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COP10、名古屋会議 でスイスの立場を聞く



スイスのグラウビュンデン州エンガディン地方のユキウサギ ( Lepus timidus )。標高1800から2200メートルの低木の生える草地に生息する

スイスのグラウビュンデン州エンガディン地方のユキウサギ ( Lepus timidus )。標高1800から2200メートルの低木の生える草地に生息する

スイスには、アルプス山脈に特有なものなど約5万種の生物が生息する。しかし生物多様性条約が掲げた2010年の目標は、ほかの国と同様達成されなかった。

名古屋で開催中の「生物多様性条約第10回締約国会 ( COP10 ) 」の閣僚級会議に出席する直前、スイス交渉団首席フランツ・ペレ大使に2020年の目標計画に向けたスイスの立場を聞いた。

224種の動植物が絶滅

 スイスは、ジュラ、アルプス山脈など標高の多様さにより、生物も多様で5万種が生息する。また、森や山の緑に囲まれたこの国では、生物多様性は保護されているかのような印象を受ける。しかしここでも過去150年間に224種の動植物が絶滅。また現存の種の36% が消滅の危機にさらされている。
 
 原因は、水力発電のダム建設、高速道路や建築物の増加、農業での化学肥料使用による河川汚染、空気汚染、温暖化、消費生活の加速化など、現代社会のあらゆる側面だという。

 また、生物多様性条約が掲げた2010年の目標も
 「スイスは達成できなかった。目標の11項目のうち、5項目が一部達成され6項目が全く達成されていない。しかしすべての締約国が目標にまで至らなかった」
 とペレ氏は述べる。

2020年の新目標

 2010年の目標がすべての締約国で達成されなかった原因を、ペレ氏は
 「サイやトラなど絶滅の危機にある動物の保護という分かりやすい生物多様性保護から、生息域全体や生態系を保護しなければ本当の保護に繋がらないという発想に行き着くのに時間がかかり、ようやく数年前から理解されるようになった。それが各国政府の対策が進まなかった理由の一つだ」
 と言う。

 また、
 「『生物多様性の経済的価値』という概念もここ数年間でようやく理解されるようになった。目先の経済的価値で木を伐採するのではなく、ジャングルの生態系を守る方が長期的には人間に多くの経済的利益をもたらすという発想を、具体的な対策に変えて行くのに時間がかかった」
 と分析する。

 スイスの対策も遅れており
 「そのためにも、名古屋会議で2020年の新目標が採択されることを強く望んでいる。それがスイス国内での生物多様性保護政策を見直し、推進させる圧力になるからだ」
 と考える。

 この新目標には20の項目があるが、
 「これらは各国の政策に弾みを与えると同時に、すでに存在する4、5種類の国際条約を包括するような形で明確な方向性を与え、かつ協力関係を生み出させるようなものでなくてはならない」
 とペレ氏は言う。こうした国際条約とは、湿地の生態系を保護する「ラムサール条約 ( Ramasar Convention ) 」、絶滅の恐れのある希少生物の取引を規制する「ワシントン条約 ( CITES ) 」などで、生物多様性保護の一部分だけを構成している。

気候変動と同様の資金問題

 ところで、2010年の目標を達成できなかったスイスだが、森林、水資源、農業分野では、ほかの国の参考になるような対策が進められた。こうした成功例は2020年の新目標作成に何らかの形で貢献するものだという。

 森林に関しては、19世紀中ごろまでは伐採が続いたが、その後の法律による規制化で持続的な発展を行えるような森林化を実践。19世紀に比べ現在ほぼ5割も森林地帯が増えている。農業では、環境と生物多様性保護の基準を作り、それを尊重した場合は補償金を出した。例えば、殺虫剤や化学肥料などを沼の近くなどでは使用を禁止し、そうした行為を行わない農家を補償した。

 水資源に関しては、地域が独自にダム建設をしなくて済むようなメカニズムを作り、そのために補償を与えた。一方でダム建設をせざるを得ない場合は、生物多様性を最低限保障できるようダムの高さなどに基準を設けた。
 
 ところで、以上のような成功例に加え、今回の会議でスイスが最も推進したいのは、保護対策を具体的に進めるための資金問題だという。
 「温暖化問題でどの分野に資金援助が必要かという包括的な分析を行ったように、生物多様性問題でも分析の全体的な視野が必要だが、その具体化がまだ進められていない」

 スイスは、国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)に先立ち、ジュネーブで資金問題解決のための会合を今年9月に開催した経験を持つ。
 「気候変動を食い止める有効な方法の分析とそのための資金問題は解決されたので、生物多様性でもできないわけではない。生物多様性はすべての分野に関係する最も複雑な分野だと専門家は言うが、そうではない。気候変動もその複雑さにおいては同じだ。可能だがまだ進められていないだけだ。まず指標を作り、それに従ってどこにどれだけ資金が必要か分析していくプロセスを踏むことだ」
 と力説する。

ボリビアから青ジャガイモ

 一方、「遺伝資源の利用とその公平な利益分配のルールを定める」名古屋会議の議定書は、スイスにとっても重要な採択されるべき課題だ。
 「スイスには大手の医薬品企業があるため、例えば南米の特殊な植物を新薬として開発する場合、それを保護してきた国に対し利益を分配するのは当然だ。そのためのルール作りはスイスにとって非常に大切だ」
 とペレ氏は言う。
 
 ところで、スイスはこうした議定書とは別に、独自に2カ国間関係でボリビアから青ジャガイモの品種を譲り受け、それをスイスで生産するプロジェクトを行ってきた。毎年、この品種を保護してくれたお礼として利益をいくらかボリビアに支払い、両国とも非常に満足している。この話を会議でも提示する予定のスイスは、議定書を「品種を使う側も提供する側も恩恵に浴するという大切なメカニズムだ」と強調する。

 そして
 「こうした議定書が採択されれば、熱帯のジャングルの木々を伐採する代わりに、生態系を守り、種を保存すれば、経済的にも利益が得られるという発想を持つことができ、少しずつ生物多様性保護は変わっていく」
 とペレ氏は考えている。

生物多様性条約第10回締約国会 ( COP10 )

10月11~29日名古屋で開催され、締約国193カ国・地域が参加する。
政府、市民団体など9000人の参加が見込まれている。
主な議題は、2010年の目標の各国への評価、その反省に基づき2020年に向けた新計画の採択、また遺伝資源の利用とその公平な利益分配を定める「名古屋議定書」の採択。
スイスは1994年に「生物多様性条約」に批准した。
モリッツ・ロイエンベルガー環境相は、環境大臣としての最後の任務として、10月28、29日の閣僚級会議に出席する。

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swissinfo.ch


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