
日米関税合意、総裁選、スイス選手が世界陸上で金…スイスのメディアが報じた日本のニュース

スイスの主要報道機関が9月17日~23日に伝えた日本関連のニュースから、①関税めぐる日米合意②総裁選立候補の高市早苗氏③スイス選手が世界陸上で金―の3件を要約して紹介します。
東京・国立競技場で開かれた世界陸上。スイス選手の歴史的な快挙に、スイス国内は多いに盛り上がりました。また総裁選に高市早苗氏が立候補し、スイスメディアは再び「日本初の女性首相誕生なるか」と注目しています。
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関税措置めぐる日米合意、スイスにとって「悪い手本」
独語圏の有力紙NZZは先週に引き続き、日米関税合意に着目。非常に不利な条件を受け入れた日本のケースはスイスにとって「悪い手本」だと論じるドミニク・ウルスプルング氏(チューリヒ応用科学大学講師、スイス・日本商工会議所理事)とサンドロ・フックス氏(同大経営法学部教授)の共同寄稿を掲載しました。
米国との交渉で、日本は関税引き下げの代わりに総額5500億ドル(約80兆円)の対米投資を約束。寄稿は、投資の最終的な行先を選ぶ権限はドナルド・トランプ大統領にあり、日本は提案する立場に過ぎない点を指摘します。「米政権にとってアジアで最も重要な同盟国である日本は、年間対米輸出額の約4倍にあたる金額を米国に投じることを事実上約束するという、非常に高い代償を支払うことになった」と総括しました。
また、国会の予算承認を取り付けるにも、衆参両院で過半数割れしている自公連立与党にとって不安要素は残ります。次の自民党新総裁が誰になるかで、対米交渉戦略に影響を及ぼす可能性も指摘されています。
筆者はスイスへの教訓として、「選択肢を多く持つことが米国からの圧力を回避する力になる」と強調しています。「過去数十年にわたり、連邦経済省経済管轄局(SECO)が推進してきた自由貿易政策により、スイスは強靭性を高めてきた。だからこそ、米国に譲歩して自国の『自尊心』を売り渡すような合意には慎重であるべきだ」と結んでいます。
(出典:NZZ外部リンク/独語)
「北欧式」政府目指す高市早苗氏
22日に告示された自民党総裁選。フランス語圏の日刊紙「24 heures」は、当選すれば日本史上初の女性首相となる高市早苗氏(64)を取り上げました。高市氏が政権内の女性比率を「北欧並み」に引き上げる意向を示したことに注目しています。
記事では、高市氏は超保守派として知られる一方、政権・党執行部における女性の積極的登用を公約に掲げた点に言及。日本の現状については、「世界経済フォーラム(WEF)の2025年度版ジェンダー平等報告書で、146カ国中118位にとどまっている」と指摘しました。
また移民政策について、高市氏は「高齢化が進む日本には外国人労働者が必要だが、『性急な移民受け入れは日本社会に敵対的な雰囲気を作り出す』と述べた」とし、慎重な姿勢を示したことにも触れました。
(出典:24 heures外部リンク/仏語)
世界陸上で金、カンブンジ姉妹が分かち合った喜び
世界陸上東京大会女子100メートルハードルで、スイスのディタジ・カンブンジ選手が優勝しました。スイス新記録、自身初の世界タイトル獲得という活躍に、多くのスイス国内メディアが賛辞を送りました。
ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーによると、陸上短距離選手で姉のムジンガ・カンブンジ選手は、スイスの首都ベルンの祖母宅でその歴史的瞬間をテレビで見守り、喜びをかみしめました。
世界室内選手権や欧州選手権で優勝経験を持つムジンガ選手は「妹は非常に調子がよく、決勝でも力を発揮できると信じていた。決勝は強者ぞろいで誰が勝ってもおかしくなかった。それだけに妹を誇らしく思う」とコメント。
第一子を妊娠中のため、現地入りがかなわなかったムジンガ選手。レース後、姉妹4人で電話をつなぎ歓喜を分かち合いました。「妹が世界女王になれたことをとても嬉しく思う。スイス陸上の若い世代に『私たちも世界のトップに立てる』ことを示してくれた」と結んでいます。
(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク、SRF外部リンク/独語)
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次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は10月1日(水)に掲載予定です。
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校閲:上原亜紀子

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