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自民党大勝の勝因、注目政策、金融市場は? スイスのメディアが報じた日本のニュース

当選者の名前に花をつける自民党の高市早苗総裁
2月8日の衆議院総選挙では高市早苗総裁率いる自民党が大勝した Kim Kyung-Hoon/Pool Photo via AP

スイスの主要報道機関が2月4日~10日に伝えた日本関連のニュースから、8日に実施された衆議院選挙関連記事を要約して紹介します。

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人々は強いリーダーを必要としている――高市早苗氏率いる自民党が衆院選で大勝した理由としてそんな分析を聞くにつけ、スイスのカリン・ケラー・ズッター前大統領のことを思い出しました。ダボス会議でドナルド・トランプ大統領に公衆の面前で大恥をかかされながらも、その後の首脳会談の場に姿を現したケラー・ズッター氏。クレディ・スイス危機や関税交渉の失敗で批判されながらも負けない姿は、まさに「鉄の女」といえそうです。

勝因は?

ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーで南アジアを担当するバンコク特派員のダフィッド・ファイファー記者は「高市氏が勝利したのは、何よりも若者のおかげだ」と分析しました。選挙前の世論調査では30歳未満の9割超が高市氏を支持していると紹介。「特に率直な物言いと勤勉さが評価されている」と伝えました。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)もこの点に注目し、選挙前日に高市氏を支持する若者たちにインタビューしています。

ターゲス・アンツァイガーのファイファー記者は別のコラムで「高市氏の『ジャパン・ファースト』政策を好きになる必要はないが、少なくともヨーロッパの一部の国々は、この政策を研究すべきだ」とコメントしました。

高市氏が勝利した理由は、同氏が国民の不安や希望に耳を傾けることを、「政治的・強硬な発言を一切使わずに」公約したからだと分析します。それは例えば来日したドナルド・トランプ米大統領を厚遇することでトヨタが米国での生産を続けられるようにしたり、中国の圧力にも負けず台湾有事発言を撤回しなかったりという行動です。「彼女は、胸を張って自慢する役割を男たちに任せて、より快適に政権運営を続け、実績を上げることができる」(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク同コラム外部リンクSRF外部リンク/ドイツ語)

何を実現?

SRFは選挙結果を受け、自民党が衆院議席の3分の2を獲得し参院で否決された法案も成立させることができるようになったと説明。そのうえで「高市氏はこの権力をどう使うのだろうか?」という疑問を投げかけました。そして国債を発行しての経済政策強化には、金融市場の懸念や、党内派閥の結束がハードルになると指摘しています。

そして「日本では多くの人々が変化への希望を抱いていることがはっきりと感じられる。高市早苗氏にはそれを実現することが期待されており、そのための過半数を獲得した」と位置付けました。

ドイツ語圏大手紙NZZは自民党が小選挙区では圧勝したものの比例では38%の得票にとどまったことを挙げ、高市氏が目指すスパイ防止法や憲法改正が成功する保証はないと指摘。左派・中道が惨敗する傍らで参政党や8.5%、チームみらいが結党からわずか9カ月で6%強を得たことは、「高市氏の新星も燃え尽きる可能性があることを示している」と読み解きました。(出典:SRF外部リンクNZZ外部リンクフィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク

金融市場に注目

NZZやフランス語圏のル・タンは金融市場の動きに着目。選挙明けの9日に株価が上昇する一方、円相場は下落したことを報じています。NZZは「高市総裁の歳出拡大策を抑制できるかどうかは、債券投資家と為替投資家にかかっている」と指摘しました。

ル・タンは選挙後に株価が上がったものの「日本の公的債務の状況は多くの疑問を投げかける」と指摘。食料品の消費税を2年間停止するという高市氏の公約も、財源のめどがついていないと伝え、「今回の選挙は新たな市場変動を誘発しなかったものの、高市氏の政策は今後数週間、数カ月にわたって厳しく精査されることになるだろう」と警告しました。

ドイツ語圏の金融紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは与党大勝により、投資家が政治的不確実性を案じる必要がなくなる「確実性プレミアム」が生まれると指摘。特に企業収益やコーポレートガバナンス(企業統治)の改善でリスク投資がしやすくなることも、株価上昇を牽引するとみています。

ただし財政への懸念から長期金利の上昇が続けば、株価市場にも重荷に。幅広い株価上昇ではなく、防衛やAI・デジタルインフラ、半導体、戦略的サプライチェーンなど高市氏の重視するセクターが選択的に買われると予想しています。

(出典:NZZ外部リンクフィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/ドイツ語、ル・タン/フランス語)

在日外国人をめぐる2つのビジョン

NZZは投開票に先立ち、選挙の争点の一つである外国人政策について大型ルポを掲載。人口減少に直面する日本が外国人労働者を必要としている一方で、外国人に対する不満が高まっているという複雑な状況を浮き彫りにしています。

NZZは東京都議会議員のさとうさおり氏に取材し、昨年の選挙戦でオーバーツーリズムや外国人投資家による価格高騰、さらには移民家族への支援金に対する懸念を表明してきたことを紹介しています。さとう氏は、日本の伝統や文化が失われつつあると感じ、「自分の街なのに自分が異邦人のように感じる」と語りました。

記事は続けて、外国人人口の増加に伴い、騒音、ごみ問題、ナンパなど、地域住民との間で摩擦が生じていることを指摘しています。特に埼玉県川口市では、クルド人に対する差別的な感情が高まり、ヘイトスピーチや嫌がらせが発生。そんななか、市には「多文化共生係」が置かれ、市民から寄せられた苦情に対し積極的な情報発信を進めていると紹介しています。ごみの出し方など外国人の家庭訪問で指導することもありますが、担当者は「いつも温かく歓迎されるわけではない」と話します。そこで市は「メンタープログラム」としてトルコ人や韓国人、中国人のボランティアを募り、複雑な日本のルールや規範を教えてもらっているそうです。

NZZは、日本の外国人政策が、経済界からの外国人労働者受け入れの必要性と、右派ポピュリスト政党の台頭による排外主義的な動きとの間で揺れ動いていると分析しています。川口市のように外国人との共生を模索する動きがある一方で、外国人に対する敵意のある雰囲気が存在することも浮き彫りにされています。

記事の結びでは、NZZは、日本には「より開かれた国」を目指すビジョンと、「民族的に均質な社会」を理想とするビジョンの二つが存在すると結論付けています。さとう氏のような政治家は、移民の数を減らし、自動化を進めることで、日本の労働力不足を解決できると考えていると指摘しています。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

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次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は2月18日(水)に掲載予定です。

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校閲:宇田薫

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