スイスの5基の原発の一つ、ゲスゲン原発。これはソロトゥルン州にあり、1979年から稼動している。もしイニシアチブが承認されれば2024年に稼動停止になる
Keystone
スイスの脱原発を問う11月27日の国民投票についての第1回世論調査が、先月末に発表された。それによると、57%の人が緑の党が提案するイニチアチブ「脱原発」に賛成している。
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今回、国民投票で問われるイニシアチブ(国民発議)は、新しい原発の建設禁止と現存の原発の運転期間を45年に限定することで「脱原発」を問うものだ。もし承認されれば、2022年のドイツの脱原発に続き29年にスイスも脱原発を実現することになる。
福島第一原発事故を受けてスイスは2011年、新しい原発の建設はせず原発の運転期間を50年に制限すると発表した。だが、今年9月末に連邦議会を通過した「エネルギー戦略2050」では、安全性が保障されている原発には運転期間の制限を設けないと明記。そのため、今回のイニシアチブに政府も連邦議会も反対している。
女性の63%が脱原発に賛成
スイス放送協会(SRG SSR)から委託された世論調査機関gfs.bernの発表を行った政治学者のクロード・ロンシャン氏によれば、アンケートに答えた人の57%が脱原発に賛成、36%が反対、7%がまだ決めていないと答えている。
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また賛成したのは、政治的には左派、性別では女性、言語圏ではフランス語圏の人が多かったという。実際、性別では女性の63%が脱原発に賛成したのに対し、男性は50%の賛成にとどまった。
キリスト教民主党支持者の動向が要
政党で見ると、左派政党支持者と右派政党支持者の間に意見の相違が目立つ。左派では、緑の党支持者の95%、社会民主党支持者の80%が脱原発に賛成している。
これに対し右派・国民党支持者は、56%が脱原発に反対。右派・急進民主党の支持者は微妙なバランスで、反対48% 賛成47%だった。中道右派のキリスト教民主党支持者は58%の賛成だった。
ロンシャン氏によれば、このキリスト教民主党支持者の今後の動きが、国民投票の結果を左右するという。
だが、同氏は結論として「このイニシアチブも、イニシアチブといわれるものがたどる道を進むだろう」と述べた。それは即ち、投票前の世論調査では賛成が多いが徐々に反対が盛り返す、ないしは反対が徐々に賛成に転化するというものだ。
ただ例外はいつもある。今年2月28日の国民投票にかけられた、右派・国民党が提案した「外国人犯罪者の国外追放強化イニシアチブ」は、世論調査で反対49%賛成46%だったが、結果として58.9%もの反対で否決されたからだ。それは投票が近づくにつれ、移民の第2世代の若者を中心に反対のキャンペーンがソーシャル・メディアなどで繰り広げられたからだという。
いずれにせよ、スイスのエネルギー転換において重要な国民投票になる。
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