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「地球以外にも生命は存在する」

地球外生命体を探索するには、科学者たちはまず地球で生命がどのように誕生したのかをよりよく理解する必要がある。海底火山の噴出孔付近に生息する生物は、初期の生物に近いのではないかと考えられている Imagebroker / Alamy Stock Photo

スイスのノーベル賞受賞者ディディエ・ケロー氏とスイス・ドイツ人の宇宙物理学者サッシャ・クヴァンツ氏が、生命の起源を研究するための拠点をチューリヒに立ち上げる。彼らが本当に発見したいものとは、一体何だろう?

このコンテンツは 2021/11/12 06:00

新しい研究拠点である生命起源普及センターは、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)に来年オープンする。英ケンブリッジ大学との協力も視野に入れられている。swissinfo.chはその立役者たちを取材した。

swissinfo.ch:ディディエ・ケローさん、あなたは初の太陽系外惑星の発見でノーベル物理学賞を受賞しています。太陽系外惑星や火星など、地球外に生命体がいる可能性はあるのでしょうか

ディディエ・ケロー:宇宙のどこかに生命が存在する、と私は確信しています。理由は簡単で、恒星の数も惑星の数も限りなく多いからです。逆に、地球上にしか生命はいないと考える方が不自然だと思います。

ディディエ・ケロー氏 swissinfo.ch

swissinfo.ch:科学者として、生命をどう定義しますか?

ケロー:(笑いながら)生命の起源について話すとなると、まずそれが第一歩の質問ですね。それには2つの見方があると思います。1つは、地球上の生命と同じようなものと位置づけることです。実際、地球の生命と同じような化学反応が他の惑星で起こった可能性はあるので、この考え方は妥当だと思います。つまり、地球を基準にした見方です。

そこに未知なるものが出てきます。生命を、それがどういうものか分からない状態でどう定義するのか。最も道理にかなった考え方は、生命を惑星システムの一部と見ることです。生命は惑星の歴史の中で、どこかの時点で何らかの役割を果たします。地球で生命が酸素を作り出したように。

このため、惑星システムの化学反応が何らかの形で生命の影響を受けている、と考えることもできるでしょう。課題は、それを特定することです。説明のつかない特徴を持っていることに気づくかもしれない。そしてそれを「もう1つの生命」と呼ぶことになるかもしれません。

ディディエ・ケロー(Didier Queloz)

1966年生まれのスイス人天文学者。1995年に博士課程の指導教官ミシェル・マイヨール氏とともに、太陽系外惑星を初めて発見した。そのペガスス座51番星bは、太陽に似た恒星(ペガスス座51番星)を周回する惑星だ。
専門家の間では、これは天文学における20世紀の最も重要な発見の1つとされる。この発見は新たな研究分野を切り拓いただけでなく、地球外生命体発見の可能性を大きく押し上げた。
2019年には、この2人のスイス人科学者の太陽系外惑星研究に対して、ノーベル物理学賞が授与された。
ケロー氏はジュネーブ大学とケンブリッジ大学で天文学の教授として教鞭をとった後、2021年に連邦工科大学チューリヒ校に移り、新研究拠点の立ち上げチームを率いている。

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swissinfo.ch:どのような条件があれば、生命は誕生するのでしょうか?

サッシャ・クヴァンツ:まだはっきり分かっていません。生命が今どのように地球上で活動しているかは分かっており、その起源における初期条件についても理解し始めたところです。しかし、他の条件では生命誕生はあり得ないのか?という疑問は消えません。それこそが、我々が新しい研究拠点で解明したいことの1つなのです。

サッシャ・クヴァンツ(Sascha Quanz)


1979年ドイツ生まれ、スイス国籍も持つ天文学者。独ハイデルベルクにあるマックス・プランク天文学研究所で博士号を取得後、2009年に連邦工科大学チューリヒ校に移った。2019年、同校素粒子物理学天文学研究所の太陽系外惑星居住可能性グループの准教授に任命された。
クヴァンツ氏の研究グループは、太陽系外惑星の物理的・化学的性質とその形成過程の解明を目的とした主要な地上・宇宙空間の観測所の機器開発に関わる。

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swissinfo.ch:地球の生物の起源について知識を深める必要があるということですが、研究室で生命を作り出すことは可能なのでしょうか?

ケロー:技術的には、生命の起源を「リバースエンジニアリング」することはできるかもしれません。車をバラバラにしてそれを再度組み立てる方法を学ぶのと同じように、原点に戻る試みはできる。何らかの生命を研究室で作り出せない限り生命の起源が分かったことにはならない、という点には多くの人が共感すると思います。

サッシャ・クヴァンツ氏 swissinfo.ch

swissinfo.ch:地球外にも生命がいるかどうかが、どうして人類にとって重要なのでしょうか?

クヴァンツ:文字通り人類が何世紀にもわたって問い続けてきた最も根本的な疑問だと思います。でも、なぜ今、それが重要なのでしょう?

研究者たちが集まってそのような疑問に取り組む国際的な学術集会は複数あります。複数の専門分野での進歩が組み合わさった形です。時間はかかりましたが、コンセプトのうちいくつかはかなり良いレベルに確立させました。

今こそ学際的な研究を始めるときだと思います。異なる専門分野の人の協力がなければ行き詰まってしまうからです。

swissinfo.ch:あなたとケローさんの提案により、来年6月には連邦工科大学チューリヒ校とケンブリッジ大学が研究拠点をオープンさせる予定です。学際性がその研究拠点の鍵となるのでしょうか?

クヴァンツ:この研究課題に興味のある人なら誰でも歓迎します。我々はまず、最も重要と言ってもいい分野からスタートします。化学、生物学、地球化学、天文学ですね。

しかしそれ以外にも、惑星の気候を理解している環境システム科学の研究者たちにも声をかけています。様々な人たちの参加が、考え方やアイデアの方向性に大いに助けになることもあります。誰が興味を持ってくれるかは今後次第です。仲間は多ければ多いほど良いですね。

swissinfo.ch:ということは、新しい研究拠点では異なる分野の研究者たちがコーヒーマシンの前で語り合うことになるのですね?

クヴァンツ:(笑いながら)そうですね、様々な専門分野の視点から、生命の起源とそれがどのように広がっていくかという問題にアプローチするのです。その道程は平坦ではないでしょう。その専門知識がない、異なる専門分野なら持ち合わせているデータが手元にない、などの理由で前に進めなくなってしまう。

コーヒーマシンは、十分な交流とコミュニケーションを確保するツールになってくれるでしょう。このような学際的な課題に取り組むときには、人と人との交流が非常に大事です。お互いにきちんと話し合うようにしなければいけない。自分の専門言語は使わない。全員が真に理解できるレベルまで、言葉をかみ砕く。そうして初めて新しいアイデアが生まれ、新しい研究が発展するのです。

swissinfo.ch:ケローさん、あなたは研究拠点の所長となります。すでに決まっている計画があれば、教えていただけますか?

ケロー:計画がありすぎるのがまさに今抱えている問題です。我々のクリエイティビティ、やりたいことに人員が追い付かないのです。その1つとして、火星から持ち帰った岩石を解析する部門を計画しています。

我々がやろうとしていることは、単に設備を整え、アクセスを提供することだけではありません。若い科学者たちが自分自身でこれまでとは全く異なる新しい研究を切り開き、さらにどこか別の場所で新たな研究グループを作っていく基礎を作りたいのです。

swissinfo.ch:あなたと一緒に研究したいという人たちは、どれくらいいるのでしょうか?

ケロー:多くの人が興味を持ってくれていますし、その機運をもっと盛り上げるよう努力もしています。予算の問題はありますが、これら若い人たちに対し(良質な研究環境など)何か提供できるものが必要です。居心地のよい場所から引っ張り出して参加してもらうのは容易ではないですが、参加すれば多くの発見があるはずです。一緒に研究を楽しみたいです。

swissinfo.ch:スイスの科学界にとって、この研究拠点はどのような意味を持つでしょう?

ケロー:科学的な質という意味では、スイスは世界の中でも非常に優れた地位にいます。だから、この国がトップレベルのテーマに取り組んでも不思議ではありません。これもその1つです。大学のレベル、資金、研究の質がこれほど高い国は、他を探してもそう簡単には見つかりません。

そのスイスで生命の起源の研究を行うとなると、きっと世界中の研究者を惹きつけるでしょう。博士課程学生とおそらく助教クラスの人も募集することになります。 スイスに来ようとはこれまで考えなかった人もやってくるでしょう。これはこの国にとって非常に重要なことです。これらの人達が教え、知見を構築し、それがひいては産業界にも還元されるのですから。

今でもなお、スイスは欧州連合(EU)との間で明確な関係を築くことに苦慮しています。ですが並外れた科学的目標を持つことは、産業界や他の大学、他国との関係を築く手助けになると思います。これは決して軽視してはいけません。インスピレーションは社会を幸福にし、生き生きとさせるのですから。

(英語からの翻訳・清水(稲継)理恵)

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