マダニは、異なる病原体を原因とする複数の病気を併発させる可能性もある
© Keystone / Gaetan Bally
マダニが媒介する病気はライム症や脳炎だけではなく、リケッチア症やアナプラズマ症といった病気にも罹る恐れがあることがチューリヒ大学の研究で分かった。
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2023/06/29 15:12
チューリヒ大学疫学・生物統計・予防研究所外部リンク のパトリツィア・シュラーゲンハウフ教授は27日、スイスの通信社Keystone-SDAの取材で、これらの病気はマダニに刺された患者への診察では通常は検査されないと説明した。「このため診断がつかず、必要な治療を受けないことが多い」
ダニ媒介性脳炎と並びマダニの媒介する感染症として最もよく知られるライム症(ボレリア症)に罹った患者の血液を分析したところ、検体の54%にリケッチアという病原体、10%にアナプラズマ・ファゴサイトフィルム菌が含まれていることが分かった。研究結果は科学誌「New Microbes and New Infections」に掲載された。
リケッチアは発熱や頭痛を伴うリケッチア感染症を、アナプラズマ菌はインフルエンザに似た症状や発熱、頭痛、痛み、吐き気を伴うヒト顆粒球性アナプラズマ症を引き起こす可能性がある。免疫不全の患者では死に至るリスクが高まる。
シュラーゲンハウフ氏は「これほど沢山の病原体がみつかるとは予想していなかった」と語った。研究チームはマダニに刺された場合にはこれらの病気を念頭に置くよう注意喚起する。筋肉痛や頭痛、持続的な疲労など症状のある患者は特に注意を払うべきだという。
マダニは異なる病原体を原因とする複数の病気を同時に媒介することがある。脳炎はウイルス性疾患だがライム症やリケッチア症、アナプラズマ症は細菌性だ。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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2017/05/19
スイスでは今春、マダニが例年以上に発生している。外出のとき注意すべき場所や、スイスで旅行中、マダニから身を守るための対策をまとめた。
例年よりマダニが多いのは何故?
「冬の寒さが厳しかったせいで、今年の春は例年以上にマダニが発生している」とスイス・マダニ感染症連盟のノルベルト・シュッツ医師は言う。「12月と1月に地面が凍結していたため、マダニは休眠状態から目覚めて春に活動するためのエネルギーをその間に温存できた」のが原因だ。
マダニに噛まれると何が問題?
マダニは3月から11月が活動のピークだ。マダニに噛まれると、やっかいな事になりかねない。皮膚にマダニがついているのを見つけた場合、まず反射的に手で取り除こうとするのが普通だろう。だが、マダニはピンセットを使って完全に取り除かなくてはいけない事はあまり知られていない。手で無理やり引っ張るのは危険だ。もしマダニの体の一部が36~48時間以上皮膚下に残ってしまった場合、そこから病原体が体内に侵入し、ライム病に感染する恐れがあるためだ。ダニ媒介性脳炎やその他の病気にかかる危険性もある。
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