
スイス政府、金融規制改革の最終案を発表

スイス連邦内閣は6日、クレディ・スイス危機を踏まえた金融規制改革の最終案を発表した。自己資本規制を強化し、金融監督局の権限も強化する。

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5日の閣議外部リンクで主要な改正点を確認し、改革案の一部を関係団体との意見聴取手続きに付した。改革案は2024年4月に発表した金融安定報告書と、同12月の議会調査委員会(PUK/CEP)報告書に沿った。
外国に支店を持つ「システム上重要な銀行(SIBs)」の自己資本要件を引き上げる。UBSが対象となる。外国支店の帳簿価格の100%に相当する額を、母体の自己資本から控除することが義務付けられる。現行は60%の控除にとどまっている。
これにより、海外支店の簿価が下落してもスイス本店の自己資本は目減りせず、資本強化につながると連邦内閣は説明する。自己資本比率の一律引き上げは見送った。
監督権限の強化
連邦金融市場監督機構(FINMA、日本の金融庁に相当)の監督権限を強化し、必要に応じて早期・効果的に処分を課せるようにする。正しくない行動を取る銀行に対し、FINMAが罰金を命じる。
全ての銀行は自行の責任者を指名する。不祥事が起きた場合、責任者の変動報酬は減額される可能性がある。責任の所在がはっきりした場合、個人に制裁が科される場合がある。
未払いボーナスは取り消しも
改革案には、未払いボーナスの取り消しや減額、変動報酬の返納のほか、免許取り消しや業務停止といったFINMAの処分も盛り込まれた。行内で誰が何に責任を負うか、銀行は文書で明示する必要がある。
現在スイスにあるSIBsはUBS、ポストファイナンス、ライファイゼン、チューリヒ州立銀行の4行。改革案はこれら4行に、少なくともボーナスの一部に凍結期間を設けることを義務付ける。不祥事が発覚した場合、この期間に振り込まれていないボーナスは、支給額が確定していても減額または取り消しになる。
ボーナス以外の変動報酬は、振り込み済みでも返納を求めることができる。変動報酬の最低額は全ての銀行が法定の最低額を順守する。上昇部が不始末を招いた場合、銀行は報酬をもってその責任を追及する。
ボーナスの禁止は見送られた。禁止しても、固定報酬の上昇を招くだけとの判断だ。そうなれば銀行の固定費が膨張し、危機時に経営を建て直すのがさらに難しくなる、というのが連邦内閣の見解だ。
段階的に意見聴取
ソフトウェアや繰り延べ税金資産など危機時に十分な価値を持たない資産の評価についても規制強化する。
流動性要件も変更する。流動性危機にFINMAが速やかに銀行の状況を評価できるよう、銀行は財務情報・シナリオ分析をFINMAに提出する。
この2点については6月6日~9月29日に関係団体への意見聴取が実施される。外国支店に関する資本要件については、今秋に意見聴取に付す。
その他の点については2026年前半の意見聴取を目指す。中央銀行による流動性供給の改正についても2026年前半に意見聴取を実施する。いずれも発効は早くても2027年1月となる。
独語からの翻訳:ムートゥ朋子

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