労働組合ウニアが15日発表した調査外部リンクで、スイスの介護職に就いている人の約5割が定年前は仕事を続けられないと考えていることが分かった。劣悪な労働条件やストレス、ワーク・ライフ・バランスが欠けていることが背景にある。
このコンテンツが公開されたのは、
ウニアは老人ホームなど介護施設で長期にわたり働く介護士およそ1200人にアンケートを実施。47%が「おそらく定年までこの職を続けない」、34%が「(いつまで続けるか)分からない」と答える「憂慮すべき」結果となった。慢性疲労を抱えたり燃え尽き症候群に陥ったりする人は86%にのぼる。
主な理由としてスタッフ不足などの労働環境や健康問題、仕事上の身体・精神的ストレスが挙げられた。ウニアは記者発表で「回答者は30歳代以下が多く、この職に就いたばかりだ」と強調した。
総合して、87%は本来任務に十分な時間を充てられないと感じている。ある若い介護職員はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)の番組外部リンク内で、この職業を続けたいとしながらも、事務処理作業が増えていることを明かした。
改善策は
ウニアは介護職の魅力を引き上げるために、スタッフの増員や労働条件の改善を訴える。ウニア介護部門の責任者サミュエル・ブーリ氏は「給料の引き上げ、シフト制の改善が必要だが、それには介護職や老人ホーム、介護施設など介護事業への財政支援を増やさなければならない」と話した。
スイス州健康局長会議外部リンクの副議長を務めるザンクト・ガレン州保険局のハイディ・ハンゼルマン局長はSRFの同番組で、回答者の6割以上が30歳未満だと説明した。企業はより現代に合った魅力的な労働条件を提供し、家庭と仕事を両立できるようにするべきだが、そうできている企業は多くないと話した。
スイス中央部オプヴァルデン準州エンゲルベルクにある老人ホームの院長はSRFの番組で、同州では適切な財政支援のおかげで十分な職員を確保できると述べた。一方で支援が足りずコストカットを迫られ、職員を削減するという悪循環から抜け出せない施設も知っていると話した。
おすすめの記事
ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。
もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
おすすめの記事
スイスでX離れ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。
もっと読む スイスでX離れ進む
おすすめの記事
スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究者たちが、キノコで発電する電池を開発した。農業や環境研究に使われるセンサーに電力を供給できるという。
もっと読む スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
おすすめの記事
ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
このコンテンツが公開されたのは、
米ヘルスケア大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、スイスでの人員削減を計画している。
もっと読む ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
おすすめの記事
「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
このコンテンツが公開されたのは、
スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。
もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
おすすめの記事
スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
このコンテンツが公開されたのは、
スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。
もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
おすすめの記事
ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
このコンテンツが公開されたのは、
ユングフラウ鉄道グループは、ユングフラウヨッホの2024年の来場者が105万8600人となり、2015年以来6度目の100万人の大台を超えたと発表した。
もっと読む ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
おすすめの記事
2024年のスイスの企業倒産件数、過去最高に
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは2024年の企業倒産件数が過去最高を記録した。
もっと読む 2024年のスイスの企業倒産件数、過去最高に
おすすめの記事
国民投票に向けた署名がまたも偽造
このコンテンツが公開されたのは、
医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。
もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
おすすめの記事
スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト
このコンテンツが公開されたのは、
1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。
もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト
続きを読む
おすすめの記事
人材不足 、エンジニアや医療分野で深刻に
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでエンジニアや医療分野の人材不足がより深刻になっている。接客・サービス業では余剰感が強い。
もっと読む 人材不足 、エンジニアや医療分野で深刻に
おすすめの記事
スイスの訪問看護・介護サービス利用者増加
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで昨年、訪問看護・介護サービスの利用者数は、前年より1万人増の35万人だった。一方、老人ホームや介護施設の入居者数は14万9千人で横ばい。うち15%は短期滞在だった。
もっと読む スイスの訪問看護・介護サービス利用者増加
おすすめの記事
動物とのふれあいで活気 スイスの高齢者施設
このコンテンツが公開されたのは、
健康増進や記憶力の改善、入居者同士の会話のきっかけ作り。スイスのある高齢者施設で導入されたアニマルセラピーは、さまざまな効果を上げている。
もっと読む 動物とのふれあいで活気 スイスの高齢者施設
おすすめの記事
共に生きる 認知症患者の介護施設
このコンテンツが公開されたのは、
現在スイスには約15万人の認知症患者がいる。今後20年間にその数は倍増するといわれ、この病を患う人々のケアは早急の問題だ。そんな中、エメンタールのハスレ・リューグサウに認知症の人々が一緒に暮らす介護ホームがオープン。ここ…
もっと読む 共に生きる 認知症患者の介護施設
おすすめの記事
スイスの山奥を回る歯医者さん
このコンテンツが公開されたのは、
高齢者の中には歯の治療が必要なのに、人里離れた谷の自宅や老人ホームで暮らしているために歯医者に行けない人が増えている。そこで歯科医のミハエル・ケラーさんはスイス・ウーリ州の山岳地方を回り、患者の自宅を訪問したり、診療用に改造した自家用車のバンで患者の歯を治療したりしている。
もっと読む スイスの山奥を回る歯医者さん
おすすめの記事
多くの難題に直面する若年介護者
このコンテンツが公開されたのは、
親や親類が病気になった時、子供が介護に当たることがある。スイスでこのテーマについて初めて行われた調査によると、10〜15歳の子供のほぼ8%が若年介護者であり、これは今までの想定をはるかに超える数字だ。
もっと読む 多くの難題に直面する若年介護者
おすすめの記事
46.5兆円が無償労働に 6割は女性
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは2016年、無償労働に92億時間が費やされた。有償労働の79時間を上回る長さで、金銭換算で4080億フラン(46兆5000億円)に相当する。うち61.3%は女性が担っていた。
もっと読む 46.5兆円が無償労働に 6割は女性
おすすめの記事
終末期医療 ケアは行き届いているか?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの病院や老人ホームで死を迎える高齢患者の特別な医療ニーズが十分に満たされていないことが、スイス連邦科学基金が先月公表した研究でわかった。
もっと読む 終末期医療 ケアは行き届いているか?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。