欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
裁判所は、セメンヤさんの公正な裁判を受ける権利がスイスによって侵害されたと判断した。これを受け、セメンヤさんの訴えがスイスの裁判所かスポーツ仲裁裁判所(CAS)で再審理される可能性がある。
欧州人権裁判所小法廷は2023年、いくつかの点についてセメンヤさんの訴えを支持した。特に、スイスの裁判所が支持した世界陸上(WA)の規則が、選手のプライバシー権を侵害していると認定した。スイスはこの判決を不服としてECHR大法廷に控訴していた。
問題となった規則は、過剰な男性ホルモン(高アンドロゲン)を持つ女性がWAが認める競技会に参加するためには、女性ホルモンを服用することを義務付ける、という内容。セメンヤさんは薬の服用義務を拒否したため2018年以降、陸上女子800mに出場できていない。
ローザンヌにあるスポーツ仲裁裁判所(CAS)は2019年、この規則に対するセメンヤさんの異議申し立てを退け、スイス連邦裁判所も2020年にその判断を支持。両裁判所は「男性に近いテストステロン値は女性アスリートに対して克服不可能な優位性を与える」と結論づけた。
だが、欧州人権裁はスイス連邦裁判所が「人権に関わる問題に見合った厳格な審査を欠いた」とし、セメンヤさんが「欧州人権条約で保障されている保護を受けられなかった」と判断した。
英語からのDeepl翻訳:宇田薫
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