パンデミックでも一部の富裕層にとっては祝い事だ
Keystone / Martin Ruetschi
スイスの金融誌ビランツによると、スイスに住む最も裕福な300人の資産総額は8220億フラン(約101兆240億円)と、この1年間で1150億フラン増えた。
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増加幅は同誌が長者番付300人外部リンクの集計を始めた1989年以来最高となった。新型コロナウイルス禍でロックダウン(都市封鎖)や貿易停滞が混乱するなか、株式・金融市場が全般的に好調だったことが背景にある。一方でコロナで失業や収入減に苦しむ人も増えており、社会格差の拡大を象徴する集計結果となった。
今年の長者番付の中で最も資産を大きく増やしたのは、スイス運輸企業キューネ・ナーゲル外部リンク社の大株主、クラウス・ミヒャエル・キューネ氏。同社株の上昇で個人資産が170億フランから295億フランに激増した。
資産額1位はスウェーデンの家具大手イケア創業者一族カンプラード家の555億フラン。20年来トップの座に君臨し続けている。創業者のインブヴァル・カンプラード氏は2018年に死去したが、跡を継いだ3人の息子はスイス国籍保持者だ。2位はスイス製薬企業のロシュのオーナー一族であるホフマン、オエリ、ドゥシュマレ家の345億フランだった。
一方、資産額を大きく減らしたのはインターネット起業家のパトリック・ドラヒ氏。保有していた米IT株が大幅下落し、1年間で10億フランを失った。ただ全体的には資産を減らした人より増やした人の方がはるかに多かった。
ビットコイン・スイス外部リンクのニクラス・ニコライセン創業者兼会長は、暗号通貨で財を成した「億り人」として初めてトップ300人入りした。資産は約3億2500万フランと推定されるが、匿名で保有されているはずの同氏の暗号通貨価値をどのように計算したのかは、ビランツ誌は明らかにしていない。
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アンドレ・ホフマン(58歳) ― 莫大な遺産相続と慈善活動
スイス出身。製薬会社大手ロシュを創業したホフマン家の遺産相続者の一人。1996年から同社の執行役員。遺産相続者のホフマンとオエリ一族が所有する株式などの総資産は200億フランを超える。
2004年、ホフマン家共同投資資金の広報担当に就任。父ルーカス氏と同様、環境活動に尽力する。最近では、スイスが50年までに資源消費量を3分の2削減することを目指す、「グリーン経済」イニシアチブ(国民発議)を支持して注目を浴びた。金融ビジネスと化学
クリストフ・ブロッハー(76歳) ― 実行者から人民の指導者へ
スイス・シャフハウゼン出身。右派の国民党の代表的存在。2003年、連邦内閣閣僚に選出されたが4年後に落選。ビランツ誌によれば、ブロッハー家の資産は70~80億フランとされる。
ブロッハー家は過去10年で急速に資産を増やした。ブロッハー氏はとりわけ金融ビジネスで財を成したとメディアは報じている。1983年、化学大手エムス・ケミーの従業員だった際に、創業者一族から会社を格安で買収。ドイツ語圏の日刊紙NZZは87年、ブロッハー氏が買収した後のエムス・ケミーは工場というより「投資ファンドのようだ」と報じた。
しかし、エムスグループが実際にブロッハー家の資産にどれだけ寄与したかは不明。現在は娘のマルトゥロ・ブロッハー氏に引き継がれた同グループは、高性能ポリマーと特殊化学薬品を世界中で販売している。プラスチック
ヨブスト・ワグナー (58歳) ― 1万7千人の従業員を抱える政治活動家
ドイツ・バイエルン州レーアウ生まれ。欧州連合(EU)との二国間関係を守ることを目的とした団体「スイスの利点」を設立し、保守派のブロッハー氏と対立。このためメディアから「意に反したアンチ・ブロッハー」と呼ばれた。
同氏は両親からプラスチック関連会社レーアウを引き継ぎ、8億フラン超の資産保有者となった。自動車産業の下請け企業である同社は自動車産業の下請けとして約50カ国に支社があり、約1万7千人の従業員を抱える。資源取引
イヴァン・グラゼンバーグ ― 資源取引を追求
南アフリカ出身。商品取引会社大手グレンコアの最高経営責任者(CEO)で大株主。商品取引で名をはせたマーク・リッチ氏の会社(のちのグレンコア)に入り、南アフリカで商品取引を学ぶ。同社の要職人員は2011年までに500人を数える。株式市場上場により経営者らは莫大な利益を得た。最多の資産保有者はグラゼンバーグ氏で当時93億ドル(約1兆円)保有していたとされる。
スイスのツークを拠点とする鉱山採掘会社エクストラータと合併後、スイスは同社の要衝となる。税金のほか環境被害や人権侵害などをめぐる問題で批判されることも多い。巨匠ピカソの孫
マリーナ・ピカソ ― 祖父の作品を売って大富豪に
画家ピカソの孫娘。祖父の絵を複数売却し、上位300人に仲間入りした。売却した作品には、祖母でピカソの一人目の妻オルガ・コクローヴァさんの肖像画「Portrait de femme」(1923年)も含まれる。この肖像画は約6千万フランの値が付いた。
作品を手放すことにためらいはなかったという。唯一の相続人のマリーナ氏のもとにはまだ絵画約400点と素描画7千点が残る。祖父の良い思い出はないと言い、2001年に出版した伝記ではピカソを「エゴで塗り固められた怪物」「周りの人を愛せない」と酷評。「この天才による重圧」の下で長い間苦しんできたと明かしている。不動産王
ロバート・ホイベルガー (94歳)― 貧しい幼少時代から富豪へ
チューリヒ近郊の産業都市ヴィンタートゥール出身。スイスの不動産王の一人で、上位300人の中では最高齢とみられる。住居約2千件のほかホテル、ショッピングセンター、オフィス複合施設などの不動産を所有。ビランツ誌によれば、同氏の資産は4億5千~5億フラン。F1ドライバー
セバスチャン・ベッテル (29歳)― 猛スピードで富豪に
ドイツ出身。上位300人の中ではおそらく一番の若手。資産額は1億5千~2億フラン。4度の世界チャンピオンに輝き、2016年の年収3千万フランプラスボーナスで、F1レーサーでは最高額獲得選手の一人となった。現在は不動産事業に数百万フランを投資している。スポーツデータ分析
カールステン・コエル (51歳)― テクノロジーと斬新なアイデア
ドイツ出身のエンジニア。トップスポーツ業界の製図家と言える存在だ。スイスの富豪リストに最近仲間入りした一人。米国のITバブルが崩壊する前、共同創設したブックメーカー会社Betandwinの所有株式を売却し、1億5千~2億フランに上る莫大な資産を得る。現在は、国際スポーツビジネス事業に身を置き、スポーツのデータ分析をメディアやブックメーカーに提供する会社スポーツラダーを経営。
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創業者イングバル・カンプラード氏が先月、91歳で死去したスウェーデンの家具大手イケア。イケアがスカンジナビア半島以外の初の海外拠点に選んだ国は、スイスだった。イケアの製品は、この国のインテリアやライフスタイルにどんな影響を与えたのか。
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