2018年4月27日、スイス中央部・ロイス谷のロートタンネンに吹き荒れる花粉
© KEYSTONE / URS FLUEELER
国立スイス気象台(メテオ・スイス)は2023年、世界で初めて全自動の花粉モニターシステム外部リンクを導入する。花粉症に悩む人はより信頼性が高い花粉情報をリアルタイムで得ることができるようになる。
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スイス気象台メテオスイスは花粉情報の分野で欧州で最も進んでおり、域内11カ国の気象台を結ぶネットワークEUMETNET外部リンクのプログラムを主導している。
2010年以来、五つのリアルタイム花粉計測システムを試験している。
うち二つは同じ仕組みで、レーザー光線で花粉をとらえ、粒子の大きさや形に関する情報を収集。別のレーザーが粒子を蛍光色に照らし、その構造を明らかにする。
一方ルツェルンにある計測システムは、空気中を舞う個々の花粉の画像も記録され、レーザー写真を作る。ともに、人工知能(AI)やアルゴリズムが粒子の大きさや形状、組成に関する情報から花粉の種類を特定できる。
スイス気象台は現在、全国15カ所で週1回花粉をとらえ、人の手で花粉濃度を測定している。この処理には時間がかかり、結果が出るのは花粉の収集から2~9日後だ。
システムが自動化すれば、花粉症患者はより信頼性の高い花粉情報に基づき、屋外活動や予防医療を効果的に計画できるようになる。医師や製薬会社、気候学者も気象台のデータを使用することができる。
新システムの導入には300万~400万フラン(約3億4500万~4億6千万円)かかる。スイスでは、花粉症による生産性の低下や病気休暇で年10億~35億フランの間接費用が発生していると推計される。
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かつて人々は、地元の言い伝えや、自然の様子をもとに天気を予測していた。だが今日スイスの気象学者は、衛星やスーパーコンピュータを駆使して気象を分析・予測している。今や天気予報は、高度にグローバル化した科学だ。
天気予報の背景や技術がどのように変化してきたのか、そして、天気を確実に予測することがなぜ困難なのか。これが、現在チューリヒのスイス国立博物館で開催中の展覧会「The Weather, Sunshine, Lightning and Cloudbursts(天気、日光、稲妻、豪雨)」のテーマだ。
スイスの2016年12月は、過去150年間で最も乾燥した12月だった。全く降水量がなかった地域もあり、ティチーノ州やグラウビュンデン州では森林火災も発生した。だが翌月の1月、スイスは突然の寒波に見舞われ、平野部でも待ちに待った積雪があった。
いまだに天気を確実に予測することは不可能だが、天気を知りたいという私たちの好奇心は尽きるところがない。毎日約100万人がスイス公共放送の天気予報を視聴し、スイスでは天気予報アプリが人気アプリのトップ10にランクインしている。
「多くの人は、毎日見ている天気予報の裏に、どれほど多くのテクノロジーや科学が隠れているのかに気付いていないと思う」と話すのは、展覧会の企画に協力したスイス気象台メテオ・スイスのペーター・ビンダー局長だ。
展覧会の一室では、衛星画像や雨雲レーダー、それから今後の気象状況を解説するための予報モデルなどが展示されている。より正確な予報を出すために気象科学者たちは、1日に1千万件以上の国内外のデータを使いながら地球規模で大気の動きを見守っている。
天気の傾向
ビンダー氏によると、このようなテクノロジーの発達のおかげで、より詳細な天気予報ができるようになったという。だがそれでも気象学者たちがすべてを予測することはできない。
ビンダー氏はスイスインフォに対し、「2週間先の天気や、今後10日間の天気を詳細にわたって知りたがる人もいるが、ほとんど不可能だ」と答える。「気象状況がどのような傾向にあるのかを予測することはできるが、詳細は予測できない」
岩山が多く、山と谷で分断されたスイスのような国では、天気を正確に予測するのはさらに困難なことだ。
「カエルの天気予報」
だが、天気予報は科学の話だけではない。日々のちょっとした話のネタであり、「夕焼けの翌日は晴れ」というように、言い伝えの重要な部分を占めてもいる。
シュヴィーツ州ムオッタタールには「天候の預言者」がいて、伝統的な方法で天気を予測し、今でも人気を集めている。
今回の展覧会のキュレーターを務めるユルグ・ビュルレットさんは、「彼ら『預言者』は、夏と冬の天候を予測する。ラジオやテレビにも出演していて、非常に面白い。みんな彼らを知っている」と話す。「彼らは山で農業をする6人の農夫のグループで、アリの行動や、木の伐採時に出るおがくずのにおいなどの、自然の現象を見て天候を予測する」
「それは長年の経験と観察から生まれたものだ。農夫として、天候に十分に留意しておかないと、収穫が厳しいものになるからだ」
ビデオ挿入:アリから天候を予測するマーティン・ホラットさん
だが、地方の天気予報者による予測は当たるのだろうか?ビンダー氏は少し考えてから、「地元の天気に関しては、彼らの予測はかなり信頼できる。だが、それは地元の地域にのみ有効で、しかも短期間の予測に限る。私たちが本当に知りたいと思っている、長期的な天候の予測は、ほぼ不可能だ」と答えた。
古くから存在する気象記録
スイスでは、ルツェルン出身の学者レンワルド・シザット(1545~1614年)やアインジーデルン修道院のヨーゼフ・ディートリヒ神父(1645~1704年)が残した文書のように、比較的古くから天気が記録されてきた。
彼らは1日に数回、目で見たものを書き留め、天気とそれが周囲の人たちや環境に与えた影響などを記録した。ディートリヒ神父は、1675年8月には数回雪が降り、日照時間が少なかったと記している。その夏は雨が多く冷夏だった。つまり農作物の生産量は少なく、人々にとっては厳しい年だったというわけだ。
後に、天気を記録する作業はより科学的なものになる。バーゼルの気象学者アルベルト・リッゲンバッハは、天気をより正確に記録する目的で世界で初めて雲の様子を写真に収めた学者の1人だった。それまでは、雲の様子をスケッチと文章で記録しなければならず、誤解が生じることもあった。リッゲンバッハは、雲の分類基準を示した「国際雲図帳(International Cloud Atlas)」初版の共同著者でもある。
ギャラリー
スイス気象台に勤めるステファン・バーダーさんのように、天気の予測ではなく、過去に天気がどのように変化してきたかを分析する気象学者にとっては、歴史的な気象観測記録の価値は計り知れない。
「私たちはこれらの観測記録をもとにして、現在は気候変動が起こっているということを証明できる。当時の人は、天気の予測が目的ではなく、自分たちが目にするものに興味を持っていたから記録をしていた。これこそが、長期的な気候の歴史を作りだす、基礎となる」(バーダーさん)
気候変動
気候変動の現象の一つが、気温の上昇だ。「30~40年前と比べると、私たちは今、その頃とはまったく違った気候条件の下で生活していると証明できる」(バーダーさん)
Ducのデータストーリー挿入
例えば、夏季の降水量はますます少なくなり、2003年や15年のような猛暑の年が増えたとバーダーさんは指摘。冬に比べて夏のほうが乾燥しがちで、スイス政府は干ばつを自然災害リストに追加することを検討中だという。
スイス気象台は、地球全体の温室効果ガスの排出量に左右されるものの、21世紀末までにスイスでは気温が1.5~5度上昇し、21世紀半ば以降は夏季の降水量が大幅に減少すると予測している。
このような気候変動の中、ハイテクの使用によるものか、アリの行動観察によるものかにかかわらず、天候の予測はこれまでになく重要になってきていると言える。スイス国立博物館(チューリヒ)の展覧会
展覧会「Weather, Sunshine, Lightning and Cloudbursts(天気、日光、稲妻、豪雨)」は2017年1月12日~5月21日までスイス国立博物館で開催。スイス気象台メテオ・スイスの協力を得て企画された。
インタラクティブな展示で、来場者はスクリーンを通してあらゆる種類の天気を体験したり、小型の気象実験室で天気の短期予測をしたり、雲のボックスで小さな嵐を起こしたりすることができる。毎週日曜日には、スイス気象台の専門家が来場し、天気に関して解説する。
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