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もぐもぐスイス味 その1 — モモヨ隊員とヴァレー州のラクレット —

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ヴァレー州本場のラクレットがジュネーブで味わえると聞いた。同州出身の店主が材料を故郷から取寄せ伝統の味を守っているという。場所はジュネーブ市の中心「ビクトリアオル ( Victoria-Hall ) 」の後方である。

ラクレットとはラクレット ( Raclette ) チーズをトロリと溶かし、ゆでたジャガイモにつけて食べる簡単な料理。だが、簡単なだけにチーズが決め手という。

 地図を片手にたどり着いたレストランは巨大な喫茶店風。新聞を読む人もいれば、食事をしている人もいる。ここがヴァレー本場のレストラン?実は入り口は同じだが、モモヨ隊員と入った左手はビストロ「ラ・カーブ・ヴァレザン ( La Cave Valaisanne ) 」右手は「シャレー・スイス ( Châlet Suisse ) 」。前者は気軽にお茶も飲めればラクレットも食べられ、後者はじっくり座って食事をする場。料理は同じでも雰囲気はまるで違う。

50年の知恵

 「ツーリストもいれば、コンサートホール裏なので、演奏帰りの人もたくさん入ります」とマネージャー。席数300、年中無休。あらゆる状況に対応する大型の大衆レストランといえようか。また朝10時でも、午後4時でもラクレットが食べれるという。観光で昼を食べ損ねた人も心配なく入れる。

 しかし、単なる大衆レストランではない。ビストロ側の入り口には、直径40センチメートルはありそうな8個のラクレットチーズを次々に溶かしていく大型機械が設置され、溶けたてのチーズをウエーターが忙しそうに運んでいる。

 さっそく注文。定番の茹でジャガイモがテーブルに盛られ、運ばれたチーズはとろりと溶けて深みのある上品な味。秘密は殺菌されていない生ミルクの使用にあるという。ラクレットチーズはスイス全土で生産されているが、そのほとんどが殺菌処理されたミルクを使用。しかしヴァレー州のものは生ミルク使用を看板に掲げている。

 「お皿に数字が印刷されてますよ」と観察の鋭いモモヨ隊員。紙のランチョンマットにも同じ数字がチョークで大きく走り書きされている。お代わりを運ぶウエーターが場所を間違えないようにという配慮。50年間もラクレットをサービスしてきた知恵がそこにあった。

・・・でモモヨ隊員は

 「サトノブ隊長、これってそのお・・こっそり言うとズバリ『観光客おいでおいで』レストランじゃありませんか。」「そ、そのようね・・」注文してみると、ピクルスとラクレット用の小さなジャガイモだけの超クラッシックなスタイル。は、はずしたかのう・・隊長 ?

 それから専用マシンで溶かしたチーズがやってきた。お皿が温かくないなあ、どれどれ・・。ん、れれれ、これは、なんだかおいしいかも。どのようにといわれると、ええっとコクかしら?  それとも風味?

 聞けば生乳から作ったラクレットチーズだそう。モモヨ隊員も生乳ラクレットっていうのを探して招待した友人にでもウンチクを傾けることにしよう。手に入るかしらん。

swissinfo、もぐもぐスイス味探検隊 里信邦子( さとのぶ くにこ )& モモヨ

ラ・カーブ・ヴァレザン ( La Cave Valaisanne ) / シャレー・スイス ( Châlet Suisse )

住所 : 22, bd Georges Favon、コンサートホール「ビクトリアオル ( Victoria-Hall ) 」の後方、プラス・ドュ・シルク ( Place du Cirque ) のすぐ傍

電話 : 022 328 12 36 ( 大勢で行く場合は要予約 )

予約 : 10人ぐらいで大型テーブルを囲みながら会食できる地下の個室がある。それは予約が必要で、「カルノッツェ( Carnotzet ) 」ないしは「サル・デ・グイドゥ( Salle des Guides) 」と指定する事

時間 : 午前8時から翌日の午前1時まで

メニュー : ラクレット、5皿お代わりができるのが24.5フラン ( 約2300円 )、何皿でもお代わりできるのが「GoGo」という名で30.5フラン ( 約2900円 )。他に ヴァレー州の乾燥肉とサラダの盛り合わせが「デリス・デュ・バレ ( Délice du Valais ) 」で26.9フラン( 約2600円 )

予算 : 2人でそれぞれ5皿お代わりのラクレット、デリス・デュ・バレを1皿、ワインを1杯ずつにコーヒー、ミネラルウォーターで100フラン ( 約9600円 )

行き方 : コルナバン駅 ( Cornavin ) からバス5または8番でベルエール ( Bel-Air ) 下車。徒歩約5分

ラクレット ( Raclette ) チーズはラクレット料理専用のもの。またラクレットとは「ラクレ ( racler 、こそぎとる) 」というフランス語が語源。
単純な料理だけに起源は古い。オプヴァルデン州などの修道院に残る文書によると、13世紀にすでにこうした料理を食べていたらしい。

ラクレットチーズは人気があり、スイスの全チーズ生産の中で第3位を占める。

ヴァレー州の生ミルクでできたラックレットチーズを当レストランは使用。特に「バーニュ4 ( Banges 4 ) 」、「サン・マルタン ( St. Martin ) 」の2種。

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