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アデルボーデンの雪男



ベアト・アレンバッハ氏。スノーマシンを操作する

ベアト・アレンバッハ氏。スノーマシンを操作する

(swissinfo.ch)

彼は冬と雪を愛してやまない男だ。天から降ろうとマシンから降ろうと、雪は彼の命であり彼の糧であることに変わりはない。

「降雪男」ベアト・アレンバッハ氏 ( 43歳 ) の冬は、夏が終わるとすぐに始まる。その後、アデルボーデンでは忙しさが増す。

なくてはならない人工雪

 冬の観光シーズンの準備は夏のシーズンが終わってすぐ、9月半ばに始まる。スキーシーズンのオープンは11月末と決められているからだ。のんびりしている時間はない。

 特別な車両を使い、緑のアルプにスノーマシンやスノーガンを運び込んで組み立てる。ロープウエー会社に勤めるアレンバッハ氏は
「体を酷使するきつい作業です」
 と言う。

 「雪がなければ誰も来ません。12月になればハイキングではなくて、みんなスキーをしたいのです。人工雪なしでは、ウインターツーリズムはもう生き延びることができなくなりました」

 アレンバッハ氏はまた、冬はどんどん前倒しになっていると言う。できれば10月にもスキー場をオープンしたいくらいだ。3月は好天が最も多い月だが、その頃になると人々のスキーへの関心は薄れてしまう。

 「著しい変化です。以前はそんな重圧などありませんでした。雪が降ればリフトを動かす。降らなければ、リフトの点検が終わると11月でも家でじっと雪が降るのを待っていたものです」

 アレンバッハ氏は、ヨーロッパ中でウインターツーリズムをめぐる競争が激化したと感じている。加えて、カリブ海で過ごす安いパッケージ休暇も人気を呼んでおり「スキー客を冬からさらっていく」。

初めは即席マシンで

 アレンバッハ氏はもともと機械工だった。1989年にロープウエーの世界に入ったとき、ベルナーオーバーラント地方の標高1350メートルにあるアデルボーデン ( Adelboden ) ではまだほとんど人工降雪が行われておらず、利用されていたのは谷のリフト乗り場付近や毎年1月初旬にワールドカップの大会が開かれるクエニスベルグリ ( Chuenisbärgli ) の斜面くらいだった。

 ゲレンデ全体に人工雪を降らせるようになったのは1990年代前半だったとアレンバッハ氏は記憶する。
「長さ50メートルの消防ホースとガソリン式の水ポンプを使って降らせていました。朝、少しでも白くなっていると誇らしく感じたものです」

 この即席スノーマシンはウインチやゲレンデ用車両で移動させなければならず、作業は夜通し続いた。温度計をチェックするため、夜中に何度も起き出した。

全域を完璧にカバー

 現在は、可動式のプロペラスノーマシンと固定式のスノーガンを使ってほぼ全域で人工雪を降らせている。アレンバッハ氏が担当しているジレレン ( Silleren ) 地域には50メートルおきにスノーガン1基が置かれ、すべて合わせると100基以上になる。

 「スノーガンは騒音が少ないんです。シューシューと少し音がするだけ」
 それに対してプロペラを使ったスノーマシンはうるさく、人が住んでいる地域ではほとんど利用できない。

 人工降雪地域は拡大する一方だが、そのためには綿密に考案されたインフラとコンピュータ制御の機械、そして膨大な量の電気と水が必要だ。水は谷から山へとポンプで汲み上げられるが、泉や貯水湖から取水するほか地元の水協同組合からも購入している。

 この貴重な水を分配し、優先順位を決めるために、基本計画が立てられた。
「しかし、トゥーン湖の水はまだ使っていません」
 とアレンバッハ氏は言う。
 

土台としての人工雪

 ウインターツーリズム用のパンフレットによると、アデルボーデンでは主要ゲレンデの約6割で人工雪を降らせている。ほんの数年前まで、人工雪は環境を破壊するという理由で蔑視されていたが、今では、冬にはほぼ「避けることができず、必要不可欠なもの」と見なされている。人工雪はゲレンデの状態を安定させるための保証なのだ。

 しかし、若い世代と違って、古い世代は人工雪にまだ抵抗がある。
「若者は人工雪とともに育ちましたからね。熱心なスキーファンにとっては、冬の雰囲気がまったくなくても、とにかく人工雪が積もった傾斜さえあればそれでいいんです。とはいえ、素晴らしいパウダースノーのゲレンデはやはり一味違いますが」

 アレンバッハ氏はこれまでのところ、自然や環境に対する悪影響は確認していない。
「人工雪は重く湿っていて解けるのが遅いため、春が来るのは2週間ほど遅くなりますが、化学物質は含まれていないし、地面は傷むどころかその逆です。以前は雪をいったん一塊にまとめて、それからキャタピラーでゲレンデ上に分けならしていました。しかし、そうすると耕牧地や芝土が傷んでしまうのです。今では人工雪のおかげで下層土も硬くなり、うまい具合に保護されています」

 これは非常に大切なことでもある。
「ゲレンデを滑る人の数が激増した上、カービングスキーやスノーボードのエッジで何もかもぼろぼろにされてしまうので、ゲレンデは以前よりもずっと大きなダメージを受けているのです」
 

どこまで許す?

 気温が上昇し、アデルボーデンで自然の降雪が稀になったときのことについて、アレンバッハ氏もあれこれと考えをめぐらせている。だが
「これまでにも1987/88年、2007年と雪の少ない冬はありました。2007年はひどい年でしたね。一方で1999年の積雪は異常なほど多かったし、昨年、一昨年も素晴らしい冬でした」

 自然は予測のつかないもの。そのため、気候専門家の意見は分かれているという。
「そう考えれば、気持ちも落ち着きます」
 とアレンバッハ氏は言うが、人が際限なく自然に手を加えることには反対だ。
「中国では、ロケットを飛ばして北京の町の半分を雪で覆ったとどこかで読みました。それで大混乱になったといいますから、それはやり過ぎだと思います」

 アレンバッハ氏はまた、人工降雪をこれからもずっと続けてよいものかどうか、疑問に思ってもいる。
「気温や地面の温度が高くなって1日のうちに雪の3分の1が解けてしまうようになったとき、それでも人工雪を降らせる価値があると思いますか」

ガビ・オホセンバイン 、swissinfo.ch、アデルボーデンにて
( 独語からの翻訳、小山千早 )

人工雪と環境

将来、気候が変動すると予測されているが、そのことを考慮すると広域での人工降雪はますます増加すると思われる。

「公共交通機関連盟 ( VöV ) 」によると、スイスで現在利用されているゲレンデの33%で人工降雪が行われている。オーストリアでは66%、南チロルでは75%に及ぶ。

「スイス・ロープウエー連盟 ( Seilbahnen Schweiz ) 」によると、人工降雪の投資額 ( 設置および作動 ) はゲレンデ1km当たり100万フラン ( 約9億円 ) 。経営費のみでは推計で1km当たり年間4万フラン ( 約360万円 ) から10万フラン ( 約9000万円 ) になる。

スノーマシンは大量の水とエネルギーを必要とする。「アルプス保護国際委員会 ( CIPRA ) 」の報告書「アルプス圏の人工降雪」によると、アルプス圏で利用されているスノーマシンは1時間に総計600ギガワットを消費している。これは4人家族の13万世帯が1年間に消費するエネルギー量に相当する。

連邦環境省環境局 ( BAFU/OFEV ) によると、降雪機の設置に際しては配線や配管、ポンプステーションや貯水湖の建設のために大規模な工事が必要となる。

また、取水には問題があり、環境局は以下のように公表している。
「人工雪の製造には莫大な量の水が必要であり、河川や湖、またそこに棲む生物に悪影響を及ぼす可能性がある。特に懸念されるのは小さな流れからの取水で、冬には一般的に水流が浅くなるため、残水量の順守は環境保護のために非常に重要である」

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