プールは最高 でも気になる水質
スイスのプールの半分以上に、多量の尿や、汗、細菌、はたまた便まで含まれているという。
とはいえ、スイスのプールの水質はスイマーにとってまったく問題にならないものだという。特に気になる多量の尿だが、健康には害にならず、むしろ肌を潤すもの。問題なのは多すぎる塩素の方で、政府は連邦レベルでの水質基準改正法案を検討している。
連邦レベルでの水質基準改正法案
チューリヒ州では猛暑の2003年に半数のプールが、昨年は27%が基準に合致しなかった。同様にグラウビュンデン州でも昨年は43%が基準に合わなかった。特に水中の塩素の含有率が高すぎた。
ところで、スイスではプールの水質基準は各州でまったく異なる。これに頭を痛めた政府は、この程連邦レベルで水質基準改正法案を検討することにした。
「連邦レベルで水質の統一基準を設けることは、歓迎すべき決定。今までは、水質検査方法、検査頻度、検査費に至るまで各州でバラバラだった」
とアールガウ州の飲料水とプールの水質課のイレナ・ニュウーシュ氏は語る。
また、連邦レベルで水質基準をまとめるよう、長年政府に提案してきた「スイス州化学者協会」も政府の決定を歓迎し、
「全州が統一基準を持つことは素晴らしいことだ。ただ、現在いくつかの例外はあるものの、スイスのプールの水質は非常に良い。確かに尿素などは、気になるものだが、心配する問題ではない」
と同協会の「飲料水とプールの水質課」の課長クロード・ラムザイヤー氏は言う
シャワーを温めるべき
ところで、政府は水質基準改正法案を100年前に制定された食品に関する法律に組み込もうと考えている。だからといってこの法案が、プールの水を飲み水レベルに高めようとしているわけではない。むしろ、プールの管理者や所有者に圧力をかけ、プールの水質を高めようとしているのだと、ラムザイヤー氏は説明する。
ラムザイヤー氏はまた、水質問題は政府だけの責任ではなく、個々人の問題でもあると言う。
「プールに入る前にシャワーを浴びる習慣を身につけるべきだ。また、これはしばしばシャワーが冷たいため、定着しない。シャワーを温めるべきだ。さらに、親は子供たちがプールに飛び込む前にトイレに連れていくようにして欲しい」
と言う。
塩素が問題
だが、水質の一番の問題は子供たちの尿ではなく、塩素だ。
「尿素は健康にとって無害の物質。ただ、これが塩素と結び付くとクロラミンを発生し、このクロラミンは目と呼吸器系に軽度の炎症を起こす」
とニュウーシュ氏は説明する。
野外プールではクロラミンは気化してしまうので問題ないが、屋内プールが問題だ。そのため屋内プールでは、換気扇を回すことが非常に大切だという。
スイス州化学者協会のロフル・エッター氏は結論として、
「スイスのプールは水質面、衛生面において、まったく心配する必要がない状況にある。しかし、公的なプールに行くことは、他人と同じ水を共有すること。しかも衛生面をさほど気にしない他人とも共有する事実は確かにある」
と話す。
swissinfo.ch、トマス・ステファンス
( 英語からの翻訳、里信邦子)
スイスのプールの水質基準は「工業・建築協会 ( SIA ) 」によって規定される。この基準は現在改正を検討中。
スイスでは尿素レベルに関し、現在まで寛容ではなかったが、今後1リットルにつき3ミリグラムに基準を緩和しようとしている。
これは、尿素が人体に有害ではないからだ。むしろ尿素は肌を潤いのあるものに保つ効果がある。しかし、もし尿素が塩素と結び付くとクロラミンを発生し、このクロラミンは目と呼吸器系に軽度の炎症を起こす。
このため、塩素に関しても基準の改正を行い、1リットルにつき0.8ミリグラムから、0.6ミリグラムに下げようとしている。
JTI基準に準拠
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