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ローマ教皇、スイス・ジュネーブを訪問 ベルセ大統領らと会談

空港で出迎えるベルセ大統領
フランシスコ法王を出迎えるアラン・ベルセ連邦大統領(右) Keystone

キリスト教会の一致を目指す国際団体、世界教会協議会外部リンク(WCC・本部ジュネーブ)の創立70周年に合わせ、ローマ・カトリック教会の教皇フランシスコ(81)が21日、1日間の日程でジュネーブを訪問した。教皇がスイスを訪れるのは14年ぶり。

>>ローマ教皇のジュネーブ訪問、どんなところを回った?

 ジャン・カルヴァンが宗教改革を行ったジュネーブは「プロテスタントのローマ」とも呼ばれるプロテスタントにとっては重要な都市だ。教皇フランシスコは21日朝、飛行機でジュネーブ空港に到着。空港ではアラン・ベルセ連邦大統領ら政府関係者が出迎えた。

 ベルセ大統領は教皇と20分間会談。ベルセ大統領はその後、記者団に対し、平和と人権の取り組みに尽力する教皇の思いを共有できたと語った。

 会談の中で、教皇はスイスに対し、対話を通じて世界の紛争予防を推進するよう求めたという。また二人は、難民・移民を乗せたアフリカ北部からの船がイタリアに入国拒否されている問題についても議論した。

 教皇が前回スイスを訪れたのは2004年。ヨハネ・パウロ2世が6日間の日程でベルンとジュネーブを訪問した。ヨハネ・パウロ2世はその1年後に死去した。

 教皇フランシスコはベルセ氏との会談を終えた後、空港そばのWCC本部に移動。地元の教会関係者と祈りの集いに参加した。ローマ・カトリック教会はWCCのメンバーではないが、オブザーバーを派遣している。

>>WCCってどんな団体?  

 教皇の今回の訪問は「歩き、祈り、そして共に行動する」というモットーの下、分断されたバチカンと他のキリスト教教会を橋渡しするという重要な意義を持つ。

 WCC本部で教皇は「抑制のきかない消費者主権主義」の危険性を指摘し、これは子供と高齢者の排除につながると警告した。また「私たちは進むべき道を見失ってしまった」と語った。

 さらにカトリック教会と他のキリスト教信仰とのより深遠な統一が必要だと述べ、「私がここに来たのは、団結と平和のための巡礼だ」と呼びかけた。

 ローマ教皇のWCC訪問は今回が3回目。1960年にパウロ6世、1984年にヨハネ・パウロ2世がそれぞれ訪れている。歴史的に、カトリック教会とプロテスタントの関には深い溝が出来ている。

 教皇はまた、カトリック教徒、正教会、プロテスタント信者の無差別殺人を非難し「血のエキュメニズム(教会の一致促進運動)だ」と語ったほか、「キリスト教徒であるがために苦しんでいる世界の様々な地域、特に中東の兄弟姉妹に目を向けよう」と呼びかけた。

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 教皇フランシスコは21日午後5時半、パレクスポ会場で行われたイベントに出席し全日程を終えた。イベントには3万7千人が参加した(主催者発表)。参加者のほとんどはスイス国内の居住者だが、フランスやスペイン、スロバキア、クロアチアから来た人も。会場外では朝早くから行列が出来た。

 同会場でのイベント、またジュネーブ空港でのセレモニーには、スイスの元バチカン衛兵らが、伝統的な青・赤・黄色のストライプ模様の制服を着て出席。バチカンでは1506年以降、スイス兵士がローマ教皇と教会の護衛に当たっている。

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