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日中、サナ活、山上裁判… スイスのメディアが報じた日本のニュース

高市早苗首相をあしらった羽子板
高市早苗首相は2025年に一躍「時の人」となり、対中関係の緊迫にもかかわらず高い支持率を誇る Keystone / SWI swissinfo.ch

スイスの主要報道機関が12月3日~9日に伝えた日本関連のニュースから、①緊迫を深める日中関係②高市首相が「推し活」の的に③安倍元首相銃撃事件裁判に見る日本司法の内幕、の3件を要約して紹介します。

日中関係に緊迫が続く中、スイスメディアの報道は概ね双方の言い分を客観的に伝える記事が多くなっています。少なくとも、日本語編集部からするとそう見えるのですが、スイスインフォ中国語編集部の目にはどう映るのでしょうか。気になる方は、「スイスのメディアが報じた中国のニュース」(中国語)もご覧ください。

緊迫を深める日中関係

台湾有事への集団自衛権の行使をめぐる高市早苗首相の発言以来、日中関係が緊迫しています。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)は改めて背景を読み解くとともに、「事態のエスカレートは、高市氏の支持率を高めると同時に、より深刻な緊張関係を浮き彫りにしている」と伝えています。

記事はまず、高市氏の発言は「内部批判を呼んでいる」として、これまでの歴代政権は台湾問題に「最大限の慎重さ」を持って取り組んできたとする石破茂前首相の言葉を紹介しました。一方で、高市発言は「特に日本の伝統的な平和主義に疑問を抱くようになった若い有権者から大きな共感を得ている」とし、高市氏が発言を撤回する理由は何もない、と伝えています。

中国が国連や米欧諸国に日本批判をはたらきかけていることも報じたうえで、記事はこれらを「日中両国間のより広範な対立の一側面に過ぎない」と続けます。日本が与那国島に中距離地対空ミサイルの配備を計画していることや、尖閣諸島周辺では「追跡や嫌がらせ、日中の『パトロール』がほぼ絶え間なく続いている」ことを挙げ、関係修復の難しさを浮き彫りにしています。

記事は最後に、防衛力の強化方針や靖国参拝を例に「高市氏の人物像そのものが北京の不信感をあおっている」と結びました。(出典:RTS外部リンク/フランス語)

高市首相が「推し活」の的に

ドイツ語圏の大手紙NZZは日曜版で、高市氏の人気が「推し活」の域に達していることを報じました。高市氏愛用のハンドバッグやボールペンが売り切れとなり、SNS上では「#sanakatsu」「#sanaesmile」といったハッシュタグが。記事は「好きな人と同じ物を持ちたい」心理の表れだと説明しています。

推し活そのものが活況を呈すなか、高市氏もその対象になった理由を「60代半ばの女性がポップ・アイコンになったのは、自民党の老人たちの腐敗した縁故政治とは一見かけ離れた、自力で政治を成し遂げた彼女を人々が賞賛しているからだろう」と記事は分析しています。また首相に選出されたことで「高市氏のイメージは一夜にして変わった」と指摘し、「妥協を許さないやり手として知られていた真面目な政治家は、学習が早く、突然ソフトな一面を見せるようになった」と書きました。

台湾をめぐる対中関係の緊迫も、「ファンの熱狂を冷まさないどころか、むしろ高めている」。記事は、ある30代がSNSに投稿した「ついに誰かが中国に立ち向かおうとしている!」という言葉が多くの若者の共感を得ていると伝えています。高市氏の対中姿勢が軍事衝突をもたらすとの懸念もあるものの、「そのような声はまだ少数派だ」とみています。

最後に記事はこう問いかけます。「高市早苗は悲願の日本の『救世主』となるのだろうか。それとも、彼女のファン・コミュニティがある日バラ色のメガネを外したとき、魔法は消えてしまうのだろうか」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

安倍元首相銃撃事件裁判に見る日本司法の内幕

2022年7月に安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也被告の裁判が奈良地裁で続いています。RTSはポッドキャストで、この裁判を「日本の司法の内幕に迫る」ものとして報道しました。

日本在住ジャーナリストの西村カリン氏は、裁判が3人の裁判官と6人の裁判員によって審理されていることに注目しています。暗殺事件と、安倍氏と旧統一教会との関係に関連があると認められるのか。母親が信者だったせいで被告の人生が滅茶苦茶になってしまったことは考慮されるのか。教団に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏はRTSに「裁判員は皆、事前にメディアから情報を得ていたと思われるが、それを忘れて、法廷で提示された証拠に基づいて判断を下すべきだ」と強調しました。

検察側は今月18日に論告求刑する予定です。死刑が求刑されるかどうかについて、西村氏は「多くの日本人はこの可能性に懐疑的だ」との見方を示しました。一般的に、死刑が求刑されるのは複数人を殺した場合だけで、被害者の地位によって差がつくわけではないからです。西村氏は「日本国民は、被告に同情する人々と、政治的に安倍氏・自民党に近く被告をテロリストとみなす人々とに分断している」と結びました。(出典:RTS外部リンク/フランス語)

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