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スイスが今、ホワイトハウスで首脳会談したのはなぜ?

スイスのウエリ・マウラー連邦大統領と米国のドナルド・トランプ大統領が16日、ホワイトハウスで会談した。なぜスイスの大統領が今回、ワシントンに出向いたのか。重要なポイントを4つ紹介する。

1980年に米国がイランとの外交を断絶して以来、テヘランで米国の利益代表を務めてきたのがスイスだ。ここ最近、トランプ大統領が(石油と金融分野で)経済制裁の強化をちらつかせてイランを交渉の場に引き戻そうとしたため、対立が激化。米国の核合意離脱のほか、シリア・イエメン・イスラエルにおけるイランの役割に厳しい要求を突きつけ、さらにペルシャ湾に米空母と爆撃機を配備したことなども火に油を注いだ。

それでもトランプ大統領は先週「議論する構えがある」と示唆。米CNNは、ホワイトハウスがその後間もなくスイスと連絡を取ったと報じた。CNNによると、米国は、イラン政府がトランプ大統領と連絡を取れる電話番号をスイス政府に伝えた。しかし、イランからの連絡はない。

トランプ大統領はツイッターで「イランはすぐにでも話したいと思っているはずだ」と投稿。同時期に、マウラー大統領は連邦内閣閣僚たちにワシントンへ飛ぶと伝えた。

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トランプ大統領は、スイスに対し、さらに積極的にイラン政府に働きかけてほしいと思っているとみられる。これまでスイスはせいぜい「(両国の意志を届ける)郵便箱」、あるいは良くて仲介役だった。その意味で、スイスが電話番号を直接伝えるとは期待されていない。どう動くか決めるのはイランだ。

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スイス大統領、トランプ大統領とホワイトハウスで会談

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのウエリ・マウラー連邦大統領は16日、トランプ米大統領とホワイトハウスで会談。両国の自由貿易協定交渉のほか、米国の対イラン、ベネズエラ関係について協議した。米トランプ大統領側から招待を受けたもので、スイスの大統領がホワイトハウスを訪問するのは初めて。

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ここでは、米国とスイスは似たような状況にある。4月以降、スイスはベネズエラ危機を機に、同国における米国の利益代表を務める。しかし現時点で、ベネズエラ政権はスイスが仲介役を務めることを正式に認めていない。このため米国はベネズエラとの外交会談ができない。ここでも、スイスは八方ふさがりで、目に見える短期的な解決策はない。

中国との緊密な貿易関係が幸いし、スイスは中国の重要な「欧州のハブ」になっている。中国経済にスイスのお墨付きを与え、ヨーロッパへの玄関口としての役割も期待される。ただ中国との貿易戦争を激化させているトランプ大統領とは相いれないだろう。

経済的な観点で見れば、今回の会談の焦点は(少なくともスイス側から見れば)米国とスイスの2国間自由貿易協定交渉の行く末だ。最初に契約締結を試みたのは2006年だったが、スイス農家の権利保護をめぐり土壇場でとん挫した。

スイスは2018年、自由貿易協定を交渉のテーブルに戻した。外交レベルでの協議、閣僚レベルでの前向きな発言などが続いた。スイス側は、マウラー大統領率いる小規模チームで、スイス経済省経済管理局(SECO)のマリー・ガブリエル・イネイヒェン・フライシュ外部リンク局長が中心となって交渉を率いる。国内農業が依然大きな障壁だとしても、自由貿易協定締結にトランプ大統領がゴーサインを出せば、スイス外交には真の飛躍的進歩と言えるだろう。

スイス側の見通しは明るいが、弱点が1つある。それは、自分のペースで動くのを好む小さな永世中立国を、トランプ大統領がどれだけ理解しているか、という点だ。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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