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UNRWA事務局長がガザ戦闘に言及「燃料不足、命に直結」

unrwaの事務局長
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長 © Keystone / Salvatore Di Nolfi

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、パレスチナ自治区・ガザ地区での燃料不足は深刻で、同地区でのUNRWAによる支援を停止せざるを得ない状況にあると話す。同氏がswissinfo.chのインタビューに応じた。

スイス人のラザリーニ氏は16日、イスラエルによるガザ地区の包囲による致命的な結果を非難。UNRWAの人道支援スタッフが大きな損害を被り、パレスチナ自治区に安全な場所がないと国連加盟国に説明した。インタビューは同日、ジュネーブで行われた。

swissinfo.ch:あなたは13日、もし燃料が届かなければ、UNRWAのガザ地区での支援は48時間以内にストップすると言いました。現在の状況はどうなっていますか?

フィリップ・ラザリーニ:飲料水を製造するための燃料がなくなりました。2つの主要な飲料水・淡水化プラントが稼働を停止し、ガザ南部の人口の約70%に飲料水が行き届いていません。16日の朝、ラファ(ガザ南部)の自治体から、廃水処理ポンプ用の発電機が動いていないと連絡がありました。そのため廃水が路上に漏れ出しています。私たちは2日前、特定のサービスが停止すると警告しましたが、それが現実に起こっています。飲料水や下水の機能が利用できなくなると、伝染病の発生につながります。

私たちは今すぐ行動を起こす必要があります。今や燃料は生命に直結します。燃料があれば、水を生産し病院を機能させ、パン屋でパンが作れるのです。この状態が長引けば長引くほど、ガザ包囲網による犠牲者が増えるでしょう。

swissinfo.ch:具体的に言えば、17日には支援に必要な燃料が足りなくなる…。

ラザリーニ:17日を持ちこたえるだけの燃料はあるかもしれませんが、18日はもうラファ・ターミナル(編集部注:エジプトとガザを結ぶ国境で、援助物資が搬入される場所)で貨車の荷下ろしができなくなるでしょう。ですが、私たちの物資倉庫から避難所のある各地の学校にトラックを送ることはできなくなります。

今のところ、(イスラエルから)受け取った燃料は、エジプト側の輸送隊がラファ・ターミナルに到着してから私たちの倉庫に到着するまでの間、メンテナンスを行うことができる程度の量です。

swissinfo.ch:通信用の燃料も不足しています。それでもチームと連絡を取ることはできますか?

ラザリーニ:はい、ガザ地区の責任者たちは衛星電話を持っているので、別のネットワークにつながっています。しかし現場のスタッフと通信できなくなったため、私たちの活動は不可能ではないにせよ、非常に困難になっています。というのも「デコンフリクト」、つまり我々の活動を現地のイスラエル軍当局に通知せずに行うのは、極めて危険だからです。

swissinfo.ch10月7日以降、103人のUNRWA人道支援職員が殺害されました。国連としては前例のない数です。それでも、ガザで安全に活動することは可能なのでしょうか?

ラザリーニ:ガザに安全はありません。安全な場所などないのです。戦争から逃れてきた人々が国境を越えられず行き場所がない、というのは世界でもここだけです。これまでは国連やUNRWAの施設がありました。しかし今日、それらの施設の受け入れ能力は完全に飽和しています。

UNRWAの施設でさえ、ロケットやミサイル攻撃を受けています。60以上の施設が被害を受け、60人以上が死亡し、数百人が負傷しています。つまり、国連施設でさえ、人々が思っていたような安全な避難所ではないのです。

swissinfo.ch80万人がUNRWAの学校に避難しています。彼らのニーズをカバーできていますか?

ラザリーニ:いいえ、人道援助はガザ地区に少しずつしか入ってきていません。ほとんどの避難民は、最後の最後で家を離れることを決意し、全てを置いて、何も持たずにやって来るのです。店が開いていないので基本的な物資も手に入りません。ガザ地区南部に人が集中しており、以前の2倍の過密状態になっています。衛生状態も酷い。1つのトイレを800人で使用することを想像してみて下さい。トイレに行くのに3時間待たなければならないのです。水もありません。

swissinfo.ch:国連安全保障理事会は15日、戦闘の「人道的一時停止」を求める決議を採択しました。これまで複数の決議案が却下されてきたことを考えれば、良いニュースといえますが…。

ラザリーニ:最初から決議を採択してほしかった。ですが、今回の決議は歓迎します。人道的一時停止を繰り返すことを求めているからです。それが長期化し、休戦につながることを期待します。

また決議案は、人道支援は特定のニーズに見合ったものであるべきで、途切れることなく無条件で提供されるべきだと訴えています。この点については、人道支援団体の意見が反映されています。

問題は、それをいかに確実に実行に移すか。待望の燃料がガザに入るかどうかは、数日後に分かるでしょう。

swissinfo.ch:あなたはUNRWAのトップに就任して3年になります。中東地域での経験が豊富ですが、今回の武力紛争は間違いなく、これまでに直面した最悪の危機ではないでしょうか。

ラザリーニ:感情が高ぶっているので非常に難しい状況です。感情が高ぶっているため、誰も相手の話を聞くことができません。そうした理由があったから、私はこの地域を訪れ我々に会いに来た指導者たちに、この地域と西側諸国との間に溝が広がっていることを訴えたのです。この溝がどの程度なのかを把握することが重要です。そして、痛みに共感することに階層などないことを示すときです。イスラエルの人質の家族であろうと、家族や子供を失った一般市民のパレスチナ人であろうと、同一に表現されるべきなのです。

私の意見では、共感の速度が(イスラエルとパレスチナとの間で)異なってしまえば、人道法も、犠牲者もそれぞれ違うスピードで展開されます。そうなれば分断は地獄と化します。

編集:Virginie Mangin、仏語からの翻訳:宇田薫

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