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プレスレビュー スイス各紙、アベノミクスを批判

アベノミクスを世界各国で宣伝した安倍晋三首相だったが……

アベノミクスを世界各国で宣伝した安倍晋三首相だったが……

(AFP)

日本の2014年7~9月期の国内総生産(GDP)が2四半期続けてマイナス成長になったとの発表を受け、スイス各紙は一様にアベノミクスを批判した。日本銀行の追加金融緩和も含め、各紙は現政権の経済政策に疑問符をつけている。

 「ニッポンに『アベゲドン』の危機?」との見出しを付けたのは、スイス通信(SDA/ ATS)だ。これは、安倍晋三首相とアルマゲドン(世界の終わり)を合わせた造語で、英国の経済誌がツイッターでそうつぶやいていたものだ。

 株式市場からもてはやされているアベノミクスだが、17日に内閣府が発表したGDPの実質成長率は1.6%減(年率換算)。民間エコノミストらの平均予測2.1%増とは大きく異なる結果となった。

 スイス各紙はこれを受け、アベノミクスはGDPの250%以上を超える赤字を抱える日本の経済を回復させることはできないとの見方を強めている。スイス通信は、アベノミクスの3本の矢(金融緩和、財政出動、成長戦略)の3本目が放たれる前に、既にほかの2本の効果が薄れてきていると報じた。

 左派の有力紙ターゲス・アンツァイガーは皮肉にこう綴る。「『日本は戻ってくる』と安倍首相はそう遠くはない過去に語っていた。世界のトップに戻る、という意味だ。アベノミクスという名の経済政策がスタートしてから2年弱、日本は本当に戻ってきた……危機へと」

なぜ景気が落ち込んだか

 日本のGDP成長率がマイナスになった理由は何だろうか。ターゲス・アンツァイガー紙の特派員クリストフ・ナイトハルト氏は同紙のインタビューで、安倍首相が株価上昇に重点を置いた政策設計に問題があると批判する。「13年7月、彼は自分の事務所に1台のモニターを用意させた。日経平均株価を見るためだ。日経平均株価が上がれば、経済が好調に見えて自分の人気も上がると考えたからだ。だが実際、日経平均株価は日本の経済状況を図るには不十分だ。このことは国民も知っている」

 保守派の有力紙NZZも、当初は褒められたアベノミクスももはや効力を失っていると断じる。同紙は、日本の経済が失速している理由を二つ挙げる。一つは個人消費の落ち込み。もう一つは、企業投資の低迷だ。内需低迷で、企業は生産拡大よりも在庫整理を優先しており、投資に消極的だと論じる。

 個人消費も企業投資も低迷していることは、安倍政権にとっては敗北にも等しいとするのは、スイス国営放送(SRF)だ。「安倍氏はここ数カ月、消費者や企業の心理を向上させようと集中的に取り組み、楽観的な見方を広げて景気を盛り上げようと心理学も活用した」と、あるエコノミストの分析を紹介する。「しかし、今のところ、この実験は失敗に終わっていると言わざるを得ない」

金を刷り続ける日銀に批判

 スイス各紙はアベノミクスと並行して、日本銀行による追加金融緩和の是非も論じている。地方紙ザンクトガレン・タークブラットは、金融緩和のデメリットを被るのは国民だと書く。「政府と日銀は、株式市場を短期的に支援し、同時に円の価値を徐々に下げて輸出に拍車をかけようとしていた。しかし、輸出企業は円安効果の恩恵を消費者や製品開発に還元しなかった」

 ターゲス・アンツァイガー紙は、日銀は通貨を守るという本来の任務を投げだし、新しいお金に飢える日本経済のために紙幣を刷り続ける「麻薬密売人」のようだと痛烈に批判する。

 日銀の追加金融緩和は「正しい処方箋だったのか疑問だ」と論じるのはNZZだ。その理由として、過剰な円安では輸入企業の利益が大幅に減少し、燃料費も大幅に高くなった点を挙げる。また、「政治家が自分たちの宿題を片付けないことで日銀がまた金融政策に割り込んでいかねばならないかのような印象を市場に与える」ことも理由に加えている。

「総選挙は時間の無駄」

 安倍政権は消費増税を先送りし、衆議院解散を発表した。地方紙アールガウアー・ツァイトゥングは「安倍氏は選挙を行うことで、景気回復がこれ以上遅れる前に、国民からアベノミクスへの信任を得ようとしている」と指摘している。

 12月に総選挙を行うことは「時間の無駄」だと断じるのは、スイス通信とNZZだ。安倍氏が約束した経済改革はまだ始まってもおらず、「構造改革および財政の健全化を行うには時間がない」と、スイス通信は東京在住のエコノミストの話を載せている。

 NZZは次のようにまとめる。「構造改革、規制緩和、市場の自由化が行われるのを皆が待ち望んでいる。アベノミクスが良い経済政策であるならば、それを実行する時間がなくなりつつある。労働市場は制度が厳格で、農業にはあまりにも多くの補助金が費やされている。さらに法人税も高すぎる。エネルギー市場などほかの市場では競争がなさすぎる。ここで安倍氏は閣僚と共に勇気を見せなくてはならない。新しい選挙は、時間の無駄でしかない」

swissinfo.ch

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