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スイス南部の国境に密入国者の洪水

, キアッソにて


2008年1月にウクライナ人の一家6人が山を越えて密入国を図り危うく凍死しかけた

2008年1月にウクライナ人の一家6人が山を越えて密入国を図り危うく凍死しかけた

(Keystone)

スイス南部ティチーノ州の国境に、そこを窓口に欧州連合に入ろうとする移民が押し寄せている。国境警察官は、密入国者の洪水と犯罪者の通行に悲鳴を挙げることも多く、とりわけ週末は忙殺される。

ティチーノ州とイタリアを隔てる緑の森の国境は何十キロメートルもあるが、スイスへの不法入国の半分以上が起きるのは、全長5~10キロメートルの小さな地域だ。

昼も夜も

 鉄道の駅、難民申請登録センター、道路上の通関数か所、高速道路A2 ( バーゼル~キアッソ間 ) への連絡道路、そして市の中心街を含む地域では、ティチーノ州 第4区の国境警察官が昼も夜もパトロールを行い、スイス南部の国境の入り口を監視している。

 「周囲の山を越えて密入国をするケースはどちらかと言えばまれです。一般的に言って、それは山越えがスイスに入国する唯一の方法だと密入国者に信じ込ませ、できるだけたくさん稼ごうとする案内人がすることです」
 とティチーノ州の国境警察官ミッシェル・コルティ氏はキアッソ地方を囲む山々の景色を指さして説明した。

密入国案内人と泥棒

 事実、駅の上の丘にある何本かの道は常時監視下にある。それらの道は、密入国案内人や、東欧出身でミラノやトリノを中心とする広い範囲に身を落ちつけた泥棒の一味がよく利用する小道だ。

 それらの狭い小道は目立たないものの明らかに利用されており、家庭菜園や建物の散歩道、小さな家々の囲いの中を突き抜けていく。サッソ ( Sasso ) 地区やブデラ ( Budella ) 地区にはそうした小道があり、密入国者にとって都合のよい通りになっている。

 それらの地域は赤外線カメラで監視されている。撮影された映像は、キアッソにある国境警察本部に設置された十数台の画面に常時送信され、スイスに入国しようと道を通る人影を簡単にチェックできるようになっている。

 21時20分、サッソ地区は奇妙な静けさに包まれていた。この地区で一番大きなアパートの中では、高齢者がテレビの前でくつろいでいる。パトロールの警官が通りかかったときに窓のカーテンを開けて挨拶や言葉を交わす。
 「こうした街の一角に住む人々が知らせてくれる不審な動きが手がかりになることも珍しくありません」
 と地元の住民から協力を得ているコルティ氏は語った。

追跡

 ちょうどその時、国境警察官の1人が、不審な動きをするグレーのメタリックのドイツナンバーの車があると無線で連絡してきた。
 「これはロマ・シンティ人が好むタイプの車です。彼らはトリノの広い郊外に拠点を置き、ティチーノ州で空き巣を働くために越境する件数が増えています」
 とコルティ氏の同僚は説明した。

 コルティ氏と同僚の警察官は車に駆け込み、サイレンを鳴らしながらあわただしく発進し、ヴァカッロ ( Vacallo ) の方角へ向かった。グレーの車は発見されたが、 乗車していたのはただの酔っ払いのカップルで、誤報だった。しかし2人の国境警察官を驚かしたのは、車の中のカップルの特徴や不審な態度が、不法入国者のものとあまりにも似通っていたことだった。

電車を利用する傾向

 「最近では、週末に電車を利用した本格的な密入国が起きています」
 と国境警察の広報担当官ダヴィド・バシィ氏は指摘する。同氏は、年末までに密入国者の数は2009年の数字を少なくとも25%は上回ると推計する。

 「密入国者はミラノ行きの電車に乗って、キアッソで降りるのです。彼らはすでに、キアッソの登録センターへ行く道も、駅の周辺もすべて知っています」
 とコルティ氏は連邦移民局 ( ODM ) の登録センターの青い建物を指さした。

 23時43分。車輪のきしむような音が電車の到着を告げた。落書きで汚れ、へこんだ電車が北イタリアのロンバルディア州の首都から1時間ごとに到着する。下車した乗客の中に国境警察官に引き止められたアフリカ人男性がいた。

 その若いアフリカ人の男性はしばらく躊躇 ( ちゅうちょ ) した後ドイツに行きたいと言ったが、最終的にはスイスに難民の申請をするつもりであることを認めた。そして駅の構内に設けられた税関のゾーンの中にある国境警察の小さな事務所に向かった。国境警察官は現在こうしたケースを一日に数件処理している。そして週末にはこれを数十回も行う。

若いアフガニスタン人

 このとき、駅の構内を見るからに固くなってうろついている4人の若いアフガニスタン人がいた。彼らはツーク州の申請センターが発行した証明書を持っていた。ツーク州のセンターは手いっぱいになって彼らをアルプスの南にあるキアッソへ送って来たのだ。

 4人のうち、18歳から20歳と思われる1人だけが片言の英語が話せた。この4人全員と難民申請を希望していたアフリカ人男性は最終的に登録センターへ連れて行かれ、連邦移民局の職員が後を引き継いだ。

 午前2時30分。夜明けはまだ来ないがパトロールの時間だ。コルティ氏と同僚は再び道へ戻る。道中コルティ氏は、昨夜はもっと動きがあったと説明する。
 「イラク人のグループが2,3到着して、対処しました」

キアッソ地区をあちこち巡回している間、2人はほかの警察官と定期的にすれ違った。そして地区の中心地で停車し、彼らと互いに現状報告をした。

 午前4時20分過ぎ。コルティ氏と同僚の警察官はルーマニアナンバーのドイツ製高級スポーツカーを追跡し、停止させた。運転していたのは22歳の売春婦だった。彼女は、ティチーノ州の南部に建ち並ぶ娼家の一軒で仕事を終えたばかりだった。

 コルティ氏は彼女に証明書を返した。夜勤はもうすぐ終わる。街の中心を通り、同僚と報告を行った後、コルティ氏のチームは休みに入る。

スイスの国境へ押し寄せる密入国者

2009年、1600人が南の国境から密入国を図った。
スイス南部の不法入国者の数は、2010年の第3四半期の終わりには1900人だった。2010年末には2000人を超えると推計される。
ティチーノ州では、300人の国境警察官がイタリアとの国境を監視している。
右派の国民党 ( SVP/UDC ) の政治家は、国境警察官の人数は不十分で、早急に200~300人の増員が必要だと主張している。

2011年までにスイスは約30人の国境警察官をギリシャに派遣する予定だ。それらの国境警察官は欧州連合 ( EU ) の管轄下で、中東やアジアからの移民が押し寄せるギリシャの国境を監視する任務に就く。

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膨れ上がる問題

難民申請者の多くはナイジェリア人で、ほぼ全員がイタリアから入国する。イタリアで長期滞在し、すでに難民申請を行っていることもある。スイスで申請を拒否された場合、通常彼らはイタリアに戻らなければならない。
すでに申請を拒否された外国人が、新たに難民申請をするためにキアッソに翌日現れることも珍しくない。これを何回も繰り返す外国人もいる。
隣国イタリアの都市周辺部からの難民や犯罪者の流入のほかにも、ティチーノ州は、大半が売春斡旋人に支配されている若いルーマニア人売春婦の大量入国にも直面している。これらは、シェンゲン協定によって人の自由な往来が始まる前は、表立って存在しなかった現象だ。
滞在を拒否された申請者の再来も問題になっている。不法滞在者の8~10%が週末にスイスに密入国する。

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( 仏語からの翻訳 笠原浩美 ), swissinfo.ch


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