この極小のロボットはバクテリアがモデルで生体組織と適合性がある
© 2019 EPFL/ ETHZ
周囲の状況に応じて形を変える弾性のある極小ロボットの開発にスイスの科学者らが成功した。将来的には、このロボットを口から飲み込めば薬物を直接患部に送り込むことが可能になるかもしれない。
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連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のセルマン・サカール助教授外部リンクと連邦工科大学チューリヒ校(ETH)のブラッドレー・ネルソン教授外部リンクが率いるグループは、細菌からインスピレーションを得て外部リンク、ハイテクで生体適合性の高いマイクロロボットを設計することに成功した。
このロボットは必要に応じて形を変えながら細い血管や複雑な組織を通過できるという。しかも体内を移動するスピードや操作性はそのままだ。
「自然界には環境に応じ形を変化させる微生物が数多く存在する。我々はこの原理にひらめきを得てこのロボットを開発した。最大の難関は、形状を我々が求める形に変化させることと、それを最新の製造技術と結びつけることだった」。研究を進めたネルソン氏は18日、EPFLの声明外部リンクで明らかにした。
研究結果は米科学誌サイエンス・アドバンシーズ外部リンクに掲載された。患部にターゲットを絞って薬物を直接送り込む技術において、このロボットが革命を起こすかもしれないとEPFLは期待している。
日本の伝統工芸にヒント
この小さくて柔らかいマイクロロボットは、周囲の環境に適応する際、折り紙に似た折り畳み技術を駆使しながら細い管の中を泳いでいく。磁性のあるナノ粒子を含むハイドロゲルナノ複合素材で作られ、電磁場を利用して操作する。
知能を体現化したこの新しい移動技術は、医療機器を体内に埋め込む従来の方法に取って代わるものである。
「我々の開発したロボットは、自分が移動している流体の特性に順応する特別な構成と構造を持つ。流体の粘性や浸透濃度が変化すると、移動するスピードと操作性を保つために形状を変化させる。こうすることで確実に目的地に到達する」とサカール助教授は説明する。
性能を最大限に発揮するために、ロボットの変形パターンは事前に「プログラム」することができる。センサーや駆動装置は必要ない。ロボットは電磁場を使用して制御することも、流体の流れを利用して自力で管の中を移動することもできる。いずれの方法でもロボットは自動的に最も効率的な形に変形する、と声明は続けた。
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