスのメディアが報じた日本のニュース

火災が起きた船
オランダ沖を航行中に火災が発生した自動車運搬船「フリーマントル・ハイウェイ」 Keystone

今週(7月28日〜8月3日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから3件をピックアップ。要約して紹介します。

「日銀が大規模緩和を修正」「日本政府が防衛白書を公表」「日本の自動車運搬船がオランダ沖で火災」「広島・尾道市の妊婦向けチラシに批判殺到」「国内最古の高浜原発1号機が再稼働」「なでしこジャパン、グループ1位で決勝進出」「大型の台風6号が沖縄接近」「英国のチャールズ国王の次男ヘンリー王子が訪日」―といったトピックスが取り上げられました。

この中から今回は「日銀が金融政策を修正」「日本政府が防衛白書を公表」「日本の自動車運搬船がオランダ沖で火災」「広島・尾道市の妊婦向けチラシに批判殺到」をご紹介します。

日銀が長短金利操作(YCC)を修正

日銀は先月28日、長期金利を低く抑える「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」の修正を決めました。スイスの主要メディアが大きく報じました。

ドイツ語圏の日刊紙NZZは、修正はサプライズではなかったとしたうえで、「方向転換の最初の犠牲者となったのは、日本の高名な金融政策理論家の植田和男氏が​​過去に繰り返し批判を表明していたYCCだった」と指摘。世界的な金利上昇により政策の維持が難しくなっているものの、「物価が急騰しているにもかかわらず、中央銀行は2%のインフレ目標がまだ一貫して達成されていないとの想定を変えていない」と、日銀の苦しい立場を説明しました。

金融系ウェブメディアCashは、日銀の政策変更が世界市場に与える影響などをポイントごとに解説しました。「日銀は低金利を支える世界最後の主要な拠り所で、日本の投資家は利回りを求めて海外に3兆ドル以上を保有している」と指摘。わずかな政策修正でもこれが逆流し、円高や日本の投資家に人気のあるオーストラリア、フランス、米国の国債価格に影響を与えると分析しました。(出典:NZZ外部リンク/独語、cash外部リンク/独語)

日本政府が防衛白書を公表

日本の防衛省は先月28日、2023年度版の防衛白書を公表。独語圏のスイス公共放送(SRF)は31日、「中国を『最大の戦略的挑戦』と呼ぶ日本」との見出しでこれを報じました。

SRFによると、2023年度版は中国の軍事動向に対する警戒を強める内容となっており、「これまでにない最大の戦略的挑戦」と位置付けた同国については、米国や他の「志を同じくする国々」との「協力や協調」を通じて対応すべきだとしています。

日本のフリー特派員マーティン・フリッツ氏はSRFで、防衛白書が注目するのは主に中国と北朝鮮だと指摘。中国による台湾侵攻の可能性や、ロシア・中国が北朝鮮と高める軍事協力体制なども日本の懸念事項であるとし、防衛費を増額するなど、同国の安全保障政策が転換期を迎えていると述べました。

ただ、「世論は防衛力強化を支持はしていても、そのために新しく税金を払うことは望んでいない。何よりも日本社会は高齢化が進んでいるため、大規模な軍隊を維持するだけの人材がいない」ことから、目標達成は難しいとの見方を示しました。(出典:SRF外部リンク/独語)

日本の自動車運搬船がオランダ沖で火災

オランダ沖を航行していた自動車運搬船「フリーマントル・ハイウェイ」で先月25日、火災が発生し、船員1人が死亡しました。フリーマントル・ハイウェイは今治造船のグループ会社「正栄汽船」が所有しています。

独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは2日付の記事で「保守的な島国日本の、メディアのほとんどが(事故を)報じていない」と指摘。正栄汽船所有の船による事故は今回が初めてではなく、2021年にもスエズ運河で大型コンテナ船が座礁し、航路をふさいだことにも触れました。

同紙によると、フリーマントル・ハイウェイには自動車3800台あまりが積まれていました。電気自動車(EV)の台数は当初、25台と報じられていましたが、のちに500台だったことが明らかになっています。

また火災が発生した現場近くには国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録された世界最大規模の干潟「ワッデン海」があり、油が流出した場合の環境への影響を懸念する声なども上がっています。

同紙は、船の世界では古くからリスクを分散させる仕組みが発達していると説明。今回の火災も正栄汽船にとってさほど大きな問題にはならない可能性が高いとしています。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/独語)

広島・尾道市の妊婦向けチラシに批判殺到

無料紙20min.仏語版は先月27日、広島県尾道市が妊婦向けに配布したチラシ「先輩パパからあなたへ」がSNS上で批判を浴び、配布中止となったと報じました。同紙によると、チラシには2017年に子どものいる家庭の父親に実施した「妻のこういう態度が嫌だった」というアンケートの結果が掲載されていました。

性的役割分担を強く感じさせる内容に批判が殺到し、市長は「多くの人を不快にさせている」と謝罪。20min.によると、市には26日までにメールや電話で200件を超える批判や指摘が相次いでいて、市は今後の対応を検討しています。(出典:20min.外部リンク/仏語)

注目のスイスのニュース

今週、最も注目されたスイスのニュースは「イスラエル新興企業、スイスで培養肉の販売を申請 欧州初」(記事/日本語)。他に「スイスの『グリードフレーション』に警告」(記事/日本語)や、「UBS、クレディ・スイスのロシア人口座を解約へ」(記事/日本語)も話題になりました。

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次回の「日本のニュース in スイス」は8月11日(金)に掲載する予定です。

編集:ムートゥ朋子

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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