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北朝鮮の食糧援助拒否で、スイスの支援も削減

国立幼稚園でお昼ご飯を食べる少女たち Keystone Archive

このほど、北朝鮮が人道援助を拒否し、代わりに経済開発支援を受けたいと発表した。この動きについて、スイスインフォは連邦開発協力局(外務省傘下DEZA/DDC)の北朝鮮支援担当者、ウーリヒ・シュトゥルツィンガー氏に話を聞いた。

シュトゥルツィンガー氏によると、人道援助が突然止まることは、孤児院の子供たちにとっては悲惨な結果を招くことになる。

 2200万人の人口を抱える北朝鮮は、1990年半ばから自然災害や飢饉が深刻化するたびに、国際的な人道援助に全面的に依存してきた。しかしこの9月、北朝鮮政府は、人道援助はもう必要ないと発表し、全ての食糧援助を今年中に終了することを要求してきた。

 スイス連邦開発協力局が北朝鮮の首都、ピョンヤンに事務所を開いたのは、1996年。開設当時の主な支援は食糧援助だったが、2000年からは機関や人材の育成に重点が置かれ、現在は農業関連の技術指導、と内容は変化している。

swissinfo : 今回の北朝鮮の決定をどのように思われますか。

ウーリヒ・シュトゥルツィンガー氏 : 少々懸念しているのは、人道援助の停止があまりにも急に行われることです。私たちは8月末にこの決定を聞きました。年末までに残された時間はわずかです。時間的に余裕を持って、段階的に行うことが望ましいと思っています。北朝鮮は、必要なのは人道援助ではなく経済開発だと言っています。しかし、私たちは、この国にもう人道援助は必要ない、とはまだ思えないのです。

今年の農業生産は確かに好調でしたし、韓国からも前年と比べてかなりの援助が届いています。だから食料の量については人道援助はいらないかもしれません。けれども医療についてはまだ十分とは言えないと思います。また、食料にしても医薬品にしても、全国販売網は非常に貧弱です。

人道援助なくして、食料や薬が必要な人に本当に届くかどうか、疑問ですね。農業関連で働いている人の所には十分な食料があるでしょうが、農業と関係のない所にいる人々、例えば孤児院など社会福祉施設の子供たちの食料は国際人道援助に依存しています。

開発協力局の年間予算約500万フラン(約4億5000万円)のうち人道援助は50万フラン(4500万円)を占めています。このお金は今後、削られるのですか。

全部が削られるわけではありません。50万フランのうち30万フラン(2700万円)は粉ミルク代だったのですが、これはもう送ることができなくなります。残りは農業用の種なので、これは大丈夫だと思っています。北朝鮮が要らないと言っているのは食料ですから。

北朝鮮は実際、なんと言ってきたのですか。

北朝鮮は、私たちの活動を、人道支援ではなく経済開発支援と認識しているようで、実は彼らは私たちには直接に何も言ってきていないのです。

今後、開発協力局の北朝鮮援助はどのように変わっていくのでしょうか。

私は、スイスは北朝鮮へより多くの働きかけをするべきだと思っています。北朝鮮は経済開発援助を求めているのですから、我々のプロジェクトもそれに沿ったものにしていくべきでしょう。

swissinfo、クレア・オデア 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

開発協力局が北朝鮮に事務所を開いたのは、1996年。
対北朝鮮援助の年間予算は、約500万フラン(約4億5000万円)。このうち粉ミルク代30万フラン(2700万円)が削減される。

-北朝鮮は、国際社会に対し、2005年末までに人道援助を終了することを要求している。
-開発協力局の援助の多くは、すでに経済開発に向けられている。
-しかし開発協力局は、食糧援助が突然停止されることは問題があると懸念している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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