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東部スイスの観光客誘致大キャンペーン「ハイジの旅」:人気のキーワードは「自由」

ハイジの旅 MyHeidi

「ハイジ」の原作者ヨハンナ・スピリ没後100年を記念して、スイス東部のハイジゆかりの各地が今年の夏、ハイジ体験共同キャンペーンを展開中だ。ヤギを連れたペーターと一緒にアルプスの山を散歩し、ヤギの乳で作った「ハイジのパン」を食べ、おb「さんの山小屋と同t桙?轤フベッドで寝る ー が、「ハイジ・エクスプレス」の行き先はクララがいるフランクフルトではなくアルプスの南側、もしもハイジがお金持ちだったら行ったであろう夏の太陽が輝くリゾートだ。

「19世紀の新秩序の中で、孤児は自由の象徴だった」

1880年に出版された「ハイジ」は、今日まで世界各地での発行部数は5、000万部以上におよぶ永遠のベストセラーだ。ハイジ人気ランキング世界1は日本で、地元スイス以上にファンが多い。昨年「ハイジ・ハウス」のあるマイエンフェルトを訪れた観光客は約60、000人だが、その約半分は日本人だった。ヨハンナ・スピリ没後100年にあたる今年は、例年以上にハイジ・ファンがハイジ詣出にやって来るはずだと、スイス東部各地の観光協会は期待を寄せる。

スピリが小説の舞台としたマイエンフェルト、バート・ラガツ周辺にはハイジを辿る道が、また、多くのハイジ映画が撮影された(現在スイスで上映中の新作を含む)エンガディン地方でもロケ地めぐりハイキング・ルートが設定される。イベントをコーディネートするグラウビュンデン州観光協会のギエリ・スペシャさんは、「マーケティング的に捉えると、ハイジはブランドだ。しかも、世界的なブランドだ。」という。そして、世界の観光客を誘致するため、スイス東部のハイジ地図などを掲載するスペシャル・サイトを立ち上げ、様々なイベントを企画している。これまで、ハイジ観光といえば、すでに「ハイジランド」として知られるマイエンフェルトとスパ・リゾートのバート・ラガツに限られていた。が、今年はおよそ12の町村が記念イベント計画に参加、企画者も驚くほどの大キャンペーンになり、ハイジ・ブランド効果への期待の大きさを証明してみせた。

いったいハイジは、なぜこんなに世界に人々に愛されるのだろうか。チューリッヒ大学民俗学研究者のウォルター・ライムグルバー氏は次のように解説する。「ハイジはいつの時代、どの社会でも必要とされる重要な資質を持っている。人々をお互いに結びつかせ、人の心を開く。おb「さんにしたようにね。また、貧富、都会と田舎、少年と少女、成人男女を団結させる。人々は、この小説に描かれたような世界で暮らしたいと夢見るのだ。」。ハイジの旅エキセビションの責任者でもあるライムグルバーさんは、19世紀に孤児の目を通して社会を描いた作家はスピリだけではないという。マーク・トウェインのハックルベリー、チャールズ・ディッケンズのオリバー・ツイスト、アストリッド・リングレンの長靴下のピッピなど、この時代は孤児が主人公の作品が多く世に出た。「19世紀、工業化が進み、新しい秩序、学校教育制度が始まる中、人々は新しいライフスタイルに窮屈な思いをしていた。が、孤児はある意味で自由だ。孤児とは両親がいないだけではなく、楓セ社会のプレッシャーからも解き放たれている。孤児は自然を代表し、自分自身を自由に表現し、自分のしたいことをする。彼等は、自分の道を自分で選ぶのだ。」とライムグルバーさんは分析する。

今年スイス東部を訪れた人々は、ハイジの時代からほとんど変化のない世界を発見することだろう(少なくとも表面的には)。そして、ドラマや映画製作の度にハイジのキャラクターが変えられても、オリジナル・キャラクターは永遠だとグラウビュンデン州観光協会のスペシャさんは言う。「ハイジは色々な人に様々に脚色されたが、ストーリーのハートは誰にも変えられない。このストーリーの強さが、ハイジを永遠にしているのだと私は思う。」。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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