ゲームをしながらスイス国籍取得

「ヘルベティック」という名のソーシャルゲームが人気を呼んでいる。これはスイスを知るのに必要な情報をまとめたカードゲーム。家族や友人と遊びながらスイスについて学べるというものだ。
作成者はアルジェリア出身の青年、ハディ・バルカット氏。数年前スイス国籍を取得する際にスイスについて細かく質問され、困った経験からこのソーシャルゲームを思いついた。
「スイスらしさ」を学ぶマニュアルがない
「最初はあくまで国籍を取得するプロセスのために生まれたこのゲームも、やがてスイス人一般にも受けると感じるようになった」
とバルカット氏は言う。
ローザンヌ連邦工科大学 ( ETHL/EPFL ) に留学し、やがてスイス国籍取得を考えたバルカット氏は、そのプロセスにスイスについての口頭試問があると聞き、周囲の人たちに色々聞き始めた。ところが、多くの友人が知らないか、忘れたという返事。スイスについて学べるマニュアルもないことに驚いた。
こうして、「ヘルベティック ( Helvetiq ) 」という、スイスについての情報が詰まったソーシャルゲームが誕生した。「ヘルベティック共和国 ( Helvetic Republic ) 」とは、ナポレオン支配下の19世紀初めに作られたスイス連邦の名だ。
ゲームの質問収集には2人の大学の友人が協力してくれた。最近出版された歴史の本や、ウィキペディアさらにチューリヒやベルンの知り合いにも聞いて多くの重要な「スイスらしさ」の質問を集めた。
今年11月に発売された3500個のフランス語版はすぐに売り切れ、いま5000個を製造中。ドイツ語版は2009年に出る。さらにイタリア語、英語、そしてロマンシュ語版も製造が予定されている。
ロジャー・フェデラー選手は儲けすぎか
ゲームの第1部は、「水曜日の午後1時に突然サイレンが鳴り始めたら、それは何を意味しますか」といった312の質問からなっている。この答えは「緊急時に鳴らすサイレンの全国一斉のテスト日」だ。そのほか、スイスの政治、経済、歴史、文化、スポーツなどの質問に答えながら参加者はゲームを進めていく。第2部はスイスの直接民主制のシステムに則って、政治的階段を上っていくゲームになっている。
バルカット氏は自分の口頭試問で、「スイスの雪崩」について細かく聞かれた後、「テニスのロジャー・フェデラー選手があんなにお金を儲けていることをどう思うか」という質問を受け、とまどった経験を持つ。
「国籍取得の口頭試問という緊張した場で、何と答えるのが正解なのか本当に迷った。彼は才能があるから当然だし、テニス道具を揃えるのにもお金がかかると思うしとなんとか答えた」
とバルカット氏。しかし今でもなぜ試験官があのような質問をしたのか分からないと首をかしげる。
ヴヴエイ市特別版
2007年にスイス国籍を取得した約4500人の人たちの何人かが、「ヘルベティック」はとても役に立った、特に口頭試問には最適だったと言ってくれた。
ところで、スイスでの国籍取得は、まず市町村の住民として認められて初めて得られるものだ。また地方自治が徹底しているため、そのプロセスはまちまちで、すべての市町村が口頭試問を行うわけではない。
さらに、この地方自治体の独立性が強いというスイスの特性のお陰で、バルカット氏のマーケットは広がりを見せている。さまざまな市町村がその地域独特の質問を付け加えた「特別版」を注文する可能性が見えてきたからだ。例えばヴォー州のヴヴエ イ( Vevey ) 市はすでに「ヴヴエイ市特別版」を注文してきている。
そのほか、学校の先生たち、移民受け入れ機関、赤十字などが「ヘルベティック」に大いに興味を示しているという。
swissinfo、カロル・ベルティ 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳
1、 ヴァレー州サクソン ( Saxon ) のカジノで全財産を失った19世紀のロシアの作家は誰か?
2、 1941年に編成されたのはスイスのどの軍か?
3、 1950年にスイスで、コーヒー1杯はいくらしたか?
4、 20世紀初頭に、チューリヒで始まった芸術運動は何か?
5、 1353年にベルンで結成された同盟は何か?
答えは、
1、 ドストエフスキー
2、 海軍
3、 1フラン ( 約84円 )
4、 ダダイズム
5、 8州同盟

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